Genpatsu

(2012年4月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第189号より)





大飯原発をめぐって緊張した状況が続いている。一日も早く運転を再開したい電力会社に対して、大事故を心配する市民がぶつかっている。何よりも地元の人びとが不安でしかたない。

不安払拭のために、政府は1次と2次のストレステストを実施して運転再開へつなげようとした。そして、大飯原発の第1次のストレステストが終了し、原子力安全・保安院のチェック、原子力委員会のチェックなど手続きを終えた。しかし、班目春樹原子力安全委員長は「1次テストだけでは安全とは言えない」と記者会見で述べている。テストを承認する会合は傍聴者を閉め出して行われた。運転再開へここまで強引に進める理由は説明されていない。

グリーンピース・ジャパンが26日に公表したアンケート調査によれば、78パーセントの人が心配だとしている。また、再稼働前に放射能汚染の被害を知りたいと93パーセントが答えている(参考)。

政府は自治体へ再開了承を「お願い」するという。「お願い」で安全が保証されるわけでもない。西川一誠福井県知事は、福島原発事故の反省を反映したより厳しい安全基準で確認することを求めている。安全を判断する基準はまだ示されていない。また、河瀬一治敦賀市長は新たに発足する原子力規制庁による判断が必要だと述べている。原子力規制庁は4月1日から始まる予定だったが、大幅に遅れることは必至だ。

巷では、運転再開へ世論を導こうと、原発が止まり続けると電力が足りなくなるといった宣伝が繰り返されている。果たしてこの夏は停電となるのか? 環境エネルギー政策研究所は電力各社一つひとつを検討して、少しの工夫をすれば電気は足りることを明らかにした(PDF)。

原発依存度が高いといわれる関西電力でも、足りている。火力発電所をその分、活用するので燃料費がかさみ、電気料金が上がるという脅しもある。運転再開を考えると、原発を止めていても維持費がかかるからだ。値上げになるかもしれないという、その前に万策尽くした証しが必要だ。

しかし、きちんと電力消費を下げる努力を私たちがすれば、電力会社も事業所も家計も助かり一挙両得ではないか。安全が保証されない原発を動かして大事故でも起これば、関西電力だけでなく日本が潰れる。







伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけとして、脱原発の市民運動などにかかわる。89年脱原発法制定運動の事務局を担当し、90年より原子力資料情報室のスタッフとなる。著書『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)