1月1日16時6分から始まった能登半島地震は、これまでに新潟地方まで含めて1400回を超える地震を記録し(1月16日8時58分現在)、今も余震が続いている。うち1月1日16時10分には震度7の巨大な地震が石川県志賀町で記録されている。
地震の影響は石川県のみならず富山県や新潟県へも及んでいる。家屋の倒壊や津波の影響など激甚災害となっている。亡くなられた方々のご冥福を祈ると同時に一日も早い復旧を望むばかりである。
(この記事2024年2月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 472号からの転載です)
停止中だった志賀原発2基
油漏れで一時的に冷却不可能に
翌2日には、午後5時50分頃にJAL516便と海上保安庁の航空機が衝突する事故が起き、海保の5人が死亡、機長が重傷となった。幸い、JAL機は379人全員が無事に脱出できた。乗客の脱出を確認して最後に機長が脱出、優れた対応だった。度重なる惨事に正月気分が吹き飛んだ。
能登半島では3年ほど前から地震が継続しており、深部にある流体が原因とされている。これまで活発な断層とは位置付けされず、調査も進んでいなかった。今回の一連の地震で、ずれたとされる断層の距離は150km程になるといい、能登半島から佐渡島の方へ伸びている。
震度7を観測した志賀町には原発が2基ある。北陸電力の沸騰水型原発で、1号機は54万kW、2号機は121万kWの電気出力だ。どちらも2011年度以降停止し、現在に至る。2号機は14年に再稼働の申請を行ったが、1号機は未申請。審査は現在も続いている。
震度7を観測した志賀町には原発が2基ある。北陸電力の沸騰水型原発で、1号機は54万kW、2号機は121万kWの電気出力だ。どちらも2011年度以降停止し、現在に至る。2号機は14年に再稼働の申請を行ったが、1号機は未申請。審査は現在も続いている。
北陸電力によれば、これまでのところ、外部からの電源は5系統あるが、そのうち変圧器の油漏れのため2系統からしか受電できず、3分の1程度に減った状態になった。それにより、燃料プールの冷却が一時的にできなくなった。また、燃料プールからの水漏れが発生。1号機からは95ℓ、1万7000ベクレル、2号機では326ℓ、4600ベクレルが漏れた。変圧器からの油漏れも1号機では3600ℓ、2号機では19800ℓと評価されている。いずれも噴霧消化設備を使用したが、火災はないという。放水槽の鉄製の防潮壁が数㎝傾いたり、純水タンクからの漏洩なども確認されている。大きなトラブルには進展していないが、これが運転中であったらどうなっていたかと思うと恐ろしい。
運転再開を求めていた
柏崎刈羽原発も冷却一時停止
最大地震の影響は新潟県の柏崎刈羽原発(東京電力)にも及んでいた。震度5を記録、使用済み燃料プールの冷却が一時的に停止した。
東電HDは経営上の観点から、7機のうち6・7号機で24年度中の運転再開を目指している。原子力規制委員会は17年に柏崎刈羽原発の新規制基準への適合を認めた。その後、追加的な安全対策工事が進められていたが、個人認証カードの不正使用や侵入検知装置の不具合の放置といったトラブルが相次ぎ、規制委は21年に核燃料の移動を禁止した。原子炉に燃料を装荷できず事実上の運転禁止である。その後、規制委は改善点27項目を4000時間を超える追加検査で確認した。そして、23年12月27日に上記の移動禁止を解除した。
しかし、この解除判断は規制委員が言うように「何度も追試をしてようやく合格したようなもの」「優や良ではなく可」だった。今後、新潟県知事判断となるが、地元での再稼働反対の声は強い。果たして東電HDに運転資格はあるのか? ALPS施設での被曝事故対応は下請け事業者任せ、処理水放出では「合意のない放出はしない」という約束を反故にして強行など、とても運転資格があるとは言えない。(伴 英幸)
伴 英幸(ばん・ひでゆき)
1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけに、脱原発の市民運動などにかかわる。著書に『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
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