ウガンダ出身のデザイナー、ジョシュア・ムグメ・ムプウガ(25)は初めてドイツを訪れた時、路上生活者がたくさんいることにとても驚いた。ウガンダのみならずドイツもがホームレス問題に直面していることを知った彼は、「希望」のメッセージを込めたイラスト作品を描いた。
ジョシュア・ムグメ・ムプウガは、ホームレス問題を二つの視点から目にしてきた。
彼が生まれ育った町、東アフリカ・ウガンダの首都カンパラの路上でホームレスの人々を見かけることは決して珍しくなかったが、ドイツのような豊かな国にまでホームレスの人々がいるとは思いもしなかったと言う。
彼の恋人はドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州在住だ。二人は、彼女がウガンダでボランティア活動をしていた2014年に出会った。その後、彼女の国を何度か訪ねる機会があり、ドイツの路上生活者の実態に触れたのだ。そして、両国で起きているホームレス問題からインスピレーションを受け、路上で眠る男が夢を見ているイラスト作品を描いた。
写真:ジョシュア・ムグメ・ムプウガと恋人のシナ(ノルトライン=ヴェストファーレン州にて)
恋人の存在に加え、彼にはもう一つドイツとのつながりがある。それはイラストの中で引用した言葉の主、ハンス・クルッパとの関係だ。詩人・作家であるクルッパは5年間アフリカで暮らしたことがあり、その時に知り合った。
ウガンダで増える子連れ女性の路上生活者
今、彼の故郷ウガンダの街には、かつてないほどホームレスの人々が増えており、その多くは子どもを連れた女性たちなのだそうだ。ウガンダの首都には多くの人が地方から出稼ぎにやって来ますが、仕事を見つけられない人も多く、そうなると路上で暮らし、物乞いするほかないのです。多くの人が店先やトラックの下で寝ています。
路上生活者に対して、街の人は無関心か差別扱いだ。ドイツでも同じような路上生活者をたくさん目にした彼は言う。
彼らは生き延びるために物乞いせざるを得ないのであって、他に選択肢があれば、決してそんなことはしないはず。アフリカでもヨーロッパでも、ホームレスの人々が必要とするサポートが十分に提供されていないのです。
デザインに込めたメッセージ
デザイナー志望で「デザインが僕にとってベストな表現方法」と断言する彼が、こうした経験をきっかけとしてホームレス問題に対する明確な考えを持つに至った。できるだけ路上生活者の立場になって考えるようにしたと言う。どれだけ想像したところで、ホームレス状態を経験したことがない自分が完全に理解することはできないだろうと認めつつも、
ホームレスの人はそうでない人のことをどう思っているのだろう?
日々どんな気持ちで過ごしているのだろう?
彼らが欲しているものとは?
自らに問いかけた。
もし僕が路上で眠るハメになったら、きっと家具が揃ったすてきな家にいる自分を夢見るんじゃないかと思いました。
イラスト:ジョシュア・ムグメ・ムプウガ
イラスト作品を通してホームレスの人たちに希望を持ってほしい、というのが彼の強い思いだ。
人生には希望が必要です。希望は前を向く力になります。希望があればこそ、現状を良くしていこうと努力できます。
ホームレスの人だって夢を抱いている
ホームレスの人たちだって、ずっと今の状態だったわけではない。かつては屋根のある家で暮らしていたし、少なくともそんな生活を夢見ている、ということを多くの人に知ってもらいたい、と彼は言う。多くの人がその意識を持ってくれたら、路上生活者に救いの手を差し伸べる人が増え、彼らを社会から排除しようとはしないでしょう。ホームレスの人たちに「あなたは今でも社会の一員」と伝えることがベストな支援方法だと考えている。
ホームレスの人に歩み寄り、彼らを支え、話し掛けましょう。人として大切な存在であり、社会から閉め出されたわけじゃないんだよと態度で示すことが重要です。イラストに引用したハンス・クルッパの言葉は「力強く、心を揺さぶる」もので、彼がイラストを通じて伝えたかった「希望」のメッセージそのものだと言う。
現実は夢を妨げてはならない。あなたが人生で成し遂げたいと思うこと、それはすべて夢見ることから始まり、現実に壊されることはない。
Translated from German by Niamh Walsh
Courtesy of Hempels /INSP.ngo
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