ボランティア医師・看護師が見た、年末年始の路上生活者支援の現状:「ふとんで年越しプロジェクト」報告会より5

part4「山谷、池袋、渋谷でホームレスの人々はどのように年を越えたのか:越年越冬活動・現場からの報告」を読む

年末年始の医療支援から見えてきたこと

みなさんこんばんは、看護師をしております高桑です。普段は池袋の横で医療班の活動に従事しています。今回はこのプロジェクトに参加し、9日間活動を行いました。2点にわけてご紹介させていただきます。

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相談の実施期間ですが、12/28〜1/5の9日感、計8回行いました。医師が診察をして、必要に応じて薬を無料で処方し、必要であれば病院に紹介状を書いてもらっています。

相談者数は述べ115名で、1日の平均は10〜20名程度。年齢は60代が一番多かったです。一般的な風邪症状が最も多く、慢性疲労なども蓄積しており、簡単に感染をしてしまい、なかなか症状をよくならないという要因があると思います。その他にも腰痛、糖尿病、頻尿、高血圧などの方もいらっしゃいました。

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2点目の活動として、協同シェルター利用者の訪問診療も行いました。全員の方を診察できたわけではありませんが、各ケースともに生きることの困難さと向き合う場面に出会いました。

私たちは身体的、精神的、社会的にどのような困難があるかを見て、介入するかどうかを判断しています。30代男性は初めての路上生活で寒さと孤独で心が折れてしまいそうだ、という状況でした。

一般の方からすると、なぜ路上生活を選ぶのか、理解しにくいかもしれません。本人の意志を尊重しつつ、適切な情報を提供しつつ、その日とらしく行きていける環境を整えることが大切だとあらためて感じいました。ご清聴ありがとうございました。

医師が見た路上生活者支援のポイント

西岡:こんばんは、私世界の医療団でボランティア医師をしております西岡と申します。

印象に残った方のお話をしたいと思います。Y.Oさん、57歳の男性です。相談の内容は便秘、右肩、顔の痛みがあるとのことです。2013年12/27に突然転倒して顔面と方とを打撲し、このとき痙攣をしていたと。診断を受けましたが、外来で経過観察となった方です。

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診察をすると、硬膜下血腫は経過を見るしかないと判断し、便秘薬とカイロを渡しました。もう一度会ってみると、左のふくらはぎが晴れていると訴えました。深部静脈血栓症の可能性があるとのことで、Y病院を紹介しました。するとそこでは結核の疑いもあるということで入院しました。

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病院にもかかっており、医療相談会にも来ているのに、言われた場所だけを見て、全身を見なかったために、結核症や血栓症を見逃していました。これはすごくよくあることで、ホームレス、精神疾患、知的障害などの方が病院に来るとこうなりがちだということで、反省点です。

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O.Kさんは腹痛、吐き気、嘔吐の症状を訴えていました。12/27から食事がとれないため、12/30の医療相談会を尋ねたということです。本人の話だと2003年に十二指腸潰瘍で吐血したとのとこです。今回はそのときと症状が一緒です、と。ガスターを出したところ、治ったと喜んでいただきました。お医者さん的にはこれでめでたしめでたしですが、本当にそれだけでいいのか、と。

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続きを詳しく聞いてみると、大学法学部を卒業しているインテリの方でした。自分の病歴を語るのがとても上手で、一年前まで生活保護を受けていたそうです。やくざに追われて逃げている状態とのことで、病院にも役所にも行けないとのことです。法律家の介入が必要で、最終的には法律相談につなげたとのことです。

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目先の訴えや部分だけを見ていてはだめです。また、路上の医療相談だけで不十分だということです。医療相談をきっかけに、路上生活者のニーズを掴み、支援を繋いでいく必要があると考えます。

ご清聴ありがとうございました。

「ふとんで年越しプロジェクト」報告会レポート
1:年末年始の閉庁期間の生活困窮者、路上生活者を支援する
2:路上生活者支援のあるべき「前提」、個室シェルター、閉庁期間の生活保障の担保
3:不十分な日本の「住宅政策」と「ハウジングファースト」という考え方
4:山谷、池袋、渋谷でホームレスの人々はどのように年を越えたのか:越年越冬活動・現場からの報告
5:ボランティア医師・看護師が見た、年末年始の路上生活者支援の現状
6:路上生活者支援の新たなキーワード「ハームリダクション」「ハウジングファースト」「ネットワーク」