ホームレスが路上で販売する雑誌、「ビッグイシュー日本版」。毎月1日、15日に発売される雑誌の販売者は、全国で124人(2016年12月末現在)。それぞれの販売者がコツコツ売り上げる雑誌を積み上げると、発行部数は毎号数万部になる。
そのうち東日本の路上で販売している65名を裏で支える東京の「販売サポート」の仕事はどのようなものなのか、「ビッグイシュー日本」のスタッフである長崎に仕事の内容とその面白さについてインタビューをしました。

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販売サポート・広報スタッフの長崎。

Q:「販売サポート」の通常の一日の流れを教えてください

仕入れ対応をしつつ、販売者さんの相談に乗り、様子を伺い、日報で他のスタッフにバトンタッチ

販売者さんからの相談対応などが随時あるので、決まった時間通りに何かをするということはあまりないのですが、必ず毎日行うのが仕入れの対応です。

ビッグイシューは、販売者さんが一冊170円で「自分が売る」と決めた数を仕入れますが、一度に大量に仕入れるわけではなくて、売れ残りがないように少しずつ仕入れることが多いんです。
そこで毎日3回、仕入れの対応をしています。
朝は7時~9時半、昼は13時~14時、夜は18時~19時で、仕入れに来た販売者さんに雑誌を渡し、会社の売り上げを管理します。なので、販売サポートには「朝番」と「遅番」の2シフトがあり、朝番は平日朝7時~16時、土日祝は9時~18時です。朝番は週に1~2回です。

仕入れ対応の時に、販売者さんとお話したり、様子を見たりしているので、雑誌の卸というよりは販売者さんからの「(販促の)ポスターある?」「薬はない?」「寝袋余ってない?」「もうちょっと売りたいんだけど」などのよろず相談対応もしますし、健康や心の状態の定点観測もしているという感じです(笑)
その場で完結できる相談はそこで解決し、必要に応じて他の部署や他の団体につなぐこともあります。

そして仕入れの数や、受けた相談内容、相談はされなかったけれど「元気がなさそう」などの気になったこと等を日報に記入します。複数の販売サポートスタッフで交代で対応するので、他の人が対応した内容を頭に入れた状態で、販売者さんと向き合います。これって、積み重ねが大事なんですよね。

販売サポートに向いている人(1)
・人の体調や気持ち、心の変化に気づくアンテナがある人
・チームで販売者をサポートするので、人との間合いを取るのが上手な人


Q:仕入れ業務以外の業務には
どんなものがありますか?

販売希望者が訪ねてきたら、そこから最優先で面談。
販売するとなったらレクチャー後すぐに販売開始

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販売者になりたい…といって事務所を訪ねてくる人がいらっしゃる場合は、最優先に対応します。住所や身分証明がなくて、その場でこの仕事が始められないと、行き倒れてしまいかねない人もいらっしゃいますから。 販売登録希望者はほとんどいない月もあれば、1日に2人という日もありますが、多くて月に4~5人というところです。

まずお話をお伺いして登録作業をするのですが、たいていの場合は緊張して、お腹を空かせていらっしゃるので、お食事どうですか?お茶はどうですか?と勧めて、緊張をときほぐすような会話をしながら、これまでの経緯や仕事経験をお伺いします。

販売の仕事は、真夏も真冬も路上で立ち続けるという案外ハードな仕事なので、ビッグイシューの仕事をするうえで妨げとなりうる病気や障害がないかもこの時確認します。必要に応じて適切な機関につないだり、生活保護を勧めたりすることもありますが、8割以上の方が、いったんはビッグイシューの仕事をする、ということになります。販売するとなると仕事の説明を一通りしたうえで販売者として登録を済ませると、「ビッグイシュー」を10冊提供します。(最初の販売では、10冊は無料提供し、その売上で次回からは1冊170円で仕入れてもらう仕組みです)

路上で雑誌を売ったことがある人なんてほとんどいませんから、このとき一緒に、事務所の近くの販売場所に行って、実際の販売についてレクチャーしながら販売を始めます。
こんな姿勢で立つといいですよ、雑誌とおつりの受け渡しは順々にやった方がスムーズですよね、といってお手本を見せたり、その方が立って販売中の姿を写真で撮って見せてみて「あ、思ったよりうつむいて見えますね」と気づいてもらったりしながら、登録希望で事務所を訪れてから1~2時間はつきっきりでサポートします。

ホームレスであることをカミングアウトするのってとても勇気のいることで、しんどいことだと思うので、なるべく心がほぐれるような会話を心がけています。

販売者からの電話相談にも随時乗る。
たいてい公衆電話だから、折り返せないし、時間制限つき。

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あとは、販売者さんから電話で相談を受けることもあります。

たいていは公衆電話からなので、用件も聞かずに「折り返します~」というわけにもいかず、かといって通話時間も限られていますから、すばやくニーズを聞いて、判断・回答です。どうしてもその場で回答できない時は「確認するので、●分後にもう一度電話してください!」と言って切ります。

これは他の会社ではありえない電話応対ですよね(笑)

相談の内容は、「思ったより売れない」「場所を変更したい」「売り切れたので仕入れに行きたい」「仕入れは何時から?」などの販売に関するものから、「寂しくて…」という人もたまにいます。人によりますが、1日中一人で外に立って、目の前をたくさんの人が通り過ぎるだけ、というのがつらい人もいるので…。もし皆様の近くにも気になる販売者がいたら、一声かけていただけると、販売者も販売サポートも助かります(笑)


各販売場所への出張サポートも

人手が足りなくてなかなか私自身は多くは行けていないのですが、もう一人の販売サポートスタッフは週1程度、各販売場所に行って相談に乗っています。
事務所で話すよりも、実際に販売している現場で相談に乗ったほうが、お互いに困りごとも見えやすいし、話が早いこともありますので、もう少しこれは頻度高く取り組みたいと思っています。
販売サポートに向いてる人(2)
 ・初めての相手の心をほぐすコミュニケーションができる人
・不測の事態にも、焦らずなんとかしようと思える人
・「人」に対して好奇心がある人


販促グッズの準備や、イベントでの販売促進も

路上での販売のためのポップやポスターの在庫づくりは地味ですが重要な仕事です。
デザインのスタッフが作ったポスターをスキマ時間にプリントして、ラミネート加工したりといった販促グッズを売り上げ予測に応じて作ったりもしています。

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通常の路上販売以外にも、アースデーや各種イベントでの出張販売をすることがあります。
そのときは、販売希望者を募って打ち合わせをしたり、雑誌の準備、設営等をします。

アースデー並みの大きなイベントの場合は、2日間にわたって販売者さんも7,8人連れていくので、何か月か前から準備することもあります。
忙しいと言えば忙しいですが、残業はなるべくしないようにしていますね。

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Q:「販売サポート」のやりがいってどんなことですか?

「日々の小さな変化の積み重ねのうえに、その人の幸せがあるのだなあ」と感じられる仕事

「社会的企業」だからといって、華々しい感じではありませんし、「人を助けることがやりがいなんです!」みたいなキラキラした感じでもないんですよ。

年に1~2度は、「ああ、この人の命をつなぐことができた!」というシーンもあり、それも大切な瞬間ではあるのですが、ひとえに、販売者さんと、日々を積み重ねることがうれしいというか、面白いというか、最初に出会った頃はギリギリの状態で緊張していた人が、1~2カ月で柔らかい表情で笑うようになってきたな、とか、他の販売者さんに気遣いしていて、ちょっとした心の余裕ができてきたんだな、とか。

それは私たちがサポートするからというよりは、お客さんとのやり取りでそうなるのだと思うのですが、「心が開く」「心がほぐれる」様子が見えてくるのが、楽しいというか、うれしくてたまらない気持ちになります。
日々の小さな変化の積み重ねのうえに、その人の幸せがあるのだなあと感じられる仕事だと思います。

ホームレスの人が相手のお仕事って?ってドキドキするかもしれませんが、気のいい人がいたり、頑固な人がいたり、いるだけで回りが笑っちゃうような人がいたり、物静かな人がいたり・・・という感じは、どんな職場でも通ずるのでは?と思います。

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ホームレスである販売者の皆さんは、建前でなく、本当に、ビジネスパートナー。

ビッグイシューは、ホームレスの人たちをビジネスパートナーと言っていますが、あれは建前じゃなく本当にそうだと思います。

日々のやりとりにおいても、販売者の皆さんに助けられているなあと思うことはしょっちゅうあるんです。 たとえば社内で何か話をしていて、私と誰かの意見が合わなかったり、意図したことが伝わらないなあと思った時に、すかさずその場にいる販売者の人が「長崎さんが言いたいのはこういうことじゃないの」とか、「こないだ長崎さん、こう言ってたよ」みたいに助け舟というか、場を円滑にしてくれることがよくあって。
仕事の仲間として、頼もしいな、と思うことはよくあります。

Q:職場としての「ビッグイシュー日本」のいいところはどんなところだと思いますか?

個人の事情に合ったフレキシブルな勤務が可能

人間関係でしょうか。スタッフが入院や通院することになったときも、非常にフレキシブルな勤務ができるようにしていました。
個人の事情に応じて、働き方を融通し合えるところがとてもいいところで働きやすいと思います。
仕事が多いな、と思ったら「大丈夫?」と声をかけあうような空気がありますね。
仕事も気遣いあってできていると思います。

人事評価制度がない、査定のない働き方

私たち販売サポートスタッフの仕事は、“ホームレス状態の方が「ビッグイシューの販売」という「仕事」を通じて成功し、ホームレス状態を脱出する、そのサポートをする”ということです。
そのために、まだビッグイシューのことを知らない方に声をかけることも仕事の一つですし、事務所にいらした方に説明をしたり、日々のやりとりの中でちょっと踏み込んだ質問や提案をすることもあります。
一人ひとり違う販売者さんと日々接する中で、その方がなりたい状況に近づけるためには、私たちに何ができるのかを自発的に考えて、周囲のスタッフと相談しあいながら仕事をしています。

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東京事務所のスタッフ

不思議に思われるかもしれませんが、人事評価制度はありません。
小さな職場だからこそ、お互いの持ち味を生かしあいながら、皆で考えながらいい働き方を見つけていきたいと思って働いています。
そんな職場で働きたいという方は、ぜひビッグイシュー日本への転職をご検討ください。

ビッグイシュー販売スタッフ(東京)正規スタッフ募集中

■仕事概要
・雑誌『ビッグイシュー日本版』をより効果的かつ継続的に、路上で販売するためのサポート
・事務所での卸業務
・販売希望者の勧誘、登録面談
・販売者の相談業務、販売場所での相談業務など
・さまざまなイベントの運営
・事務作業(電話・メール応対・売り上げ管理など)全般・雑誌の搬入出・倉庫作業(力仕事です)


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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。