福島第一原発の事故被災地は、依然として除染とインフラ整備という大手ゼネコンを中心とした画一的な復興事業が進んでいる。その中で、除染ごみをめぐり、焼却処分や、全国の公共事業での再利用、焼却処分に伴う健康や環境への影響などの問題を問う声が起きている。
8000ベクレル以下の廃棄物
公共工事に再利用
何重にも利益を得る原発関連業者
今年2月、東京都内で開かれた「除染廃棄物の焼却と再利用の問題を考えるシンポジウム」では、地元・福島県の住民が出席して現状を報告、問題提起した。
「除染や焼却処分は、避難者を帰還させるため、環境省が莫大な予算を投入して始めた。除染ありきの復興政策だが、事業を始める前にまず除染事業の是非が問われないといけなかった。膨大な廃棄物の処理を、これまでのごみ処理の延長線で行っていいのか」と、“惨事復興型事業”としての除染と焼却事業に疑問を呈したのは、福島県塙町在住で、「放射能ゴミ焼却を考えるふくしま連絡会」の和田央子さん。自宅から2キロの鮫川村に環境省の指定廃棄物焼却の実証実験施設が建設されたことをきっかけに、この問題に取り組み始めた。
相馬市・新地町、広野町、富岡町、飯舘村など福島県各地に、8千億円を超える多額の予算を投じて除染廃棄物の仮設焼却場が建設され、すでに解体された施設もある。和田さんはその様子を写真入りのスライドで説明。
8000ベクレルまでの廃棄物は再利用できるが、8000ベクレルから10万ベクレルのものは管理型処分場へ。福島県では10万ベクレルを超える焼却灰は、1兆6千億円(試算)をかけて建設中の県内の「中間貯蔵施設」に運ばれる。ここでは、その高汚染の焼却灰と除染土壌を混ぜて、1300度という高温の熱処理をしてセメントを作り、再利用を進める予定であることも報告された。「これらの業者は原発関連業者が多く、もともと原発で儲けて、原発事故処理で儲けて、さらに復興事業で儲けるという、何重にも儲ける仕組みになっている」と惨事便乗型資本主義(ショックドクトリン)とでもいう利益収奪の仕組みの廃棄物対策を批判した。
8000ベクレルまでの廃棄物は再利用できるが、8000ベクレルから10万ベクレルのものは管理型処分場へ。福島県では10万ベクレルを超える焼却灰は、1兆6千億円(試算)をかけて建設中の県内の「中間貯蔵施設」に運ばれる。ここでは、その高汚染の焼却灰と除染土壌を混ぜて、1300度という高温の熱処理をしてセメントを作り、再利用を進める予定であることも報告された。「これらの業者は原発関連業者が多く、もともと原発で儲けて、原発事故処理で儲けて、さらに復興事業で儲けるという、何重にも儲ける仕組みになっている」と惨事便乗型資本主義(ショックドクトリン)とでもいう利益収奪の仕組みの廃棄物対策を批判した。
微細粒子+放射能、二重の危険
除染ごみの再利用へ反対の運動
除染ごみを燃やす焼却施設には「放射性物質を99・9%集めるバグフィルターがついているから大丈夫」と国・環境省などは住民に説明しているが、その説明を否定したのは、シンポジウムを主催したNPO法人「市民放射能監視センターちくりん舎」の青木一政さん。
「JIS(日本工業規格)による集じん装置の性能保証では『JIS 10種フライアッシュ』を使っているが、2・5ミクロン以下をあまり含まない粒子でチェックしているため、漏れが少なく出るのは当然」と、バグフィルターは細かい粒子を漏らしている点を指摘。「2・5ミクロン以下は肺の奥まで沈着し、人体への影響が大きい。放射能を含んだ細かい粒子も事情は同じ。それに加えて、水に溶けやすいセシウムなら、肺の奥の粒子が血液に入り、身体中に回る。水に溶けにくい物質は肺に留まる。微粒子+放射能という二重のリスクが生じる」
放射性物質に汚染された木材を使ったバイオマス発電の問題点について、福島県塙町の金澤光倫さん(塙町木質バイオマス発電問題連絡会)、新潟県三条市の鶴巻俊樹さん(みどりの里の環境を守る会)が現地報告。ほとんど除染されていない森林での木質バイオマス発電で放射能の広範な拡散が進む問題や、間伐材の取り合いなどで、住民の不安や反対運動が起きている現状が明らかになった。
パネリストからは、住民への説明が十分でなく、国や地元自治体が「福島の復興」を打ち出したなかで一方的に進められている現状が語られた。
東電が福島第一原発で作ったエネルギーを大量消費する首都圏と、東北電力の電気を使い、原発の事故被害を引き受ける福島県民の感情がクロスし、会場の市民から多数の質問や意見が出され、出席者の関心の高さが覗えた。
(文と写真 藍原寛子)
あいはら・ひろこ 福島県福島市生まれ。ジャーナリスト。被災地の現状の取材を中心に、国内外のニュース報道・取材・リサーチ・翻訳・編集などを行う。 ブログhttp://ameblo.jp/mydearsupermoon/ |
*2018年4月15日発売の333号より「被災地から」を転載しました。
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