ビッグイシュー・オンライン編集部より:PDFで公開済みの『若者政策提案書』の本文を、ブログ形式で閲覧できるよう編集いたしました。日本で欠如する「若者」世代の政策的支援のあり方を、ぜひ私たちと一緒に考えましょう。すべての関連記事は「若者政策」カテゴリーページから閲覧できます。


現状の問題と課題

働きたくても働けない若者にとっての困難は、働くための教育訓練の機会と、適切な「働く場」が不足しているということである。

彼らの多くは、さまざまな背景要因(低学歴、障害傾向、心身の不調など)によって、仕事をするために必要な能力や経験が十分にない。

こうしたしんどさを抱える若者にとって、働くことが喜びとなりうるような働き方の仕組みを提案したい。 


(1)公的職業訓練の拡充・訓練機会の保障

日本は公的職業訓練が少ないが、訓練手当がない場合、経済的に余裕がなければ訓練期間の生活が維持できなくなる。雇用保険に入っていない場合には求職者訓練制度があり手当が支給されるが、「1回欠席で支給不可」となるなど心身が不調な若者への配慮に乏しい。

これは、ジョブカード制度下の有期実習型訓練についても同様である。つまり、日本には、無業状態が長引いた人が参加しやすい職業訓練メニューがない。そこで、日本でも欧米諸国同様、ワークフェア政策とともに標準化された、「経済給付」と「職業訓練」をセットにした教育訓練が必要である。


事例研究:オーストラリアの場合:市役所出張所兼ハローワークの「CenterLink」

CenterLink(センターリンク)に行くと市民としての権利と義務が明示され、行くべき窓口や使えるサービス、応募できる求人一覧が瞬時にアウトプットされる。さらに、少額ではあるが生活費が支給され、自立までの細かいステッププログラムが用意される。

ステップアップすれば国からの支給額も上がり、訓練⇒資格取得⇒よい就職ができるなど本人への見返りも大きいため、若者は自ら来所する。「孤立させない」機能(インセンティブ)が働いているのである。


(2)中間的就労――何らかの働く場で、本人の働くための能力を伸長するための支援

仕事を通じて若者たちを適切に育てる場があれば、働く能力は伸び、一般雇用につながっていく。そこで、「中間的就労」の場を設けて、本人の能力を伸ばす支援を行う。

その場は、“ほんもの”の職場で、支援スタッフの育成、本人の特性を生かせる専門性があり、本人の特性を理解した柔軟な仕組み、公的な資金補助が必要である。


生活困窮者自立支援法における中間的就労事業の育成

2015年度には生活困窮者自立支援法が本格施行されるが、同法における中間的就労事業者の育成が期待される。

萌芽的取組みには、和歌山県の「起業支援型地域雇用創造事業「若者が働き、生きる」地域づくり事業」や、大阪府の「子ども・若者が再チャレンジできる仕組みづくり中間的就労場づくり支援事業」、京都府の「中間的就労提供事業者開拓事業」などがある。なお、同法における中間的就労については、これらの事業で行われているように、就労先への補助と、若者への経済給付が必要である。 


(3)社会的雇用――働く能力の限定された若者を包摂しうる雇用の提供

働く能力を、一般雇用に耐えうるまで伸ばせなくても、本人なりの100%の力を発揮し働ける職場を提供する。また、社会的雇用は、(2)の中間的就労と併せて提供することもできる。 


1.社会的事業所(滋賀県、箕面市などが実施)の拡充・法制化

障害者雇用の拡充を中心に各自治体に設置されている社会的事業所には、現状でも、被差別地域出身者、外国籍市民、高齢者、母子家庭の母親などが働いており、包摂的な雇用を提供している。これに健常者も対象者と明記し、法制化する。


2.就労継続A型事業所における、障害のない対象者を含めた報酬の算定

就労継続A型事業所では、障害者だけでなく、障害を持たないものを一定の割合で(例えば、20人以下の場合半数まで)受け入れられるとされているので、これも報酬算定の対象とする。


3.社会的協同組合や社会的企業に関する基本法の制定

欧州における社会的雇用の代表的な形態である、社会的協同組合や社会的企業についての基本法を制定する。韓国の協同組合基本法や社会的企業育成法が参考となる。



(4)グレーゾーンの若者を雇用するための、企業・事業所のキャパシティの向上

包摂的雇用を目指す企業や事業所側をサポートすることにより、グレーゾーンの若者に力を発揮してもらい、社会的雇用ではなく、一般雇用による職場定着を図る。


1.グレーゾーンの若者を雇う企業の認証

若者の雇用に貢献している企業を認証し、社会的調達などの優先調達や優先発注、債務保証の信用強化、補助金、税制上の補助、助成要件の緩和、低利融資、企業間連携の促進などの支援を行う。


2.企業などへの職場づくりや雇用ノウハウの研修・共有支援

発達障害や精神障害の傾向を持つ者が多いことから、豊中市などのように、そうした若者が定着・活躍できる職場づくりのための研修を行う。


3.企業などへの報奨(法定雇用率、助成金付き雇用など)

グレーゾーンの若者に対する法定雇用率を定め、また、雇用に対し一定期間の助成を行うような仕組みを取り入れる。現行のトライアル雇用奨励金を若者の支援にも使いやすいものに変えていく。 



(5)地方活性化と連動した若者の雇用の創出

地方では、雇用の不足から多くの若者が仕事のないまま孤立しており、地域での雇用創出など地域課題と連動した、例えば福祉課題や医療課題の解決と絡めた若者のための雇用の場を内発的に創ることが求められている。

一例として「、福祉でまちづくり」を標榜する、秋田県藤里町社会福祉協議会では、特産のマイタケを生かしたキッシュを開発し、引きこもりの若者の雇用を創りだしている。 


『若者政策提案書』が完成しました|活動報告・イベント案内|ビッグイシュー基金

 

編集部より:随時記事を追加していきます。記事の一覧はカテゴリーページ「若者政策」をご覧ください。

また、提案書発表会で話された「出口」に関する記事はこちら。
少年院を出所した子どもは、就職できるか否かで「再犯率」が大きく変わる。若者支援における「出口」の重要性 : BIG ISSUE ONLINE





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