アメリカのプログラムをモデルに、ボランティアが本格的な森林整備を行う3ヵ月の長期プログラムを確立した「トチギ環境未来基地」。今年度から始まった、森林での作業を通して若者を就労へとつなげる新たな試みについて聞いた。
(左から)塚本竜也さん、小川良華さん、神彩乃さん
3ヵ月、共同生活をしながら本格的な森林整備を体験。若者、外国人、求職者などが参加
「トチギ環境未来基地」代表の塚本竜也さんは、大学で林学を学んでいた時、米国で「Conservation Corps(コンサベーション・コア)」というプログラムに出合った。若者が半年から1年間、20~30人のチームを組んで森に木を植えたり、遊歩道をつくったりするプログラムで、年間2万人以上が参加し、大学に進学する奨学金までもらえるんです。
このような仕組みを将来的には日本にもつくりたいと考えた塚本さんは2009年、「トチギ環境未来基地」を設立。事務所の建物内の宿泊スペースで共同生活をしながら3ヵ月、チェーンソーなども使った本格的な森林整備作業を行う「長期ボランティア・プログラム」を年2回、行ってきた。「休学中や進路に迷っている若者、外国からの若者、新しい仕事を探している人など」が参加する一方、日帰りや1泊2日のボランティアも受け入れている。
そして「中央ろうきん若者応援ファンド」の助成を受け、今年度から始まったのが「みどりの中間的就労訓練」だ。県内の若者支援団体と連携し「なかなか社会につながれないが何かに参加したい、ひきこもりなどの若者」に活躍の場を提供している。「依頼を受けて、こども園に隣接する森を子どもたちが遊べるように木の柵をつくって整備したり、地域との接点が少ない障害者施設周辺の森に手を入れて、散歩に訪れる人を増やそうとしたりしています。
幼稚園の森のフェンスづくり
自然公園の整備
最初は2~3時間からでも参加できる森林での中間的就労訓練。ノウハウはガイドブックで全国へ。
いきなり森の中で行う作業はハードルが高いという人には、伐採した竹を火であぶって油抜きし、組み立てる、竹の「エコテントづくり」や、子どもの自由工作に使う「木工クラフトのパーツづくり」といった室内でできる作業もある。10時~15時頃まで1日作業をすれば2000円の訓練奨励金が支給されるといい、これまでに23~38歳までの59人が参加している。作業は、ともに3ヵ月の長期プログラムの卒業生であり、「トチギ環境未来基地」のボランティア・コーディネーターを務める神彩乃さんと小川良華さんらが指導。「最初は2、3時間から始める人もいます。1日中草刈りだともたない人も、座って“枝”を小さく切りそろえる作業ならできる。やれる仕事の種類を増やすために、作業をできるだけ細かく分けています」
竹の運搬
しいたけの原木片付け
参加した若者にも変化が表れ始めている。1度は就職したもののつまずいて休職中だった24歳の女性はボランティアとして森の作業を体験後、中間的就労訓練に参加。さらにインターンとして週に3、4回、1ヵ月通ったところで体力がつき、自信がもてるようになって就職活動をスタートした。また、若者支援団体に通う38歳の男性はものづくりが好きで「職人」の愛称で慕われ、中間的就労訓練には毎回参加。神さんと小川さんが手こずる作業もサポートしてくれる頼もしい存在だ。
塚本さんは、このプログラムで培ったノウハウを来年3月までにガイドブックにまとめ、全国の森づくり団体や若者の仕事がつくれそうな団体に送るという。
全国には人手不足の林業をはじめ、森や里山など若者の力を必要とする現場がたくさんあることを若者にもぜひ知ってほしい。
【団体紹介】NPO法人トチギ環境未来基地 2009年に任意団体設立。10年、NPO法人格を取得。栃木県を拠点に、地域の森林・自然環境を守る活動を通じて、参加者である若者たちが力をつけ、自身の将来を切り開くきっかけづくりをしている。 ★「みどりの中間的就労訓練」参加者(15~39歳)を募集しています。詳しくは下記のサイトをご覧ください。 栃木県芳賀郡益子町大沢2584‐1 TEL 0285‐81‐5373 http://www.tochigi-cc.org/ ★「みどりの中間的就労訓練」を寄付で支えてくださる皆様も募集しています。 1口3,000円から。振込先は ゆうちょ銀行 〇七八(ゼロナナハチ)支店 普通口座 口座番号1941027 口座名義 トクヒ)トチギカンキョウミライキチ 里山の中で若者の活躍とステップアップの場を増やしていきます! |
【若者応援ファンド2018公募】
受付期間 2017年10月2日(月)〜27日(金)詳しくは特設サイトをご覧ください
http://chuo.rokin.com/about/csr/assistance/
■ 中央ろうきん社会貢献基金について
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■「中央ろうきん」って?
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ビッグイシュー・オンライン編集部より:本誌連動企画として、「中央ろうきん若者応援ファンド2017」の特集記事をお届けします。この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています。
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