人生のなかで「もう一度、新しい人生にチャレンジしたい!」そう思った時に、「誰もが」当たり前に1歩踏み出せるような、何度でもチャレンジができる社会・誰も取り残されないより良い社会について、一緒に考えるトークイベントを2017年8月18日(金)に東京都台東区の厳念寺にて開催しました。

参加団体は性風俗産業で働く女性のセカンドキャリア実現を支援する一般社団法人GrowAsPeopleと、ホームレスの人の自立を応援する有限会社ビッグイシュー日本認定NPO法人ビッグイシュー基金です。


性風俗産業で働く女性のセカンドキャリア実現を支援する「GrowAsPeople」

角間:
GrowAsPeopleという団体の代表の角間惇一郎と申します。私たちは一般社団法人として、社会課題を解決するために存在している団体です。
こんなミッションを掲げてやってます。

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<「どんな状況にいても孤立せず、望めばに行ける。」そんなセカイをつくろう。>

ポイントは赤字の部分です。
「孤立せず次に行ける」という部分をかなり大事に考えて3つの活動をしています。

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まず1つめが、「国内の夜の業界に対してのデータを集める」ということ。風俗産業に関わっているのは女性だけではないので、男性も含め、お店のデータ取るということをやってます。風俗にいる人の課題に向き合おうとすると、どうしても女性のほうに目が向かいがちなのですが、我々は風俗全体を見て、そこのデータを集めているということをやってます。

次に「セカンドキャリアの機会提供」。これは女性に限定しているわけではありません。ミッションも女性の課題限定ではありません。僕らが解消したいのは世の中の孤立で、「次」に行ける社会を作りたいなという思いです。その対象者がたまたま今は夜の業界にいるだけなんです。

なお、セカンドキャリアの支援といっても、夜の仕事を辞めさせるということはしていません。「次に行ってほしい」じゃなくて、「行きたいときに行ける」状態にしたいと思っています。辞めたくなった人が、うちへ訪ねてくる、という形です。

1つめで「データの収集」、2つめで「辞めたい人のセカンドキャリアの機会提供」をしていると、さらにさまざまな情報が溜まって来るんです。

それを踏まえて3つめの活動として、「情報発信」をしています。NPOってサービスと情報発信という二つの車輪を持ってる自転車みたいなもので、サービスだけだと駄目だし、情報発信だけでも駄目なんで。そのバランスを取るという意味でも、僕はサービスをやりつつ、情報を出すという。この3つのことをやらせていただいているという感じです。

さて、皆さん、夜の世界、風俗と聞いて何を思いますか? こう聞くと大体2種類のネガティブな印象なんです。1つは「エロ」か、残りは「やばい」か。色で言うとピンクか黒か…というイメージですよね。

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でも、そのイメージって、どこで仕入れたものですか?
大体ドラマとか、映画とか、カルチャー系のスパイスで使われている風俗嬢とか、貧困ルポ系記事に出てくる当事者みたいなものではないですか?
僕はそういう情報源をピンクの火薬、黒の火薬と呼んでいます。

ライターが風俗嬢をネタに記事にしても、NPOが支援対象者に対してアピールするときも、たまたま知った女の子のストーリーで全てを語ってしまいがちなので、私たちは数字で取るということを大事にしたいと思っています。
他の社会問題が「知られていないことを知ってもらう」という構造なのと違い、風俗産業は皆さんの中に溢れているこのピンクか黒のイメージを引き算していって大事なものを見せるという作業が必要なので、データを取るという活動をやっています。

たとえば風俗業界って、5兆円を超える産業規模があるんです。

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関わってる女性も女性だけでもかなりのボリュームなんですけど、多くの場合、数字ではなくてイメージだけで語られてるんです。
国も、そもそも「わが国には風俗産業などない」いうスタンスなので、データを取ってないんです。「お風呂屋さんの人とか、マッサージ屋さんの人がたまたまやってる」という、建前でやっちゃってるから、良い悪いではなくて、国としてはいないものとされているから、データ取れないらしいです。

データやアンケートなどの情報収集は、相談に来た女の子からというより、お店とつながって、お店からデータをいただくというやり方がメインです。
なぜかというと、風俗に向き合うと女の子の像ばかり追いがちですが、個人売春は除いて、風俗ってお店に所属しないと、できないことがほとんどなので、お店に様々な情報が蓄積しているんです。
風俗店は今全国で稼働しているのは約12000店。その中には、風俗業界に関わる女性、男性、ないしお客の情報がたくさん眠っているのに、誰もそれをまとめたり分析したりする作業をしていないので、私たちがそれをやってます。

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そして風俗産業の30万人は、本当に人それぞれです。でも、データを取ったおかげで、そのうちのマスはどこだというのは分かったんです。

よく風俗というと「しょうがなく働いて、働いてもお店に全部取られちゃってるかわいそうな人」をイメージしますよね。それを僕は「搾取型」と呼んでいますが、そういう人って全体としてみると、そんなに多くないんです。

その半面、動機はさておき、自分の意思でやってる人を管理型と呼んでいて、これは全体の6割合ほどいます。貧困で来てる人もいれば、遊ぶ金欲しさで来てる人もいるし、しかも関わり方もいろいろあって、月に1日しか風俗嬢として出勤しない子もいるんです。

僕らはマスである、(理由はさておき)自分の意思でやってる人たちに着目していて、しかもその中の、プロ意識が高い低い、収入が多い少ないの4分割した際に一番多い「稼いではいるが、風俗嬢という意識は低いという人たち」を事業の対象にしています。

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風俗の問題というのは数字が非常に大きい割には認識されてないけれど、大多数の「自分の意思でやってて、かつ稼いではいるが、意識は低い人」のニーズは「周囲にばれたくない」というものなんです。 「なぜ風俗に入ったか」という入り口は千差万別なので、そこの原因究明に力を入れても仕方がない。それより、ほとんどの人に共通の問題に着目したんです。どこにいる人も、どのタイプも、どの状態の人も、共通の問題。それはいつかの辞める瞬間のこと。辞める際に、次を見つけようと思っても「履歴書、書けない…」というつまづきなんです。

お店にいるキャストたちには「40歳の壁」があることに気付いたんです。容姿が優れてようが優れてなかろうが、稼ぎは良かろうが悪かろうが、年を取ってくることによって、みんな年齢を理由に辞めざるを得ないけど、履歴書書けないと。つまりセカンドキャリアに需要があるんです。僕らがそこを「やりたい」じゃなくて、これが風俗業界のマスの需要なんです。

風俗やってる人の勤務と収入を統計を取ってみると、大体12日出勤して40万稼いでるんですね。

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これ話すると、大体皆さん12日か40万のどっちかに目が行くんですけど、僕らはここに出てこない、残り18日に着目しています。
この残りの18日は彼ら・彼女らは何してるのか、というデータに着目すると、意外と「ニート」なんです。

1カ月に18日ぐらい自由になる時間がありつつ、実際にはうまく使えてないという現状があるので、その18日の間にNPOにインターン行ってもらったりとか、企業に研修行ってもらったりとかをしています。これは転職あっせんじゃないんです。空いてる時間を「使う」ことに集中しています。
夜の世界を辞めさせて次に行くんじゃなくて、夜の世界の間にかぶせて、昼の次につながるものを提供してます。

辞めたいというときにじゃあ資格取りなよとか、学歴持ちなよ、ということではなくて、空いてる時間を活用しなよということを提案してるんです。でも時間を活用する際に彼女たちはばれたくないという思いがかなり強いから、ばれずに済む、時間の過ごし方を提供するのを仕組みとしてやっています。ばれてはいけないので、具体的な団体や会社名は出せないのですが、そこで居場所として、「立場」を作っていってもらっています。

皆さんには、「周囲にばれたくない人が次に行けきやすい仕組み」を一緒に考えていただけばいいなと思います。

風俗の人が困ってるよという話をいろいろあって聞く機会があって、どんなに困ってる人がそこにいるんだろうと思ってお店の中に入ってみたら、多くの人は悲壮感を毎日抱えて生きているわけではなかったりしました。

世の中良くしたいのか、良さそうなことしたいのか。社会問題を解決したかったら、とにかくチャレンジすりゃいいというもんじゃなくて、良さそうなことするのもいいというものではなくて、もっと「実態を知る」ということを頑張ってもらえればなと思うわけです。事実やニーズに基づき判断するとか。

情報収集って、そんなにリスクはない。もうちょっとみんなに真似して、いろんな団体が増えてきてくれたらうれしいなという思いがあります。

質疑応答

男性A:経営側からデータを取る際、何かしら経営側にメリットがないといけないと思います。経営側に対してどういうメリットを提供しているのですか。

角間:それは相手の困りごとに合わせます。風俗店って、構造的にスタッフ側が人材不足なんです。例えばキャストが、子どもの問題、母子手当をもらいたいが、店のスタッフに聞いてもやり方が分からない。それをスタッフがうちに伝えてくるので、やり方教えてあげる。そうすると仲良くなって、データいただける。そんな感じです。

そういった女の子たちの困りごとへの対処を埋め合わせてるというのが僕らの強みです。女の子が居心地いい場所を作るというのが風俗店のスタッフの非常に重要な要素なんですけど、それを回すためにはマンパワーが必要ですが、スタッフの数は限られているので、それを代わりにアウトソースされている、みたいな感じです。

男性B:キャストの方は履歴書とか書けないとのことですが、普通の会社に就職する場合どうやって導いているのですか。あと就職率が何パーセントなのか聞きたいです。

角間:そもそも就職をしたらいいとは思ってないんです。というのも、僕らが解消したいのは孤立しない状態なんで。キャストは仕事がそのまま続けられない、そして将来の不安があって困ってるわけです。だから僕らにとっては、就職させたことよりも、就職に行ける自分を作る過程に、自由になる時間でいろんな人と会うことなどで、「立場」を持たせてあげたいというのが重要でと考えています。就職率に関しては、うちの広報に聞いてください。

ホームレスの人の自立を応援するビッグイシュー

佐野:私は『ビッグイシュー日本』というホームレスの方の仕事を作って自立を応援するという会社を14年前に立ち上げたメンバーの1人で、佐野未来と申します。

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今日GrowAsPeopleさんと一緒にイベントをやりたいなと思ってお声掛けした理由が、先ほどの角間さんがおっしゃっていた、「誰でも、どんな状況にいても孤立せず、望めば次に行ける」という理念が私たちが思っていることと一緒だなと感じたからです。『ビッグイシュー』でホームレス状態を抜け出せて次の仕事についたとしても「孤立」の状況が解決されていなければ戻ってきてしまう確率が高いんです。少し詳しくお話しますね。

『ビッグイシュー』は、見たことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、販売者が街頭で雑誌『ビッグイシュー日本版』を持って、販売しています。この方々は私たちが一緒に仕事をしている方々で、ホームレス状態の人です。当然『ビッグイシュー』を売る中で状況は変わっていくんですけど、『ビッグイシュー』に最初にいらっしゃるときは、基本的には路上生活の状態でいらっしゃいます。

『ビッグイシュー』がどんな事業かというと、路上生活で、全く何もない、お金もない、身分を証明できるものもない、保証する人もいないという、全く何もない状況のホームレスの方々にも、すぐにできる、とても敷居の低い仕事を作って、それで自分の力で稼ぎながら脱路上生活を目指してもらおうという形の事業です。

ビッグイシュー日本は出版社として登録されている有限会社で、路上で売るための雑誌を作っています。最終の目標はホームレス問題の解決とか、望まないのにホームレス状態になる方がいなくなる、『ビッグイシュー』を必要としなくなる社会を作るということなんですけど、出版社『ビッグイシュー』として一番大事なことは、質の高い雑誌を作ることを目標に2003年の創刊以来やっております。 ただ、単に仕事を作っても、ホームレスの人々の“自立”はなかなか難しいんだなということが分かってきたので、創刊してから4年後の2007年にNPO法人をつくり、一人ひとりが一つひとつ、壁を乗り越えていくためのサポートをしています。今は有限会社ビッグイシュー日本と、認定NPO法人ビッグイシュー基金の両輪でやっております。 それでは、人はどうしてホームレスになるのかというのと、どうしてホームレスから抜け出せないのかというところを、簡単にお話させていただきます。

構造的には、こんな感じかなと思ってます。

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いちばん左上の状態は、仕事もあり、家もある状態です。底のところが、野宿の状態。『ビッグイシュー』にいらっしゃる販売者の方はみんな底の状態になって、事務所にいらっしゃいます。なかなか今の日本の福祉の仕組みの中では、ある一定の人たちにとっては、使いづらいというか、路上生活になったときに、そこを抜け出そうとしたときに、すごく高い壁があるという状況があるかなと思います。

私も『ビッグイシュー』始める前は、ホームレス問題について何も知らなくて、全くゼロからこの問題に関わりました。私の出身地である大阪は、実はホームレスの方が一番多い街です。特に『ビッグイシュー』を立ち上げた2003年というのは、日本全体でもホームレス状態の人がものすごく増えた時期で、支援策がほぼなく、数がどんどん増えてる状況でした。そのときに、大阪はどういう状況だったかと言いますと、あらゆるところに路上生活者がいらっしゃる。

仕事終わって繁華街とかを歩いてると、シャッターがどんどん閉まっていきます。そうすると、シャッターが一つ閉まると、その前に段ボールハウス。また閉まると段ボールハウスという感じで、終電近くになると、ずらっと商店街の両側に段ボールハウスが並んでる。私が子どもの頃は、そんな光景なかったんです。だから、この人たち、どこからやってきたのかなと思いながら、ただ何もできずに、そこを通り過ぎてました。

そのときに、たまたまホームレス問題について学ぶ機会があって。日本でホームレスになる一番の理由は失業ということを知りました。

例えば海外だと、家庭不和とかで若いホームレスの人が多いとか、アメリカとかだと、兵役に就いてた元兵士の方が非常に多いなどのケースがあるんですけど、日本の場合、本当に労働と直結しています。経済が傾くと、ホームレスの人が増える。景気がいいと、ホームレスの人が減る。 特に日雇い労働です。景気が悪くなって、建築の現場が減って、仕事がなくなったら路上に人が増えるという、本当に構造的にしわ寄せが行くんです。そんな中、『ビッグイシュー』の仕組みに出会いまして、「失業が原因だったら仕事作ればええんちゃうん」と、立ち上げたというのが始まりでした。

ただ、「仕事を作ったらええんちゃうん」ってやってみたんですけど、もともと不安定雇用に就きやすい人たちって、いろんなマイナスの要素からスタートしている人が多いんです。支えてくれる家族がいなかったり、教育を受ける機会が少なかったり、障害をお持ちだったり。複合的なその要因を抱えたまま仕事を失って次の仕事にすぐにつながらないと、お金や家だけでなく人とのつながりや自尊心など、どんどんいろんなものを失って、最終的に何もなく頼れる人もおらず、気がつけば野宿ということが多い。そして、いったんここ(野宿状態)に来た状態で自力で元に戻ろうというと、ちょっと大変。お金や住む場所だけでなく、人とのつながりや社会への信頼も失って孤立しています。そこで、NPOを立ち上げて、いろんな他のNPOさんとか、市民の方とか、行政の人たちと一緒に、何も持たない人でも次に進めるような仕組みづくりや、そもそも貧困が原因で孤立したりそのことがスティグマになることがないような社会をつくる、という取り組みをしてます。

具体的なイメージとしては、この階段の左側、落ちてくるときは少しずつ少しずついろんなものを失うんですけど、1回ここ(底)に落ちると、壁がそびえたっている。ですので、自分の力でもう一度元に戻れるし、その過程で自信をつけ、つながりを取り戻していける、みたいな、小っちゃな階段がいっぱいできればいいんだろうなと思っていて。私たちの活動はその小っちゃな階段を増やす作業なんです。でも、今ホームレスの方減ったとはいえ、全国で5000-6000人いらっしゃる。ビッグイシューの販売者はそのうちの120人。本当わずかです。『ビッグイシュー』だけじゃなくて、私たち以外にこういう階段をいっぱい作ってくれる人たちが増えると、孤立せず、チャレンジしやすい社会になるんじゃないかなと思っています。

質疑応答

男性C:『ビッグイシュー』を1冊売って、その人に入るのっていくらぐらいなのかというのと、あとは、月に稼ぐ人ってどれぐらい稼ぐ?

佐野:販売者は雑誌を1冊350円で販売しています。170円で販売者が雑誌を仕入れるので、1冊売れると180円の収入が販売者のものになります。

ちなみに販売希望者は、「行動規範」に同意していただいて、販売者登録が済んだ方に、最初に10冊を無料で提供します。その10冊を売った売り上げを元に、次からは在庫を抱えないように自分で考えて仕入れてもらっています。

1日と15日の月2回発行で、東京の販売者でいうと、ひとり1号につき大体150から200冊ぐらいが平均の販売数です。1カ月で300から400冊というのが平均になります。

男性D:風俗嬢の方が30万人に対してホームレスの方が5000人。その数だと社会問題でもないように捉えられそうです。実際のホームレス状態の人は何人いると想定してらっしゃいますか。

佐野:実際に路上で生活している人たちが「ホームレス」と日本では呼ばれていますが、その後ろには、屋根あるけど家がない状態、例えばネットカフェとかドヤとかサウナとか施設、あとは友人・知人宅に住んでいる人もいます。また、親元でも引きこもってる人が、将来親が死んだ後どうなるか、ということもあります。

路上生活者(ホームレス)という人たちの後ろに、いつ貧困状態になってもおかしくないとか、すでに貧困状態であるとか、いつ家失ってもおかしくないみたいな人たちが、予備軍としていると思っているんです。

例えば若者の貧困というくくりで見れば、引きこもりの人は内閣府が発表しているだけで約70万人、親の会がまとめた推計では300万人いるともいわれています。若者無業者(ニート)が約76万人、フリーターが155万人だそうです。そのくらい、「ホームレス」に近い人たちがいると感じています。 詳しくはNPO法人ビッグイシュー基金のサイトにある『若者ホームレス白書』をご覧いただきたいです。

感覚的には私たちがビッグイシューを立ち上げた14年前に比べて、若い人の間で増えているのではないかと感じています。貧困層の不安定労働、もしくは不安定住居の状態の若者が増えてると感じます。最近シェアハウスがはやってますが、ポジティブにシェアハウス選んで住んでますという人は本当に一部ではないかと思うんです。多くの人はお金がなくて、1人で住宅を借りれないからシェアハウスに住んでる。しかも、同じ住宅に住んでる人とは、ほぼしゃべらない。実態を聞くと、昔の日雇い労働のおじさんたちがドヤで住んでた、うなぎの寝床のタコ部屋とあまり変わらないみたいなところだったりするんです。そういう状況の住まいってすごく増えてますし、貸しオフィスに住んでたとか、倉庫に住んでたとか、「自分の家」に住んでいない方が特に若い人の中に増えてるなと感じます。

小林(司会):ありがとうございました。

では、次に夜の世界の課題に興味がある人やホームレス問題に興味がある人が、直接「じゃあ、俺はそれを仕事にして起業するぜ」と言えないのは、どういう壁があるんだろう、どういうリスクがあってチャレンジできていないのかというのを、改めて皆さんで振り返っていただけたらと思います。

* * *

グループディスカッションでは、それぞれの参加者が、社会課題にチャレンジするときの「壁」や、ホームレス問題とのかかわり方などについて意見交換がされました。

質疑応答

女性E:『ビッグイシュー』の販売者は、近寄り難いと思うことがあるのですが最初10冊無料で配るときに、販売する上での、こうしたほうがいいよみたいなアドバイスとか、見た目のちょっとした、するみたいなというのとかを、行わないのですか?

佐野:初めて事務所にいらっしゃるとき、本当皆さんお腹もすかせてるし、今後どうなるか分からないし、『ビッグイシュー』だって自分を搾取する団体かもしれないし、不安でいっぱいで来てるので、取りあえずその日売るのが精いっぱいで、いろいろアドバイスするんですけど、最初は全然耳に入ってないなというのが最近分かってきました。関係ができてこないと、「臭いますね」とか、「お風呂に入ってください」とかは言いづらいので、その辺は様子を見ながら少しずつお伝えしてるんですけど。一番いいのは、お客さまが「そろそろ服替えたらどうですか」とか言ってくれるのが一番良くて。だからあなたのような美しい女性が来て「おじさん、もうちょっときれいにしてたらかっこいいのにな」とか言ってもらうと、翌日にはきれいになると思いますので、どうぞよろしくお願いします。(笑)

男性F:思ったのが、ホームレス予備軍の人たちって、すごい孤立してるというか、人とコミュニケーションを取らないから、知識も入らないし、将来的にはまずい方向に行くのかなと。そういう方々のケアというか、コミュニケーションを取らせるための方法というのは、何かあったりするんですか。

佐野:販売者には、コミュニケーションスキル高い人もいれば、スキル高いというか、本当に笑わせてもらえるおっちゃんとかいるし、一方で、来たとき顔面引きつってて、全く一言もしゃべれなくて、会話をできるようになるまで1年ぐらいかかる方とか、それぞれなので、一概には言えません。でも相談してもいいんだな、話が上手じゃなくてもいいんだな、って安心感を持ってもらえると自然と会話ができるようになるのだなと感じています。それから、何らかの障がいをお持ちの方もそれなりにいらっしゃるので、ご本人が全然気づいていなかったけど何となく仕事でいつものミスして怒られて辛かった、みたいなことがあると、関係ができてきたら、もしかしたらこういう傾向ないですか、みたいな感じで、障害手帳を取得できるようにしたりとか、その人によって対応をしています。

男性G:ホームレスの方がもっと稼ぎやすいようなビジネスモデルとか、もっといっぱい稼げますよみたいなことって、今後やられたりしないんですか。

佐野:今これが精いっぱいで、これ以上というと厳しいんですけど。いい案があればぜひ、やってください。(笑)

▼若者ホームレス白書

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ビッグイシュー基金で発行しています。PDF版は無料で公開しています。 http://www.bigissue.or.jp/activity/info_12041501.html






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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。