夏本番。夏休みの自由研究を「外注」する保護者が過去に話題になったり、「自由研究キット」なる商品もあったりするそうだが、それはあまりに勿体ない話である。自由研究をナメてはいけない。
夏休みが近くなり、子どもたちの自由研究のテーマを子どもと一緒に悩む保護者の皆さんも多いだろう。今回は海辺にまつわる自由研究で専門家になった2人のお話をご紹介したい。


海辺で貝殻を拾った体験を思い出してみる

あなたが子どもだった頃、海辺で形や色に心ひかれて貝殻を無心に拾った経験はないだろうか。 大人になっても久しぶりに海辺でのんびり過ごすとなると、きれいな貝殻がないかとつい探してしまう。『採る』ということに楽しみを感じるのは、人間のDNAに刷り込まれているのではないだろうかと感じるほど。そんな「貝」が『ビッグイシュー日本版』338号の特集テーマだ。

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© 2018 Pixabay

貝は5億年前に誕生。深海からアルプスの高山まで、世界でおよそ11万種以上、日本でも約1万種の貝が生息するという。そして、丈夫な貝殻は何千年もの時を超え、いま海辺でその物語を伝えてくれている。

2018年7月1日発売の『ビッグイシュー日本版』338号では、千葉県立中央博物館の黒住耐二さんと沖縄大学教授の盛口満さんを訪ね、貝殻の魅力と秘密についてお話を伺った。
夏休み目前、小学生の保護者でなくともビーチ・コーミングをする前に知っておくとさらに深く楽しめる特集だ。

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© 2018 Pixabay

小3の夏休みの自由研究がきっかけで「貝の専門家」に

購、買、貯、資、貨、貢、貧、販、貴…など、お金に関する漢字には「貝」がついていることが多いと学校で教えられた人も多いだろう。貝は大昔、貨幣として使われていたからだが、「貨幣に使われていた貝の種類」は何かご存じだろうか?

その貝が「タカラガイ」であることは以前から資料などで知られていたが、千葉県立中央博物館の黒住さんは、内陸部において貨幣として使われるために、どこからどのように持ち込まれたか、そしてどのようなものだったのかを研究し、生物の分類上の所属や種名も決めることもある立場だ。

そんな黒住さんは、京都の内陸部にいながら小学校3年生の時の夏休みの自由研究を貝にしたことがきっかけで貝の魅力にハマり、貝の生き字引的な研究者になったという。最初は畑に捨てられている貝殻や、近所の人にもらった貝殻から始まったが、翌年以降もチャレンジしてだんだんレベルアップ。黒住さんが小5のときに親が新聞で京都大学の学生による「貝の同好会」を知る。そこに参加させてもらったのが現在につながる大きな転換期というから、「侮るべからず、夏休みの自由研究」なのである。

黒住さんの貝に目覚めたエピソード、貝にまつわる熱い蘊蓄はぜひ『ビッグイシュー日本版』338号にてご確認いただきたい。

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ホネガイ。欧米ではビーナスの櫛というロマンチックな呼びかただそう。和名とのギャップも面白い。
© 2018 Pixabay


海岸で拾える貝殻の中には縄文時代を生きた“化石”が混ざっている可能性も

続いて登場するのは沖縄大学教授で博物学者である盛口さん。
盛口さんも、小学2、3年の頃に海岸で貝殻を拾い集めていた記憶があるという。
盛口さんの場合は、理科教師だった親の影響もあり、拾った貝の裏側に拾った場所と年月日を書きこむようになり、図鑑を眺めながら種類を集めることに夢中になっていった。

それをきっかけに生物学全般に興味を持つようになり、興味はいったん貝から離れる。しかし30年後。当時集めた貝殻の中から遥か昔に絶滅した貝が混ざっていることがわかり仰天したそう。
盛口さんは、なぜ身近な海に、絶滅した貝の貝殻が混じりうるのか、その視点を教えてくれる。
そして、盛口さんが貝を追いかけ続ける理由も、「フカイ(貝)イ」話で興味深い。

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繰り返すが、自由研究をアウトソースするなんて実に勿体ない行為なのである。
子どもの頃の磯遊びの時間を思い出してほしい。波打ち際で感じる冷たい水や温かい水、ひんやりとした濡れた砂と、とても歩けないような熱砂。潮の香り。寄せては返す波しぶき。
そのなかで子どもが自然に始めたくなることこそ、保護者が大事に伸ばしていくべきことではないだろうか。

関連図書

黒住耐二さんの著書 :『美しすぎる世界の貝』ほか


盛口満さんの著書 :『おしゃべりな貝――拾って学ぶ海辺の環境史』ほか


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『ビッグイシュー日本版』338号ではこのほかにも、
・リレーインタビュー。私の分岐点:ファッションデザイナー スズキ タカユキさん
・スペシャルインタビュー:ベネディクト・カンバーバッチ
・国際:地雷撤去に活躍するヒーロー・ラット“アフリカオニネズミ”
・ホームレス人生相談:17歳女子高校生からの「友達と同じ人を好きになってしまった」の相談
など盛りだくさんです。
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