12年前、超大型ハリケーン・アイバンがフロリダを襲い、18歳のジェシカ・サーモンドの自宅や近隣を破壊した。家を失った彼女は複数の仕事を掛け持ちしながら、車での生活を余儀なくされた。見ず知らずの人々の親切に大いに助けられた彼女は、あの時の恩を他の人へ届けたいと願っている。


当時、スポーツジムでも働いていた彼女は、施設内のシャワーを使い、ロッカーに荷物を入れておくことができた。そのうち、周りの人が「もしやこの子は家がないのでは」と気づき始め、見ず知らずの人が親切にも住まいを提供してくれた。
「この10代の女の子に何が起きたんだ?」って私のことを気にかけてくれる人が現れたんです。ある家族が私を受け入れてくれ、この状況から抜け出す術とチャンスを与えてくれました。
この家族のサポートのおかげで大学に行くことができた彼女は、ヴァンダービルト大学院(テネシー州ナッシュビルにある私立大学)へ進学した。そうしてナッシュビルにやって来た彼女、今やホームレスの身ではないものの、そんな過去の体験から家を失くした人々を助けたいと考えているのだ。
自分がホームレス状態だった頃、何か変化をもたらすことができる日がきたら必ず行動に移す!と自分に言い聞かせてたんです。

プロジェクト開始、そしてNPO設立へ

2016年の夏から、バックパック(リュックサック)に食糧、洗面用品、せき止めドロップ、ウェットティッシュ、歯ブラシなどを入れたセットを作り、ナッシュビルの路上で配布するプロジェクトを始めた。最初はひと月に8〜10個配布できればよいくらいに考えていたが、翌月には300個以上のバックパックを配布したと言う。

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ナッシュビルの路上での配布用に、ボランティアが長期保存が可能な食料や洗面用グッズなどをバックパック(リュックサック)に詰める。

その後、彼女は、他3名のメンバーと共にNPO「Lace Up With Love(愛で編み上げる、の意)」を立ち上げた。この名称はプロジェクト開始直後の彼女の実体験に基づく。
バックパックセットを準備し始めた頃は何を入れるべきか分からなくて…。ふと棚を見上げると靴ひもが目に入ったんです。これはいろんなことに使えそう!入れない手はないわ!とひらめいたんです。
一番最初にバックパックセットを渡した相手はガソリンスタンドにいた男性だった。彼の靴には靴ひもが通っていなかった。「君はいいところに目を付けた。ぜひ続けなさい」と天の声が聞こえたようでした、とジェシカは言う。
靴ひもは日常生活にあって当たり前のものでしょ?

ひとりひとりのストーリーに耳を傾ける

バックパックはほとんどが寄付によるもので、一部はリサイクルショップ「Goodwill」で入手する。バックパックにグッズを詰める作業を手伝ってくれるボランティアグループもいて、学校や団体が梱包のイベントを開催してくれることもある。

ジェシカがバックパックに追加したアイテムがある。それは、切手を貼った封筒だ。バックパックを渡す相手に「誰にでもいいので手紙を書いてください」と伝えるのだ。彼らの話も聞かせてもらえるよう事務所の住所も記載している。これまでに7人から手紙をもらい、そこにはそれぞれのストーリーが書かれていた。差出人住所がある場合は、「何かお手伝いできることはありますか?」と返事も書くのだそうだ。

NPOの運営には、ジェシカの他に3名の役員メンバーが加わってくれた。彼女はこの組織の役割を、ホームレスの人々を支援するかたちへ発展させていきたいと考えており、現在はナッシュビルで活動するNPO間のコミュニケーションを強化するアプリの開発に取り組んでいる。とはいえ、NPOとしてはこれからもバックパックセットの配布を通じてホームレス状態にいる人々とつながることは続けていきたい考えだ。

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レース・アップ・ウィズ・ラブ(Lace Up With Love)を立ち上げたメンバーのジェシカ・サーモンド(右)と副代表のケリー・オト
常に人々と交流を図り、どうして今の状況に至ったのかに耳を傾ける。この活動のそうした人間愛的側面が私のやる気を持続させてくれるのです。

ボランティアを通してコンフォートゾーンから抜け出してほしい

NPO「Lace Up With Love」では常時サポーターを募集している。特に、路上でのバックパック配布を手伝ってくれる人は大歓迎だ。

ボランティアの皆さんには、ご自身のコンフォートゾーン(comfort zone「快適域」の意) から抜け出してほしいのです。彼らを快適域から引き出し、社会で起きていることに対峙してもらわないことには、社会に変化を起こすけん引力など生み出せません。
NPOのウェブサイトには、バックアップ配布に協力したボランティアたちの声がアップされている。 バックパックおよびセットに詰めるグッズの寄付も常時受け付けている。必要なものリスト、およびAmazon ほしい物リストもウェブサイトで見ることができる。

NPO Lace Up with Love
www.laceupwithlove.org
ボランティア活動に興味がある方はこちらまでお問い合わせください。(要英語)
info@laceupwithlove.org
文:アメリア・フェレル・ ナイズリー

The Contributorのご厚意により/ INSP.ngo

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