森山誉恵さん「東京都内だけで、3,000人以上の子どもが児童養護施設で暮らしています」(1/2)

ビッグイシュー・オンライン編集部のイケダです。講談社「現代ビジネス」の協力のもと、児童養護施設の子どもたちの教育問題に取り組む「3keys」の代表・森山さんにお話を伺ってきました。

東京だけで、3,000人以上の子どもが児童養護施設に

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(森山誉恵さん)

イケダ: 今回は、NPO法人3keys (スリーキーズ)代表理事の森山誉恵さんにお越しいただきました。子供の貧困や教育格差、そして3keysの活動についてお話を伺えたらと思います。

森山: よろしくお願いいたします。

イケダ: まず最初に、児童養護施設の子供たちが抱える課題について教えてください。

森山: 私たちが支援の対象にしているのは、格差のもとにある子供たちです。その中でも特に児童養護施設にいる子供たちに焦点を当てて活動しています。

前提として、児童養護施設は、戦後孤児を預かる場所として始まったものでした。親戚なども預かれなくて、行政が保護するしかない子供たちの場所としてできたので、現在でも学校法人や宗教法人が運営していることが多いです。

しかしながら、そのような文化がなくなっている中で、社会保障化が進んでいます。昔に比べて地域や親族とのつながりなども希薄になってきていることもあり、ニーズが増えている状態です。今では、東京だけでも18歳以下で3000人以上の子供たちが児童養護施設で暮らしています。そのため、定員が埋まっていて、常に待ち状態です。

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(参考:「東京都の社会的養護の現状」)

その中で、身近にサポートする人が足りていない子供たちに対して、3keysでは学習支援にフォーカスしています。しかしながら、子供たちが幼いころに身に付けるなければいけないことが身に付いていなかったり、愛情不足だったり、教養面なども足りていないので、問題は根深いです。

イケダ: 児童養護施設に来る子供たちは、基本的に親が子供を育てられなかったり、親と死別してしまったことなどが原因なんですか?

森山: そうですね。昔は親を亡くした子供たちが来ることが多かったんですが、現在では、施設に来る子供たちの95%には親がいます。しかし、その親が精神疾患だったり、虐待をしたり、また親自身も生活保護を受けているケースもあり、世代をまたぐ複雑な問題となっています。

18歳で「自立」を迫られる子どもたち

イケダ: 施設の子供たちは、18歳で施設から出て行くんですか?

森山: 基本的には、児童福祉法行政のもと18歳まで守られていますが、2年前くらい前に行政の方で、20歳まで延長してもいいということが通知されました。ただ、施設の方もいっぱいいっぱいなので、次の子供たちのために、できるだけ18歳で出ていくことが暗黙のルールになっています。

イケダ: 要するに18歳以上になったら、自立しなきゃいけないということなんですね。たとえば、勉強したい子供というのはどうなんでしょう。どうしても働きながら通える学校に進学するということになるのでしょうか?

森山: 進学の場合は、夜間になることが多いですね。施設の子供たちの8割が就職の選択肢をとっている状況で、基本的に働くことを選ぶ子供たちが多いです。親からの支援や奨学金の活用をもとに進学する子もいますが、まだ一握りしかいませんね。

また、意欲的に高校まで学習しようという子供たちの方が圧倒的に少ないです。中卒も2~3割ほどいますし、たとえ高校に進学したとしても、中退してしまうケースが多いです。

「共助」を取り戻すために

イケダ: 児童養護施設の子供たちに対して、3keysは学習支援をしていますよね。具体的にはどのようなことをやっているんですか?

森山: 基本的には学習支援が目的ではありません。昔の地域社会における、共助の文化が都心部では失われているので、それ別の形で再生できないかと考えて活動しています

私自身は両親が共働きだったこともあり、マンションのおばさんが夜遅くまで面倒を見てくれていました。そういうお金ではない、つながりが支えていた部分をもう一度取り戻していかないと、自己責任論になったり、社会保障が膨らむだけなんですよね。

私は、昔の地域社会でいう「おすそわけ」が「寄付」で、「助け合い」が「ボランティア」だと思っています。おすそわけをいただきながら、公助だけに頼らず、子供たちに最低限の支援をしていけたらと考えて、活動しているんです。

昔、地域の中でボランティアをやっていこともあるんですが、退職された教師を含む60~70代の方々が多く、大学生だとなかなか居づらかったり、子供たちが昔の常識で勉強を教えられたりしていました。

しかし、そこで活動している方々がいなくなった時に、若い人が参加していかないと、ますます共助がなくなっていくと感じたんです。そこで、大学在学中の2009年に、周りの大学生に声をかけて団体を作ったことが3keysのはじまりでした。

学生主体ということでSNSを活用したり、学生が参加しやすいこともあり活動が広がっていきました。一方で、学生の団体で心のケアまで行うのは行き過ぎとも考えていたので、現実的な子供たちに対する自立支援として「学習」にフォーカスしています。さらには、この問題に市民参加を促していかないと手遅れになってしまうとも感じています。

後編に続く