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タグ:若者ホームレス白書




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フリーター、ニート状態を経て路上へ(Aさん 30歳)




関東地方出身。両親、姉の4人家族。高校卒業後は、大手電気メーカーのグループ会社へ就職するが2年半でリストラに遭う。その後アルバイトと派遣を繰り返すが、その状態を家族は快く思っておらず、関係が悪化し、路上へ。





家族は姉と両親の4人。ごく普通の家庭だったと思います。高校では私立の工業科に行きました。入学金だけで百万円以上して授業料も月十数万円かかるんです。家にどうしてそんなお金があったのか、わからないんですけど、そのおかげで、卒業後、大手電気メーカーのグループ会社にすんなり入れたんです。面接では「お酒はどれくらい飲めるの?」って聞かれただけ。

部品センターで入出庫管理をやってました。給料は高くなかったけど、残業もほとんどなくて、不満はありませんでしたね。実家から通ってたので、給料の半分を家に入れてました。ところが入社3年目の1999年に人員削減によるリストラに遭った。年齢はさまざま。僕みたいに若いのも年寄りもいましたね。

その後、失業保険もらってハローワークで仕事探しましたが、なかなか見つからない。人見知りなんで、接客業とかダメなんですよ。だから仕事が限られちゃう。衣料品店の倉庫とか、漬物工場とか……いろんな派遣やったけど、どこも短期契約なんです。仕事がない時は部屋にこもってゲームしたりして時間をやり過ごしてました。ニートみたいなものですよね。




親にすればいつまでたってもまともに働かないように思えるんでしょう。「正社員で働け、バイトじゃダメだ」って散々言われて……どんどん関係が悪化していきました。家を出た時は本当に勢いだった。仕事してなくて、親と大げんかして。

親には申し訳ないと思ってる。高い授業料払って高校行かせてくれたのにこれじゃあねぇ。両親はもういい年だから心配。どっか正社員決まったら、菓子折もって実家行って、一晩泊まってじっくり話したい。

本当はここから電車乗れば、1時間ちょっとで帰れるんだけどね。たった1時間の距離なのに、ブラジルより遠く感じる。でも今のままじゃ顔向けできないですからね。まさにこれから親孝行できるって時になったら、電話一本かかってきて「亡くなりました」ってことがあるのかもしれない。そうしたら「海外旅行の一つでも連れて行ってあげればよかった」って後悔するのかな。

家を出てからは路上でアンケートやってそれでもらえる図書カードなんかを換金して食いつないでた。炊き出しとかは、雰囲気が苦手でほとんど行ったことない。家がないから“ホームレス”なんだけど、ホントのホームレスじゃないっていうか……そういうプライドみたいなのあるんですよ。

最近30歳になりました。会社に入った18歳のころは、その頃には結婚して子供が2人くらいはいると思ってたから。でも今はもう、はるか向こうにある感じですね。




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養育環境、実家を出た理由



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半数が両親に育てられている一方、3人に1人は片親に育てられている。両親の離婚、死別、育児放棄など理由はさまざまだが、養護施設で育った人も6人いた。

実家を出た理由については、半数近くが就職を挙げているものの、4人に1人は家族との関係悪化を理由に挙げている。長いフリーター生活の末、親や家族との確執が強まり、家を出たという人も少なくない。

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貧困家庭に育った人が多く、半数以上の人が経済的に不安定な家庭に育ったと答えている。父親の事業がうまくいかなくなり、倒産、破産を経験した人や、生活保護世帯に育った人も。働かず、酔っては暴力を振るう父親から逃れるため、一家で逃亡した人、経済的理由で車の免許が取得できず内定を辞退した人や高校を中退した人もいた。




高い中卒率



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学歴は相対的に低く、中卒(含高校中退)の割合が高い。現在、中卒の学歴のみで仕事に就くのは容易でないことからも、社会人になるスタート時点において、非常に不利な状況にあったということができるだろう。学校でのイジメを経験した人が8人ほどいる一方で、野球や体操、サッカーなど、部活に属し、平凡だが楽しい学生時代を送ったという人もかなりの割合でいる。




7割を越える人が家族と連絡が取れない、または取らない状況にある。理由としては「勘当された状態なので家に連絡を取ることはできない」、「借金をしており家族に迷惑がかかるので、帰ることはできない」などが挙げられている。




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終夜営業店舗と路上の往復



路上のみで過ごすという人はごく少数に限られ、大半の人がネットカフェ、マンガ喫茶、ファーストフード店、サウナ、コンビニエンスストアなど、終夜営業店舗と路上の行き来を繰り返していることが明らかになった。


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若者ホームレスの場合、路上でも一人でいることを望む人が少なくない。また、食事や寝床より、身なりが気になるという人も多く、炊き出し等は利用しないという人もいた。

また路上で寝ることに恐怖を感じるため、夜を徹して街を歩き続けたり、深夜営業店舗をハシゴするという人も。歩き疲れて道路で倒れ、救急車で搬送された人もいた。

倉庫作業などの日雇いや軽作業などの仕事が見つかれば、路上やネットカフェから通う。飯場での仕事と路上を繰り返している人もいた。




抑うつ的傾向にある人が約4割、ギャンブル依存傾向にある人が3割



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抑うつ的傾向にある人が約4割。自殺を考えるような深刻なケースから、時々落ち込むことがあるというものまで、程度はさまざま。路上暮らしの過酷さ、展望のなさが孤独や疎外感を強め、抑うつ状態をつのらせているということができるだろう。路上生活が長期に及ぶほど抑うつ傾向は、高まっていく傾向にあることもわかった。 

またギャンブル(ほとんどがパチンコ、パチスロ)依存症的傾向があると思われる人も3割程度おり、今でもお金があると寝場所や食べ物の確保より、パチンコに走ってしまうという人もいた。


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いざという時に頼れる友人や、困った時に相談できる仲間がいると答えた人は、ごく
少数にとどまっている。ホームレスとなり、家を出てしまったことで過去の人間関係が
途切れてしまっている人がほとんどである。




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若者ホームレス50人聞き取り調査



ビッグイシュー基金では、2007年以降、若い販売者が増加していることから、その実態を知るため、2008年 11 月から聞き取り調査をスタートさせた。東京と大阪のビッグイシュー販売者から聞き取りを始め、夜回りや炊き出しなどで出会う人たちにも調査の輪を広げていった。2010年5月までにその数は50人に及んだ。ごく一部ではあるが、彼ら自身の声を紹介したい。(飯島 裕子)





若者ホームレスはどんな人たちか?出身地、ホームレスになった理由




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調査対象者は50人。全員が男性。出身地は北海道から九州の離島まで各地方に及んでいる。平均年齢は32.3歳。30代が7割を占めた。路上にいた期間は半数以上が6ヶ月未満と比較的短い傾向にあった。

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路上へ出た理由としては、退職、派遣切り、倒産など、約7割が仕事に関するものを挙げている。寮に住み込んでの製造業派遣や飯場での日雇い仕事など、職を失うと同時に家を失うといったケースだけでなく、リストラされた末、家賃を払えなくなり、路上へ出て行かざるを得ないケースも出てきている。

またアルバイトや派遣を点々とする不安定な就業状態の中、家族との確執を深めたり、多額の借金をし、迷惑をかけたことで実家に居づらくなり、路上に出た人もいる。





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さらに約半数が消費者金融等からの借金を抱えている(あるいは抱えた経験がある)。借金をしたことが、退職や路上生活への引き金になったという人もいる。ちょっとしたきっかけで消費者金融に手を出してしまった結果、借金がどんどん増えていき、動きが取れなくなってしまう。借金の理由はギャンブルが圧倒的に多く、依存症的傾向の人も少なからず存在した。

話の辻褄が合わなかったり、自身のおかれた現状について認識できていない人など、何らかの障害が疑われる人もいた。しかし、実際に障害者手帳等を持っている人はごく少数に留まっている。





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“ホームレス”の定義とは?



「ビッグイシューの販売者が若年化している」、「若者ホームレス」が増加傾向にあると言われてもピンと来る人はほとんどいないかもしれない。

路上にいるよりも、ネットカフェやファーストフード店などの終夜営業店舗などに滞在していることが多い彼らを路上で見かけることは少なく、彼らは“見えにくい存在”になっているからだ。

さらに彼らは日本で一般的に使われているホームレスの定義によって、“見えにくい存在”になっている。そこでここでは、“ホームレスの定義”について見ていくことにしたい。




現在、日本で法的(2002年ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法より)に定められているホームレスの定義は、「都市公園、河川、道路、駅舎その他の施設を故なく起居の場所とし、日常生活を営んでいる者」となっており、ネットカフェやファーストフード店など深夜営業店舗で過ごす人などを含んでいないのだ。

しかし、人はある日突然、住居を失い、ホームレスになるといったことはなく、不安定な就労、不安定な住居を経て、徐々に路上に近づいていく。




一方、EU 加盟国では、「路上生活者」に加え、知人や親族の家に宿泊している人、安い民間の宿に泊まり続けている人、福祉施設に滞在している人なども含む、となっている。

ホームレス=路上生活と考えるのではなく、そこに至るプロセスすべてを視野に入れることが予防や支援を考えていく上で重要だと考え、本書では、稲葉剛氏の「ハウジングプア」の概念図に基づき、ホームレスの定義を下記のようにしたい。




家はあっても居住権が侵害されやすい状態を視野(C)に入れをホームレス状態と定義する。
屋根はあっても家がない状態(ハウスレス:B)及び、屋根がない状態(ルーフレス:A)






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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。


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