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(2012年4月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第188号より)





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中国、共産党が警告 「党員は宗教を信じてはいけない」



中国共産党中央統戦部常務副部長の朱維群氏が党の機関誌で、宗教信者となっている党員がいる実態を危惧し、「党員は宗教を信じてはいけない」と警告した。

警告の理由は三つあり、一つはマルクス・レーニン主義の指導的地位が揺らぐこと。二つ目は党員が宗教組織の指導者となって宗教団体の力が増大すると党の分裂を招くこと。三つ目は党員が宗教の代弁者となるのは必至であり、特定の宗教の優遇は平等を欠くこと。

実際、地方では寺院改修などの政府の宗教的業務に宗教団体が関与し、混乱を招いているという。

だが、一般の国民には憲法で信教の自由が認められているので、矛盾を指摘する声が党内外からあがっている。朱氏は最後に伝統的宗教の影響が強い少数民族居住地では、党員は風習などに柔軟であっても、思想上は迎合してはならないと締めくくっている。

(森若裕子/参照:求是、中国共産党新聞網、Voice of Tibet)


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(2012年3月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第186号より)





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中国、「大学生村官」の活路は?



「大学生村官」とは、政府から派遣され、農村部で技術指導や管理などを担当する大卒者で、任期は通常3年である。2009年から中国政府は「大学生村官」派遣事業を全国展開し、「1村当たり2人の村官」を目安に現在22万人派遣されている。

この事業の目的は、農村への人材供給、リーダー育成などがあげられるが、大卒者の就職難緩和策としての効果が最も注目されている。派遣先は出身地かその近隣が優先されるので、比較的スムーズに現地に順応しているという。

問題は任期満了後の進路である。ある調査では、回答した大学生村官の68パーセントが公務員試験を受ける意向を示した。しかし、公務員やそれに類するポストは限りがあるので、彼らは再び就職難に直面することになる。

大学生村官の中には、特産品の販路拡大に成功した人もいるし、着任後に始めた野菜の温室栽培が軌道にのり、任期継続を決めた人もいる。今後、現地に残って創業する人が増えるかどうかがこの事業の鍵となりそうだ。

(森若裕子/参照:大学生招聘網、南方日報、新華網)


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(2012年5月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第190号より)





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ドイツ、フェアトレードのしわ寄せが店員の賃金に?



自然派農法の食品や、環境に配慮した生活用品などと並んで、フェアトレードのコーヒーやチョコレートの販売を行っている「ビオ・スーパーマーケット(Bio-Supermarkt)」と呼ばれる自然派スーパーの従業員の賃金が、実は小売店の協定基準を大きく下回っていることが明らかになり、物議をかもしている。

ベルリンを中心に26店舗を展開し500人の従業員をかかえるビオ・スーパーの場合、見習い1年目の給与が月520ユーロ。2年目からは600ユーロとなるが、通常の小売店での協定基準給与額は1年目が594ユーロ、2年目は670ユーロとなっている。また、協定基準でのレジ係の時給が10・65ユーロなのに対し、ビオ・スーパーでは7・50ユーロ。

ビオ・スーパーは国内で増加傾向にあるため「過当競争から値下げを余儀なくされているのが現状」と専門家は分析。またヴェルト紙は、このことがこれまで取りざたされなかった理由として「ビオ・スーパーの従業員は自分自身が高い給与をもらうことよりも、アフリカのコーヒー農園の労働者に正当な賃金が支払われているかどうかに関心がある」と指摘している。

(見市知/参照: Die Welt)


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(2012年3月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第186号より)





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ドイツ、「赤ちゃんポスト」の機能に疑念の声



出産しても育児能力がないなどの理由で、医療機関に匿名で乳児を預けるシステム、「赤ちゃんポスト(Babyklappe)」の機能を疑問視する声が広がっている。

きっかけとなったのは、「ヴェルト」紙が報道したドイツ青少年研究所の調査で、過去に「赤ちゃんポスト」で保護された973人の乳児のうち5人に1人のその後の行方が明らかになっていないことが判明した。

「赤ちゃんポスト」は本来、乳児の命を守る緊急手段として設置されているが、このたびの調査で同制度が機能していない可能性が浮上した。医療倫理問題専門家のヴーペン氏は、「赤ちゃんポスト」そのものの廃止を訴えている。

シュレーダー連邦家庭相(CDU)は、制度の法的な見直しが必要としながらも、廃止は考えていないと表明。ドイツ・プロテスタント教会も「赤ちゃんポストは、不幸な状態に置かれた乳児だけでなく母親にとっても、最終救済手段の役割を果たしている」と主張している。

国内には現在、100の「赤ちゃんポスト」が設けられている。

(見市知/参照:Die Welt)










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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。


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(2010年9月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第150号より)










中国、「裸婚」は流行か必然か?



「裸婚」とは家も車もなく、裸一貫から結婚生活を始めることを指す。2008年の金融危機以降、「裸婚」に注目が集まり、登記所で9元(約100円)払って結婚証をもらうだけで結婚式も挙げない結婚を「全裸」、指輪の交換など結婚式らしいことをすれば「半裸」というように流行語も生まれている。

伝統的結婚観より独自の結婚スタイルを好むカップルもいるが、お金がなくて「裸婚」を選ばざるを得ないのが大半である。結婚時に重視されるモノは、70年代は自転車、腕時計、ミシン、80〜90年代は冷蔵庫、テレビ、洗濯機だった。

今は家、車、お金となったが、不動産価格の高騰で家は高嶺の花である。13万元(約162万円)かかるといわれる結婚式も省略、簡素化の傾向にある。

インターネット上で行われた調査で、男性の8割が「裸婚」に賛成、女性の7割が反対という結果が出た。反対理由の多くは、経済的基盤がなければ安心して生活できないからだという。

(森若裕子/参照:時尚新聞、成都晩報、東方網)


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(2010年6月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第144号より)













台湾、「一刑務所一品」政策




台湾では刑務所オリジナル商品の年間売り上げが2億6千万元(約7億7千万円)を超えた。人気商品は屏東刑務所の「アニキ醤油」、台中女子刑務所の手作りチョコ、台北刑務所の陶器等、中には3ヵ月待ちの商品もある。

刑務所工場の主流だった委託加工の受注が激減し、2005年から「一刑務所一品」政策が実施され、全国49ヵ所の刑務所は商品開発と共に人材育成に乗り出した。良質で安いと評判を呼び、売り上げは毎年上昇し、昨年は35パーセントの伸びを見せた。

台中県豊原市は日本統治時代に漆器産業が盛んだったが、機械化の波で衰退してしまった。しかし、その技術は刑務所で継承されていた。「刑務所は伝統技能の継承に最適な場所です」と技術指導者は言う。外国の賓客への贈答品として総統府から注文がくるほどになっている。利益の半分は貢献度等に応じて受刑者に還元されている。

だが、そうした受刑者の再犯率は受刑者全体とさほど変わらないことが課題となっている。

(森若裕子/参照:台湾光華雑誌、全球中央雑誌、中央広播電台)


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(2010年5月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第143号より)









南アフリカ、霧から飲料水をつくる




南アフリカ共和国、東部ケープ州のあるコミュニティでは、地域の霧のおかげできれいな飲み水を確保することが容易になった。

これは、ネットを使って山の霧から湿気をとらえるもので、南アフリカ大学の気候学のジャナ・オリヴィエ教授によって考案されたものだ。重力を使って坂を伝わらせて水を採取するため、電気も必要としない。今年3月から、アイリフ(Ayliff)山近くのカバゼイン(Cabazane)村で使われ始めており、好評だ。

この仕組みでは、1年のうち少なくとも40日以上、1回につき数時間霧が発生する地域で有効となる。同地域では、1日に何百リットルもの水が確保されているという。

南アフリカの田舎では飲料水の確保が難しく、そのため水を媒介にした病気も発生しやすい。また、水汲みに何時間も歩かなければならないことも多い。

カバゼイン村の村長グキニカヤ・ンプムザによると、この地域に住む40パーセントの人々には水へのアクセスがないという。ジャナ教授の仕組みによって、定量の水が確保されれば、野菜作りを始めることもできるなど、夢は広がる。

(Sarah Taylor)


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(2010年5月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第142号より)










中国、大都市で働く大卒集団「蟻族」の生活実態



「蟻族」とは大都市の郊外に群居する大卒の若者たちのことで、高学歴でありながら低賃金のために劣悪な環境で暮らしている。昨年9月に『蟻族』という本が出版され、社会から一気に注目されるようになった。同書は研究者が北京郊外で聞き取り調査を行い、その生活実態を明らかにしたものだ。北京だけで10万人、全国で100万人いる。

居住面積10平米以下の部屋を賃貸し、家賃の安い郊外から2時間かけて中心部に通勤する。月収は2000元(26500円)以下、家賃は月300元(4000円)というのが平均的だ。多くは地方出身者で80年代以降に生まれた世代である。

なぜ故郷に帰ろうとしないのか。故郷に帰っても就業機会が少なく、よい職に就くには地方ほどコネが必要だ。蟻族の多くは親も貧しい。そのうえ親兄弟からの期待もあり帰れない。だが、将来家を買って親を呼び寄せるという志は高い。

大都市では不動産価格の高騰が著しい。蟻族への関心が高まるなか、政府の住宅政策が問われている。

(森若裕子/参照:中国青年報、広州日報、中国評論新聞)


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(2009年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第133号より)









モザンビーク、2014年までの地雷撤去目標



アフリカ南部に位置するモザンビーク共和国は、世界で最も地雷汚染の深刻な国の一つだ。モザンビーク政府は、同国の対人地雷と不発地雷を09年3月までに一斉撤去するとしていたが、その目標を5年先に延ばした。世界的な支援金の不足と、同国の貧困対策にまず力を入れなければならないためだ。同国は99年に地雷禁止条約に調印している。

モザンビークでは、ポルトガル領時代から20世紀後半の内戦時代にかけて、地雷が埋設された。どこにどれほどの量が埋まっているかを示す資料はなく、知っている者もいない状態だが、07年、英国系の地雷除去NGO「ハロ・トラスト」が「12万km2にわたって地雷が埋設されているだろう」と結論づけた。

同国で活動を続ける団体は、僻地では依然地雷は脅威だが、2014年までには完全撤去できるだろうと予測する。NGO「ハンディキャップ・インターナショナル」を率いるアデリト・イズマエルは語る。「2014年という目標に向けて、地雷を撤去していきます。この国で地雷は、“ネバー・エンディング・ストーリー”とはならないでしょう」

(Sarah Taylor)



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