中電、山口県と上関町に調査提案。中間貯蔵施設を上関原発計画地に建設!?

中国電力(以下、中電)は8月2日にプレス発表を行い「使用済燃料中間貯蔵施設の設置に係る検討を進めること」を明らかにし、中電の大瀬戸聡常務執行役員は上関原発計画地で立地可能性に向けたボーリング調査を実施したいと山口県と上関町へ申し入れた。この建設は関西電力と共同で行うという。

原発建設を止め続けた祝島漁民
昨年、原発推進派の町長誕生

中間貯蔵施設案は、上関町から新たな地域振興策の要請を受けた「回答」として提案されたものだ。地元住民たちは直ちに集まり、説明に訪れた中電幹部を西哲夫町長に会わせまいと抗議行動を行なった。早くも町を二分する分断が起きていると報道は伝えている。
8月18日の臨時議会で議員から意見を聞いた後、西町長は調査受け入れを表明した。
上関原発計画は1982年に浮上した。14万㎡の海を埋め立てて2基が建設される計画だ。計画浮上と同時に対岸3km強にある祝島の漁民たちを中心に反対運動が高揚し、今日まで建設を止め続けてきた経緯がある。

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中電は2009年に当時の原子力安全・保安院に設置許可申請を提出。11年には海域の埋め立てに向けた工事が強行されようとして激しい衝突が起きた。しかし、福島原発事故で事態は急変し、計画は事実上停止状態となっている。中電は計画を撤回していないが、運転開始時期を明記できないまま、埋め立て許可の伸長申請などして、ずるずると先延ばししてきた。

政府の原子力政策は新規の原発建設を建て替えとして位置付けているため、上関原発計画は政策上、白紙状態となっている。
そんな中、上関町では昨年10月に11年ぶりに町長選挙が行われ、原発推進の西町長が誕生した。それまで原発に依存しないまちづくりを進められてきたが、方針が転換された。

関電に県外搬出求める福井県
関電のための貯蔵施設か?!

ところで、関西電力は福井県から使用済み燃料の県外搬出を求められ続けている。2000年代はじめ、関電は自民党議員を頼り御坊市に中間貯蔵施設の建設を働きかけたが、議会が拒否。さらに21年には青森県むつ市の中間貯蔵施設の共用を働きかけるも同市長が「ありえない」と反対。いずれも頓挫していた。
そして、今年に方針を示せなければ原発を止めると福井県と約束。本誌8月1日号で報告したようにフランスへ輸送する契約を進めた。愚策とも言える付け焼き刃対応では、将来増え続ける使用済み燃料への対策にはならない。
中電は使用済み燃料貯蔵に十分な余裕があり、対策を急がなければならない理由はないことから、関電のための中間貯蔵施設であると断言できる。
原発推進政策に逆戻りした政府も使用済み燃料対策を急務の対策としている。六ヶ所再処理工場(青森県)が竣工しそうもない現状が、この状況にさらに拍車をかけている。
こうした経過を見ると、政府と電力業界が一体となって上関町に働きかけ、表向きは地元からの要請という形を作ったと考えるのが妥当と言える。
中電は海域の埋め立ては行わないと述べているが、中間貯蔵施設が現実となれば、110トンを超える輸送物の陸上輸送は難しく、巨大なクレーンを伴う港湾建設が避けられない。後出しで次々と施設群が膨れていくだろう。
対岸の祝島島民たちは原発が貯蔵施設に変わっても、漁業への影響こそあれ何のメリットもない。関電が抱えてきた困難を上関に押し付けることは許されない。(伴 英幸)

(2023年9月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 462号より)

伴 英幸(ばん・ひでゆき)

1951年、三重県生まれ。原子力資料情報室共同代表・事務局長。79年のスリーマイル島原発事故をきっかけに、脱原発の市民運動などにかかわる。著書に『原子力政策大綱批判』(七つ森書館、2006年)
http://cnic.jp/