「ホームレス・ワールドカップ」は、ホームレス状態の人が一生に一度だけ選手として参加できるストリートサッカーの世界大会だ。ホームレスの人がサッカーを通して生きがいや人との関わりを取り戻すとともに、ホームレスの人に対する偏見を無くすことを目的に、2003年から毎年世界各国が代表選手を決定し、世界の舞台へ送り出している。

2024年9月にソウルで開催された大会は、38の国と地域から男女52チーム、総勢約450人の選手が集結。日本は13年ぶりに4回目の出場を果たした。
 

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photo: Fu Chatani

これまで平均年齢が圧倒的に高かった日本代表チーム

過去3度の日本代表の成績は3勝33敗(うち2勝は不戦勝)。この圧倒的な弱さの要因は、他国との「ホームレス」の定義による違いが大きい。日本の厚生労働省の「ホームレス」の定義は「都市公園、河川、道路、駅舎その他 の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」となっており、過去の日本代表チームはそんな過酷な環境に置かれた40~60代が多い編成だった。(さらに、日本のその世代は野球経験者の方が多く、サッカー経験者は少ない。)

一方で、他国の「ホームレス」の定義の多くは、支援施設や友人宅などに住んでいるなど「不安定な居住」状態の人も含まれることもあって、体力のある若い世代も多い。また、ストリートサッカーの国内大会がさかんな国もある。そんな年齢的・体力的・経験的な差が戦績に大きな影響を与え、そのことがまた、国内企業のスポンサーの獲得を難しくし、参加のハードルを上げてもいた。

ダイバーシティサッカー協会の活動を基礎に

この事態を受け、ビッグイシュー基金は、サッカーやフットサルなどを通した居場所づくりの活動で国内のネットワークを広げていった。2017年にはダイバーシティサッカー協会が設立され、ビッグイシュー基金の活動を引継ぐ。「ダイバーシティリーグ」「ダイバーシティカップ」などの大会や毎月4回の練習会の開催を通し、ひきこもりや障害のある人たちなど、多様な困難に向き合う当事者・支援者同士を繋いできた。

そして2024年。ホームレス・ワールドカップのナショナルパートナーであるダイバーシティサッカー協会は、有識者による検討委員会を立ち上げ、日本代表チームの選手資格を「路上生活者」だけでなく「不安定な居住にある人」に拡大。各地の団体から参加希望者を募った。

参考:出場資格(ダイバーシティサッカー協会)

その結果、2024年の日本代表は、ビッグイシュー基金(東京・大阪)、サンカクシャ(東京)、まきばフリースクール(宮城)の3団体からなる混合チームとなることが決定。
支援施設や一時的なシェルター等に住む若者を含め、下は17歳から、上は65歳のチームだ。

若い世代の住まいの問題への理解もあり、株式会社LIFULL(ライフル)のオフィシャルスポンサー就任も実現。国内での集合練習や合宿の交通費、韓国までの渡航費など、多大な資金援助を得て、韓国大会への出場が可能となった。

練習会①
練習風景

(続く)

\より詳しい話はこちらで!/
ホームレスW杯ソウル大会報告会(12月7日)
13:30-15:30 サイボウズ東京オフィスにて
https://diversity-soccer.org/2024/11/1579/

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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。