part.2を読む


司会:阪井さん、ありがとうございました。続きまして、第2部にいきたいと思います。第2部は、「これからの住宅政策のあり方」ということで住宅政策提案書をもとに検討委員から提案をさせていただきます。それではお手元の住宅政策提案書をもとに沿いながら提案を頂きたいと思います。それでは第一章「不安定居住の変遷と広がりについて」稲葉剛委員からお話をいただきます。


不安定居住の変遷と広がりについて

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稲葉:時間があと8分ということでかなり早口になるかと思いますが、よろしくお願いいたします(笑)。

「不安定居住の変遷と広がりについて」ということで、ここにいらっしゃる方の中にもよくご存知の方もいらっしゃると思いますが、ちょっとこの間の流れというのをおさらいしていきたいと思います。

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ご存知のように、東京では山谷地域、大阪では釜ヶ崎などですね、全国には寄せ場という地域がありまして、そこでは高度経済成長期の頃から、不安定な日雇い労働者の方々が仕事をされて、夜になるとドヤ街、簡易宿泊所と呼ばれるような安い旅館に寝泊まりしながら生活していらっしゃる方が沢山いらっしゃいました。

ところが、そうした状況が1991年の年末、バブルが崩壊したことをきっかけに93~94年から全国で日雇い労働者の人々が路上生活になってしまうという状況が生まれました。

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私が活動していた東京では93~94年から新宿駅の西口でダンボール村といわれるような路上生活者コミュニティーが生まれましたし、大阪では西成・釜ヶ崎に大量に路上生活者が出てくるという状況があったのを覚えてらっしゃる方は多いと思います。


「ハウジングプア」として考える

その後、こうした不安定な働き方、そして不安定な居住というものは若者たちの間にも広がっておりまして、ネットカフェ難民とかですね、様々な呼び方で呼ばれていますけれども、私はまとめて「ハウジングプア」と呼んでおります。

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日本で「ホームレス」というと、外にいる人たち、路上生活者や野宿生活者とも呼ばれますが、屋外にいる人のみを指す言葉として「ホームレス」が使われています。

しかし、実際には、その背後にはネットカフェや先ほどでてきたようなドヤであったり、あるいは施設などにいらっしゃる方がいます。

さらにその背後には、最近増えてきている貧困ビジネス系のアパートもあります。先ほど徳武さんの報告の中にもありましたけれども、ちょっと家賃を滞納しただけで追い出してしまうようなアパートです。あるいは、2008年から2009年の派遣切りの問題の時に大きな社会問題になった、雇用契約が切れると同時に不法に追い出してしまう会社名義の住宅。そうした住宅が増えています。

私としては、こうした問題を個々バラバラの問題としてとらえるのではなくて、ひと連なりの住まいと貧困の問題、ハウジングプアの問題として考えるべきではないのかなという考えを提唱してきました。

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最近の状況でいいますと、路上、公園、河川敷など屋外にいらっしゃる方の数というのは減ってきています。一つは各地で支援団体や法律家のグループ等が動いて生活保護の適用を進めてきた、ということもありますし、同時に、多く公園や河川敷等で管理が強まって、なかなかそこに定住できなくなったという事情もあるかと思います。


見えにくくなったホームレス、そして「脱法ハウス」

全体的な人数は減ってきているんですが、一方では拡散して見えにくくなった、という面も否めないのではないかなと思っています。その一方で、いわゆるネットカフェにいらっしゃる方々、あるいは脱法ハウスと言われるような不安定な住まいに住んでらっしゃる方というのは、きちんとした調査がほとんど行われていないためになかなか全体像が把握できないという状況が続いています。

ネットカフェ難民という言葉が2007年のテレビ報道をきっかけに広がりまして、政府もこの時だけ調査を行って、全国で5400人という推計値を出しているんですが、これも正確なものとはいえないのではないかと思っています。その後、東京ではネットカフェ規制条例という条例ができてしまい、ネットカフェに入店するにも本人確認の書類が必要になってしまいました。

要するに住基カードや運転免許証を提示しないとネットカフェにすら入店できないという状況になってしまいまして、その結果、ネットカフェにすら泊まれない人たちが出てきました。

そういう人たちの受け皿になったのが今、社会問題になってきている脱法ハウスという問題だと思っています。当初はコンビニハウスとか押入ハウスとか呼ばれていたのですけれど、1畳半、2畳半の空間を貸し出す業者が増えました。

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その多くは、貸し倉庫や貸しオフィスを細分化してネットカフェのような狭くて窓のないような部屋を貸し出すという業者が広がってきて、昨年、毎日新聞で脱法ハウス問題と報道されて大きな社会問題になりました。

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特に東京では、もともと漫画喫茶を経営していた「マンボー」という業者がこうした物件を多数持っていました。これらについては、全く全体像について把握がなされていない状況になっています。これに対して、国土交通省でこうした物件が建築基準法に違反している。たとえば、窓がない。火災があったとき危険で逃げ場がないということですから、建築基準法上の問題ととらえて「違法貸しルーム」と呼んで規制を始めています。

現在は、各自治体に調査を依頼してどんどんどんどん進めているところです。3月末の時点で1893物件は調査対象にあたっています。その中でいちばん多いのは東京、2番目は大阪という状況になっています。なかなか調査に応じない物件も多いようですが、調査が終わったところは95%以上の物件で建築基準法違反が見つかっています。この調査を受けて閉鎖に追い込まれるような物件も増えてきています。


脱法ハウス規制の問題点

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ただ、ここで問題なのは、建物の安全性の欠如に関してはきちんと規制して欲しいと思っているのですが、もう一方で、それによって物件が閉鎖になり、今まで住んでいた人たちはどこに行くのか、という問題が出てくるんですね。

ですから、私たちとしては規制と同時に「入居者への支援を行って欲しい」「支援策を新しく作って欲しい」ということを申し入れているんですが、残念ながらまだこの問題は、国土交通省しか動いていません。厚生労働省が動いていませんので規制だけが一方的に進んでいくという状況が広がってきています。

もう一つの問題は、規制のあり方が非常に古い基準(昔の寄宿舎という基準)で規制を進めているために規制対象となっているのが、先程写真で見せたような劣悪な脱法ハウスだけではなく、一般的なシェアハウスやゲストハウスなど悪質とはいえない物件も規制対象になってしまうという問題も出てきています。ここは法律的にも定義し直すという必要性があると思っていて、シェア居住、シェアハウスという最近の新しい住まい方を法律的に位置付けていく必要があるのではないか、と問題を提起したいと思います。

最後に、先程からお話した、追い出し屋問題とか、脱法ハウス、ネットカフェ難民等の住まいの貧困の広がりというのを一枚のイラストで表現したのがこちらの漫画になっております。

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(さいきまこさん画:クリックで拡大

真ん中が安定した住まい方で、周辺に行くほど不安定になってくるんですけど、日本の今の社会の現状というのはどんどん外側に向かう遠心力ばかりが強まっていて内側に向かう動きというのが非常に弱い。この動きを反転させる必要があるというふうに考えています。私からは以上です。ありがとうございました。


<part.4へ続く>