東京五輪・パラリンピックには、大会史上初めてトランスジェンダー(生まれもった性別と自認の性が一致しない人)を公表した選手が自認する性別で出場するなど、日本でもその存在がかなり浸透してきている。
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トランスジェンダーの人たちは、“トランスフォビア”(性同一性障害やトランスジェンダーの人に対する差別や嫌悪)によって、拒絶、嫌がらせ、暴力、ひいては自殺未遂までをかなり高い割合で経験しています。
まずは何よりも、本人が自認し、その性別で生きていこうと選択したアイデンティティを尊重してください。トランスジェンダーは、心の病だろう、気持ち悪い、ありえないなどと面と向かって言われることもありますが、決してそんなものではありません。
残念ながら、トランスジェンダーは劣った人間であるかのような物言いをされることもあります。あからさまに、じろじろ見られたり、ジェンダーをネタにした悪質な冗談を言われたりすることも少なくありません。性別を変えること、名前を変えること、からだのこと……プライバシーの侵害にあたる、失礼きわまりない質問をぶつけられることもあります。
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リベラルな街として知られるポートランドでは、路上生活者に占めるトランスジェンダーの割合が非常に高いです*。しかし残念ながら、ホームレス支援団体やシェルター(簡易宿泊所)で働く人たちのあいだでも、トランスジェンダーに対する配慮に欠けた対応をよく目にします。
*参照:Why is Portland’s Transgender Homeless Population Growing So Fast?
私自身、屈辱的な思いを何度か経験しました。男性と同じシェルターで安全かとスタッフに相談したら、なら女性用シェルターに行くしかないですねと、相手にされなかったこともあります。男性として暮らし、法的にも男性と認められている自分が、女性用シェルターを利用するのは居心地が悪いですし、他の女性たちだって嫌でしょう。だからといって、男性と同じシェルターでは、性的暴行に遭うリスクもある。このあたりでは、男性になる以前の私を知っている人も多いですから。
私だけじゃありません。他のトランスジェンダーの人たちが、スタッフや他のシェルター利用者などから、嫌がらせや差別的な扱いを受けている場面も何度も目にしてきました。トランスジェンダーの生活困窮者が、安心して宿泊できる場が必要だと思います。シェルター、支援センター、病院といった、生活の拠り所となる場所で安心を得られない、受け入れられていないと感じるなど、本来あってはならないことではないでしょうか。
それに、トランスジェンダーであることを公表し、新しい名前で生きていこうとしている人がいれば、必ずその新しい名前を使ってください。いつまでも過去の名前で呼び続けるのは、本人の選択を尊重していないことになります。性別を変える、名前を変えるという選択をあざ笑うような物言いをしてくる人たちもいますが、あってはならないことだと思います。また、会話の中で何気なく使う「彼(he)」「彼女(she)」といった代名詞の使い方に無頓着な人もいますが、本人が自認・公表している性別に合わせた呼び方に配慮していただきたいです。
また、生まれ持った性別に違和感を感じている子どもたちもいます。そんなこと自分で判断できる年齢ではないとはねつけるのではなく、本人の考えを尊重する姿勢を忘れないでください。
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(『ストリートルーツ』の販売者が制作したジン2019年版に掲載された) あわせて読みたい
By Phoenix Oaks
Courtesy of Street Roots / INSP.ngo
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