「ビッグイシュー日本版」は、北海道から熊本まで日本各地の路上で販売していますが、ビッグイシュー日本版を出版する「ビッグイシュー日本」の事務所は、大阪本社と東京事務所のみです。どのように日本全国の販売者を支えているのか、ご存知ですか?

「ビッグイシュー日本版」は、350円の雑誌をホームレス状態の販売者が1冊170円で仕入れ、1冊売れると180円が本人の収入になる仕組みです。
売れると思う数を販売者が自分の手持ちのお金のなかで考えて仕入れ、売り切れたところで「仕入れ」のために事務所に戻ります。

東京・大阪から遠く離れた土地でも、販売者が仕入れが可能な理由は、ビッグイシュー日本を支える「全国のサポーター」にあります。
「ホームレス状態の人の自立支援をしたい」というビッグイシューの理念に共感してくれた全国のサポーター団体が、ボランティア活動としてビッグイシュー日本から雑誌を預かり、それぞれの土地の販売者に、都度の仕入れやその他サポートをしてくださっているのです。

「ビッグイシューさっぽろ」もそんなサポーター団体のひとつ。
9月3日に10周年を迎えた「ビッグイシューさっぽろ」にお邪魔して、10年の軌跡をお伺いしました。

2007年9月3日、札幌でビッグイシューの販売が始まる

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今から10年前の2007年9月、「北海道の労働と福祉を考える会」を母体に、中島 岳志氏(当時北海道大学公共政策大学院 准教授)の声かけでビッグイシューは札幌での販売を開始しました。

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ビッグイシューの札幌での販売開始は当時の新聞でも紹介されました。

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また当時はNPO法人さっぽろ自由学校「遊」さんの一角をお借りして、活動拠点としていました。この写真はその頃の写真です。
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活動拠点では、当時も今も火・木・土の週3回の午前中、販売者が仕入れたい号を卸すという業務を、ボランティアが持ち回りで10年間行っています。

旗振り役、冬の厳しさを忘れていた!?

しかしなんということでしょう!2007年秋に札幌での販売を開始したものの「当時の代表は冬の厳しさを失念していた」と、現在の事務局長、平田なぎささんは笑いながら語ります。冬以外の路上販売は、他の地域より過ごしやすいのですが、北海道という寒さの厳しい土地で、冬季に路上で販売などとてもできません。

そこで、当時の担当者は市役所とかけあい、その年から2009年までの3年間、冬季期間に限り、地下鉄大通駅の地下通路に販売ブースが設けられ、販売者は交代でブースに立ってビッグイシューの販売を行ないました。
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冬季は通行人も寒い路上を避けて地下通路を利用するので人通りも多く、またブースは路上販売よりもバックナンバーを多く並べられるため、売上も好調だったと言います。
当日は6~7人の販売者がおり、持ち回りで地下通路のブースを担当していました。

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この取組も新聞で紹介されました。

2008年3月22日からは、「北海道の労働と福祉を考える会」からビッグイシュー関連業務は「ビッグイシューさっぽろ」という組織として独立します。この少し前にボランティアとして参加し始め、後に事務局長となる平田なぎささんはこのとき「ビッグイシューさっぽろ」の事務局のメンバーとなりました。

平田さんはそれまで「市民活動に参加したこともない、ただの、フツーの主婦だった」といいます。(フツーの主婦だったはずの平田さんがなぜ、事務局長になったかなどをインタビューした記事は後日公開予定です)

このころ、地下通路でしっかり売り上げていたはずの販売者たちが、アパートに入る資金的余裕がないことなどが問題となり「仕事を提供するだけではなく、生活や、様々なつながりの支援も必要」と感じた平田さんたちは、販売者の貯金支援など、サポートの幅を広げていきます。
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2010年にはビッグイシューの札幌販売3周年を記念して、ビッグイシュー日本の代表佐野の講演会とシンポジウムを行ないました。

そして、2011年には札幌の皆さまにはおなじみの地下歩行空間案内ブースが通年でオープンしました。このとき尽力してくださったのが札幌駅前まちづくり株式会社の代表取締役社長の白鳥さん。ブース下部に車輪をつけて可動式にするなどして、市の担当に「共有スペースを占有しているのではなく、いつでも移動できる移動式なんですよ」などとユーモアのある説得をすることで関係者の了解を勝ち得たと言います。

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当時も今も、きちんとしたブースを構えることで、通行人は販売者にまったく気兼ねなく道を聞いたり、雑誌の表紙を眺めたりしています。
いまも繁忙期は、日本人・外国人問わず、日に80件近くの道案内をしているとのこと。

2011年6月には、ビッグイシューさっぽろの活動の旗振り役だった中島岳志さんがゲスト編集長のビッグイシュー日本版168号が発刊されました。
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https://www.bigissue.jp/backnumber/168/


またその年にはビッグイシューさっぽろ5周年記念イベント「ともに生きるまちづくり」を開催。
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ホームレス経験者が参加する肉体表現グループ「ソケリッサ」の招いての公演や、ビッグイシュー日本代表佐野による販売者へのインタビュー、シンポジウムなどを行ないました。

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この5周年記念イベントも新聞で紹介されていました。
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2013年2月には、『ビッグイシュー日本版』の誌面で販売者と「世界一あたたかい人生相談」を連載してくださっている料理研究家枝元なほみさんを招いて映画「幸せの経済学」上映会を行ない、多くの方にご来場いただきました。

幸せの経済学 予告編 

※こちらの映画は市民による自主上映が可能です。
http://shiawaseno.net/

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2014年には「おじゃましますカフェ」と題して、再度、枝元なほみさんをお招きして、枝元さんの手料理をみんなで美味しくいただきました。

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そして今年2017年4月にはビッグイシュー10周年記念イベント第1弾として、ケアプロ株式会社の川添高志さんをお招きしビッグイシュー日本の代表佐野との、「シビックエコノミーの可能性」と題したシンポジウムを行ないました。

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今までご紹介してきたのはビッグイシューさっぽろの活動のほんの一部分に過ぎません。普段は週3回の雑誌卸に代表される地道な活動ですが、どれもなくてはならない大事な活動です。

雑誌卸

雑誌卸は活動拠点である市民活動プラザ星園で、販売者が仕入れたい号を少しずつ在庫から卸していくビッグイシューさっぽろの最も重要な業務の一つです。
火・木・土の9時半~11時まで、ボランティアが持ち回りで卸作業をしています。
販売者に1冊170円でビッグイシューを卸します。ただ雑誌を卸すだけではなく、販売者とコミュニケーションを取り、変化をキャッチする重要な業務です。

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出張販売サポート

各地への出張販売のサポートもしています。また毎年、札幌の藤女子大学での大学祭では、ビッグイシューを置かせていただき、広報活動を行なっております。
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現在活動拠点のある市民活動プラザ星園での年1回のお祭りでは見本誌を配布しています。(今年は「星園カフェの特別な日」を9月24日に開催しました!)

その他、販売者の生活・就労サポート、SNS等での広報活動、イベント参加、読者レター発行、Webページの管理、北海道地区限定通信販売など、様々な「ビッグイシューさっぽろ」オリジナルの活動に、主婦、会社経営者、サラリーマン、アクティブシニア、学生などがそれぞれのできる範囲で、持ち味やスキルを活かしながら活動を続けています。

サポートしている販売者は、最盛期より減って現在は3名。
3名のサポートに、20人近いボランティアが少しずつ、自分のできる範囲で無理なく参加をしています。

多くの人でサポートしたほうが、一人あたりの負担はほんの少しで回るのです。
ビッグイシューさっぽろが、ビッグイシュー日本から仕入れる雑誌の数は1号あたり約500冊。これらが全部売れることで、3人の販売者の手元に計90,000円が渡ります(バックナンバーや追加の仕入れもあるのでそれ以外の収入もあります)。

決して多い金額ではないですが、地域のホームレス状態の方にコンスタントに収入を提供し、地域の一員として迎える活動です。あなたもサポートに参加してみませんか?

ご興味のある方は下記の「全国のサポーター」からお住まいの地域のサポーター組織を探してご参加いただくか、サポーター団体の立ち上げをご検討ください。
https://bigissue.jp/sell/supporter/

★ビッグイシューさっぽろは活動を少しずつ支えてくれるボランティア、寄付を募集しています★

くわしくはこちら https://www.bigissue.jp/sell/supporter/






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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。