ルワンダの内戦、虐殺の悲劇の体験から語る「福島のこれから」

民族紛争による内戦と虐殺(ジェノサイド)を経て難民となったのち、福島の支援者によって日本に逃れ、福島に暮らして約20年。紛争が収まった母国ルワンダの再建に向け、母国への教育支援活動を続ける女性がいる。その名はカンベンガ・マリールイズさん。

マリールイズさん写真展
(福島市内で開催された写真展で、学校建設と教育の重要性を話すマリールイズさん)

マリールイズさんは、福島を中心とする全国の支援を受けて、12年前からルワンダで学校運営を始め、悲劇の歴史から新しい時代を切り開こうと奮闘してきた。3.11当時は、福島で近所の人と助け合って過ごした。その後はスカイプやメール、電話などで英国の公共放送BBCやルワンダのラジオ局に、原発事故が起きた福島の現状と、一般の人々の生活状況を発し続けた。

「ルワンダも内戦の後、本当に大変な状況が続いた。突然の出来事で生活が一変したのは福島も同じ。私は祖国を立て直すには教育が何より必要と信じ学校建設をしてきたが、震災後の福島もこれからは人材育成、教育に力を入れるべきだと思う。福島を立て直していくのは人材で、人材教育がなければ、国や地域の発展も、貧困問題の解決も、そして平和の維持もありえない」。そう力強く語る。

マリールイズさんがつくった学校「ウムチョムイーザ学園」では、幼稚園児と小学生約210人が学ぶ。5、6年前からはJICAから教師が派遣されるようになり、子どもたちは簡単な日本語を学んだり、千羽鶴を折ったり、絵の具を使って絵を描けるようにもなった。

内戦や虐殺で父親のいない家庭が多く、母親が事業を起こせるよう、母親を対象にマイクロファイナンスの学習もしている。2教室からスタートした学校も15教室に増え、将来的には、井戸掘りや雨水の活用など水環境整備のための専門学校建設へと夢がふくらんでいる。

そして今年は、1月4日から9日まで学校生活の様子や子どもたちの表情を収めた写真展を福島市で開催。震災以降は毎月、県内仮設住宅を訪問してルワンダコーヒーをふるまうマリールイズさん。コーヒータイムも恒例となり、楽しみに待つ〝常連さん〟も増えた。

「家に帰れない不安は、私たちが行ったからといって払拭できるわけではないけれど、せめて一緒にルワンダコーヒーを飲みながら、ほっとするひとときを持ってもらえたら」。マリールイズさんの表情が優しく輝いた。

(文と写真 藍原寛子)

(2013年2月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 208号より)