著名で裕福なNFLフットボール選手2人がホームレスに扮し、路上生活者の体験を味わうドキュメンタリーが、スポーツ専門局ESPNで放映され、話題になっている。
セントルイス・ラムズのディフェンシブエンドを務めるウィリアム・ヘイズ選手(30歳)と、同チームで同ポジションの親友、クリス・ロング選手(30歳)はコンビを組み、セントルイス市の路上で一日を過ごした。
二人を追跡する隠しカメラがまず捉えたのは、みずぼらしい格好と老けメークをしたヘイズ選手とロング選手を見つけた警察官が、職務質問する様子だった。
「いつものちゃんとした身なりなら、止められない」と、ロング選手は回想する。
彼らは4ドルずつしか渡されていなかったので、食事を買うために物乞いを始めた。
段ボール紙に「ホームレスです。お金を恵んでください」と書かれたサインを持ち、路上に立つセレブな二人。誰も彼らが地元チームのスター選手だなどと気づかない。
白人のロング選手は5ドルをもらえたが、黒人のヘイズ選手は収入なしだった。
氷点下に近い夜、やっと見つけた廃墟。ドラム缶のたき火で暖をとる二人だが、先住者が来て、「ここは俺の場所だ」と宣言し、追い出された。
その後、廃車になったトラックの貨物室に潜り込んで寝ることができた。「人生で最悪の夜だった」とヘイズ選手は言う。
欧米には、有名人や聖職者がこのように路上生活者に扮して、人々を試す伝統がある。
イエス・キリストが、「最も小さき者にしなかったのは、私にしなかったのである」(マタイ伝25章)と述べたことに由来する伝統だ。
ソルトレークシティのモルモン教司祭、デイビッド・マッセルマン氏(47歳)は、白髪のかつらを着用して汚れた服装で教会に行き、礼拝に訪れた信者に声をかけた。
お金を渡す人もいたが、大半は無視するか目を背け、「教会から出て行け」と言う人もいた。変装を取って正体を明かすと、信者らは驚き、中には泣く人もいた。
最も小さき者に心を開くことは、誰にとっても難しい。変装のセレブや聖職者が教えてくれる現実だ。