NPO法人ビッグイシュー基金では、貧困問題の解決と「誰にでも居場所と出番のある包摂社会」の形成を目指し、様々な事業を行っています。社会から孤立しがちなホームレス当事者への自立支援としてフットサルによる交流をはかっているのもそのひとつ。月2回ほど行われる練習会に加え、LGBT・精神疾患・依存症など多様な背景を持つ当事者が参加する「ダイバーシティカップ」の開催など、その運営は大学生をはじめとするインターンによっても支えられています。


今回は、大阪事務所で働くインターンの千田恵太さん(大阪経済大学・経営学部卒業生)に、ビッグイシュー基金のインターンの応募に至った経緯や仕事を振り返って感じたことをお話してもらいました。

千田さん2
インターンの千田さん


Q:なぜ、ビッグイシューでインターンを?

以前カンボジアで、NGO主催のスタディツアーに参加したことがあったんです。現地の状況を見て回るというもので、参加費が間接的な支援に繋がる仕組みはとても良いと感じたんですが、実際に自分が働きかけたくなってもそういう機会が持てず、もどかしい思いをしました。

なので、インターンをするなら参加する側も受け入れる側も、お互いに利益を得られるような関係性がいいな、と思って探していたところ、ビッグイシュー基金に出会いました。

実はインターンを検討する際に、もう一つ別の候補先がありました。両親のいない子どもたちを支援する団体です。当時僕は子どもと遊んだ経験が少なく、どのような支援が求められているのかという知識も持っていなかったため、「主体的に関わっていけるだろうか」という不安がありました。

その一方で、ビッグイシュー基金では、ビッグイシュー誌の販売者の皆さんやホームレス状態の方々と定期的に、フットサルを通じた活動を行っています。その練習のサポートの枠でインターンの募集が出ていたため、これなら自分が小学校の頃から続けていたサッカーの経験が、ビッグイシュー基金では活かせそうだと思いました。どちらの団体も一度見学をさせていただいたうえで、最終的にビッグイシュー基金に応募を決めました。

Q:インターンでどのような仕事をしましたか?

月2回のフットサルの練習時に用具や備品を用意するのと、練習内容を考えるのが主な仕事です。毎回大阪事務所から少し離れた会場へ、必要な用具を全て持って行きます。ボールにコーン、マーカー、ビブス(ゼッケン)、そして簡易ゴールと、そこそこの物量になるので普段は3人がかりで運んでいます。

練習の参加者は平均して20名弱です。ちょうど2つか4つのチームが組めるくらいの人数ですね。ビッグイシューの販売者の皆さん、ひきこもりの方々とその支援団体のスタッフの方々がレギュラーで足を運んでくださっています。

サッカー

最近は「ダイバーシティカップ」への参加という具体的な目標があるので、それを楽しみに練習に臨む方もいます。試合の勝ち負けよりも、参加者がプレーそのものを楽しみ、自分との違いや立場を超えた先の関係性を目指す、という主旨は共有しながらやっています。

意識的に一人一人にボールを回していく、(敵チームでも)お互いをリスペクトして声をかけ合う、といったスタイルは、これまで自分が経験してきた種類のサッカーとは異なる部分もあります。しかし、(日常生活と異なり)互いの背景を深く詮索せずともプレーを通じて交流が深められるという点で、スポーツの持つ力の大きさを改めて実感しました。

時には僕たちインターンも輪に加わってボールを追いかけます。練習内容には毎回工夫を凝らし、「また次も来たい」と参加者に思ってもらえるような環境づくりを心がけています。

Q:インターンをしてみて変化したことはありますか?

元々抱いていた、販売者の皆さんやホームレス当事者の方々への認識が、よりクリアで確かなものになったと思います。

誰もが様々に異なる背景を持っていますが、その場でできることをやっていった結果、「住居を持てない」状況に至ったという方にもインターンを通じて多く出会いました。そうした方々が表面的に一くくりにされ、社会から区別されるようになって欲しくないなという想いが深まったように思います。

千田さん3
販売者と談笑する千田さん

また、変化という点では、社会問題に対する考え方にも影響を受けました。以前の自分には、そうした課題へのアプローチは「大きな枠組みで行われるもの」というイメージがありました。ですが、本当は始めようと思えば誰でも行動に移せるのです。
ビッグイシュー基金で活動するスタッフやホームレス状態の方々と日常的に接する中で、身近にある小さな問題にも意識を向けられるようになりました。

Q:インターンを振り返っていかがですか?

今日が最後の出勤日ということもあり、自身のインターン経験を振り返っていました。インターン先を検討する際、僕はインターンの機会を、自分の方向性を深く見定める期間として活かしたいと考えていました。そういう意味でも半年以上かけてビッグイシュー基金と関わることができたのは良かったと感じています。インターンの卒業後も、フットサルの練習と夜回りには可能な範囲で顔を出したいです。

また、最終的にどのような進路を選んだとしても、マイノリティとされている方々とはどこかで交わる機会が訪れるはずです。僕自身はこの春から商社に就職が決まっていますが、働く場所に関わらず、常に少数の意見が存在することを忘れないでいたいと思っています。

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ビッグイシュー基金のスタッフと握手を交わす千田さん

▼フットサルのサポートインターンに興味を持たれた方へ 練習会に参加してみませんか?
練習会は毎月2回ほど、土曜日の夕方に開催されています。
具体的な日時や場所については、こちらから最新の情報をご確認ください。

▼インターン募集要項


取材協力:小田嶋裕太







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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。