現在路上で発売中のビッグイシュー日本版254号から、読みどころをピックアップしてお届けします。
世の中の多くの高齢者施設は「不自然」:「ゴジカラ村」に見る多世代共生のあり方
本日ご紹介するのは、特集「市民がつくる希望の経済 シビックエコノミー」から、愛知県長久手市の「ゴジカラ村」の事例。
愛知県長久手市の猪高緑地に接する3.3haの雑木林の中に、「ゴジカラ村」(5時から<アフターファイブ>の意味)はある。
1981年、「生まれ育った場所の雑木林をなんとか残したい」との、創設者の強い思いから誕生した。最初に幼稚園が建ち、隣に子どもたちとお年寄りが遊び交流するための民家が建てられた。
それから34年。今では広大な敷地に、特別養護老人ホーム、ショートステイ、ケアハウス、デイサービスセンターなどの高齢者福祉施設、幼稚園、託児所、古民家、カフェ、看護師・介護士を養成する専門学校などが点在。屋内の随所に付けられた木製の手すりなど、木材を多用した温かみのある建物が緑の林に溶け込むように佇む。
村には毎日、子どもたちからお年寄りまで、日々暮らす人、訪れる人900人以上が村の中を行き来する。事業主体は「社会福祉法人 愛知たいようの杜」(創設者所有の雑木林は寄付)だ。別組織の、学校法人と株式会社とも連携して事業を担う。
ボランティアの巻き込みも巧みで、年間500人を超える人々が清掃や大工仕事、お年寄りとのコミュニケーションに関わっています。
特に素敵なのが多世代住宅の「ぼちぼち長屋」。子育て世帯と高齢者が同居するシェアハウスです。
「ここは施設ですか?」
「いいえ、施設ではありません。」
ぼちぼち長屋は木造2階建てのアパートです。
介護が必要な方も普通のOLさんも子育て中の家族も「いろいろな人が混ざって暮らしている」 ところです。
小さな子どもからお年寄りまでたくさんの人が一つ屋根の下で暮らす・・・。
ぼちぼち長屋にはちょっと昔にあった大家族のような暮らしの風景がひろがっています。
この素敵な空間について、「ゴジカラ村 たいようの杜」の理事自重・大須賀豊博さんはこう語ります。
世の中の多くの高齢者施設には、高齢者と介護職員だけしかいない。これは、社会の構成とまったく違っていて不自然ではないか。
また、特別養護老人ホームには地域交流スペースを設置することが義務付けられているが、実際に見てみると建物の内側に集会室や喫茶コーナーをつくって内部で完結し地域との交流スペースになっていないことや、各人の居室も内向きで入居している人の顔しか見えないことが多い。
(中略)小規模地域密着型の特別養護老人ホーム『だいたい村』では、地域の小学低学年の子どもたちは学校が終わると「ただいま」とここに帰ってきて、親が迎えに来るまで宿題をしたり、入居しているお年寄りと話をしたりする。子どもたちには安心できる場であり、お年寄りも子供達が来るのを楽しみにできる。
介護を受ける高齢者は孤立しがちですが、こうした地域コミュニティを作っていけば、うまく包摂していくことができるのでしょう。特集「市民がつくる希望の経済 シビックエコノミー」をご一読いただき、ぜひ次の社会のデザインについてのヒントを掴んでください。
254号では他にも、立川志の輔さんのスペシャルインタビュー、東田直樹さんの「自閉症の僕が生きていく風景」、ホームレス人生相談などなどのコンテンツが掲載されております。ぜひ路上にてお買い求めください!
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ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。