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外界を完全遮断して、映画の世界に浸るマイ・シネマ!




日々の繁忙に追いたくられ、ちょっと人間関係にも疲れた時、「あーひとりになりたい!」って思いませんか?  そんな時って、意外と知識欲は旺盛。頭ん中は水を吸収するスポンジみたいに、普段の日常とは違う世界を欲してる。

だからこそ、外界との接点を完全に遮断して自宅でマイ・シネマ!

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寒いほど、暗いほど、人は寄り添いたくなる?
映画の中で寄り添う人々の冬ごもり。


『僕たちのアナ・バナナ』(エドワード・ノートン監督/2000年)
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(2010年10月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第153号より)




渾身のストップモーションアニメ。毎日12時間、8年かけた制作




人間を好きになってしまった電信柱の恋を描く『電信柱エレミの恋』。
映像に映る造形物すべてを手作りで制作した、45分全編ストップモーションアニメ。






Profiel hosei
(中田秀人監督)





完成した時、宇宙船の旅から帰ってきたようだった



Elemi3

©SOVAT THEATER





制作秘話を聞いているだけで、気が遠くなってくる。人形を少しずつ動かしながら、コマ撮りで映像を撮影していくストップモーションアニメ。わずか1秒の映像を撮影するのに、キャラクターを平均6回以上動かし、細かいところでは実に30回も動かした。撮影前の表情の調整だけで数時間、丸一日撮影しても数秒撮るのがやっと。最も長いシーンでは、連続18時間撮影し続けたという。「人形は表情や関節だけでなく、服のシワまで微妙に動くので、一度撮影し始めたら、途中で終われないんです。トイレに行く以外はずっと同じ姿勢で、スタッフと二人でひたすら人形を動かした」と中田さん。




撮影以上に労力を使ったのが、造形物の制作だ。作品に登場する数々のキャラクターや背景となる昭和の町並み、アパートの部屋の細かな描写に至るまで、すべての造形物を一つずつ手づくりで制作したという。

「たとえば、人形の洋服なら、イメージに合った布を探し、なければ靴下や古着の裏地など身の回りにあるもので試していく。人形の顔など動く部分はプラスチック粘土ですけど、それ以外は木や発泡スチロール、樹脂、紙粘土、アルミ、鉄など、表現に合った素材を選んで一つひとつ制作しました」




Scene





緻密でリアルな町並みは、イメージデザインを描き、それに近い町並みを歩いて探し、実写とデザインを組み合わせて架空の町を作り上げた。また、効果音も町中で採録したり、棒に布を巻いたものを叩いて鳥の羽ばたく音にするなど、すべてが独自のアイディアによるもの。




制作期間は、実に8年。造形技師の仲間3人と交代で毎日12時間フルに作業しても、それだけの歳月が必要だった。「一つとして同じ作業はないので、毎日大変で、毎日難しかった。完成した時は、4人で宇宙船の旅から帰ってきたようだった」

そうして完成した映画は、自主制作フィルムとしては異例のロードショーが実現し、今年、第13回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞を受賞。さらに、手塚治虫や宮崎駿などが歴代受賞者に名を連ねる、国内のアニメ映画賞では最も歴史と権威のある第64回毎日映画コンクールアニメーション賞大藤信郎賞を受賞。立体アニメ表現の完成度に対して満場一致という高い評価を受けた。




小さなものでいいから、何年も人の記憶に残る作品をつくりたい



ストップモーションアニメに魅せられたのは学生時代。ヨーロッパのアートアニメを観て衝撃を受けた。「学生の自主映画だと、有名な俳優は使えないし、大きなセットもつくれない。でも、これなら一つの画面を自分が納得できるまで思う存分つくれると思った」




アニメや造形制作については、中田さんをはじめ4人とも完全な独学。日々の制作と失敗を繰り返す中で、独自のノウハウを積み上げてきた。

「造形物を置いて、アングルを決め、その空間を撮ることに自分たちの喜びがある。ものすごく手間はかかるけど、木を削る感覚や絵の具を混ぜた時のにおいみたいなものが、最終的な画面につながってくると思うし、観客にもそれが伝わると信じている」

ストーリーは、電信柱のエレミが電力会社の作業員タカハシに恋をし、電話回線に侵入して話し始める。中田さんはこのファンタジーを20年かけてでも完成させたかったと話す。

「僕の考えるファンタジーは、天使が舞い降りて奇跡を起こすようなものじゃなくて、実生活の中で何年かに一度起こる偶然のようなもの。電信柱は無言で佇むただのコンクリートの柱だけど、そこに何らかの想いを感じる。優しくて、少し温かい。でも、何もかもが幸せってわけじゃない。そういうファンタジーがどうしてもやりたかった」




映画のラストは、観る者に深い余韻を残す。そして、観終わった後、町の片隅で秘かに立つ電信柱をふと見上げたくなる、そんな記憶に残る作品だ。

「学生時代、南の島で海に浮かんでいた時、今自分がここで消えても、砂浜の砂粒ひとつ何も変わらないんだろうなって思ったことがあって、その時自分はほんとに貝殻ひとつぐらいの小さなものでいいから、何年も人の気持ちに残るような作品をつくりたいと切実に思った。それが、僕のクリエーターとしての原点で、今につながっていると思います」

(稗田和博)






中田秀人
1972年、兵庫県出身。京都精華大学卒。97年に、主にパペットを用いたストップモーションアニメを制作する映像チーム「ソバットシアター」を結成。ストーリーや世界観、デザインを担当するなど、チームの中心的存在。00年に短編アニメーション作品『オートマミー』で国内の映画祭で数々の賞を獲得。09年には、8年の制作期間を経て『電信柱エレミの恋』を制作した。




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(2006年8月15日発売 THE BIG ISSUE JAPAN 第55号 特集「愛と暴力の狭間で—D.V.(ドメスティック・バイオレンス)からの出口はある」より)

DVか?愛か?映画の中で探してもらいたい



モンスターに出会ってしまった不幸な女の話にだけはしたくなかった。
男女の恋愛、性愛を撮り続けてきた中原俊監督は語る。
男女両方の視点から描かれた映画『DV ドメスティック・バイオレンス』。


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(中原俊監督)
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人間の暴力性と可能性 ドメスティック・バイオレンスを描く映画



相手を思っての「愛」と勘違い、コンプレックスと背中合わせの歪んだ暴力、煩悩とともに生き右往左往する人間。人間の暴力性と可能性を問い直す映画たちのご紹介。



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