改造した車で路上を移動しながら、ホームレスの人々に無料で洗濯サービスを提供する「オレンジスカイ・ランドリー」。
この活動をオーストラリアで始めたルーカス・パチェットさんに、メールインタビュー。


※ この記事は、2015年02月15日発売のTHE BIG ISSUE JAPAN257号(SOLD OUT)特集「包容空間、路上のいま」からの転載です。
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「フード・バン」から思いついた「ランドリーカー」

私たちが最低限の生活を送るために必要な「衣食住」。けれど、いくら「衣服」を持っていたとしても、それを洗うことができなかったら……。服はどうしたって臭ってくるし、健康にだっていいはずはない。

そのことに気づき、前代未聞の「移動式無料洗濯サービス」を始めたのが、オーストラリア・ブリスベンに暮らすルーカス・パチェットさんとニコラス・マルケージさん。二人は元々、ブリスベンの街に広く根づく「フード・バン」(車で移動しながら、ホームレスの人々に食べものや飲み物を提供する活動)に参加。その経験から、移動式の食事提供でなく、洗濯サービスの提供を思いついた。
朝になって目を覚ました時、ほとんどの人はパジャマを脱いで、洗濯した服に着替える……。そうした誰にとっても大切な、毎日必要なことを、ホームレスの人々に提供する活動がないことにハタと気づいたんだ。
とルーカスさん。
もちろん、コインランドリーなんかも存在するけど、利用するにはお金がかかるし、ホームレスの人々にとって使いやすいものとは言いがたい。だから、無料の移動ランドリーに重要性があると思ったんだ。
二人がこのプロジェクトを始めたのは昨年7月。学校の友人たちも巻き込んで、それまでつながりがあったフード・バンやスポンサー企業の協力を得ながら、車や洗濯機を準備。エンジニアの学生でもあったニコラスさんが腕をふるい、特製のランドリーカーを作り上げた。

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内部はちょっとしたキャンピングカーみたいに改造してあって、車の中に取り付けたコンセントに洗濯機と乾燥機を2台ずつつなげているんだ。電力と水は、車の後ろにとりつけたトレーラーに積むこともできるし、地域の設備を利用することもできる。洗剤は生物分解性のものを使っていて、下水に流す時も地面に流す時も、環境に大きな影響がないようにしているよ。初めて出発した日は『誰の服も洗わせてもらえないかな?』って不安だったけど、初日から二人も服を洗わせてくれたんだ。それは本当にうれしかったね。

洗濯の待ち時間には食事やおしゃべりを楽しむ

移動ランドリーが停車するのは、地域の公園や、ホームレスの人々が集まる福祉施設。そこで6~10時間ほど洗濯機を回し、1時間におよそ20キロ、10人分の洗濯が可能だ。
でも『服を洗うこと』そのものは、プロジェクトの一部でしかないんだ。というのも、服を洗って乾かすのに2時間は必要だからね。その間は一緒にチームを組んでいるフード・バンや地域のレストランが提供する食事をとってもらうんだよ。それから彼らとおしゃべりして、一体どんなことを必要としているのかを聞いたり、地域のボランティアや福祉センターのスタッフとつながりをもってもらうんだ。
ルーカスさんにとって印象的だったのは、6週間ほど移動ランドリーを利用していたある男性の思い出だ。
ある時、彼が路上からいなくなったことに気づいたんだ。その人は、ある事情から家を出てしまい、路上で生活をしていたんだけど、僕らと出会ったことをきっかけに家族の元に戻ることができたって聞いたんだよ。そんなふうに、たった一人でも気持ちよく移動ランドリーを利用してもらえたら、僕たちはそれだけで汗を流したり、手を泡だらけにする仕事が報われる気がするんだ。
 ルーカスさん、ニコラスさんはじめ、活動にかかわるのは全員ボランティア。集まった寄付も車を走らせるためだけに使っている。
今、オーストラリア中に支援者が広がっていて、今年の終わりまでにすべての州で移動ランドリーを走らせたいと考えているんだ。いつか僕らが必要とされなくなる日まで、この活動を続けたいと思ってるよ。
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(土田朋水)


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「建物」の中で行われることが当たり前だったことを、路上へ。

ホームレスの人にやさしい技術は、被災地にもやさしいはず。
「建物」の中で行われることが当たり前と思われていることを、路上でも当たり前にしていこうとする気持ちと技術は、きっと想定外の災害の時にも役立ちます。

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