「生きづらさ」のある人が増えてきている。増えてきて、というより、SNSで発信するユーザーやメディアで取り上げられる機会の増加などで、可視化が進んできているのかもしれない。

「生きづらさ」には、「発達の特性や障害があり、周囲の人の理解が得られにくい」「周囲の大多数の人と異なる生き方をしていて、居場所がない」「家族関係に問題があり、息苦しい」「経済的に困窮していて、物理的に苦しい」「なんとはなしに生きづらい」など多様なケースがある。
大小様々な生きづらさを持つ人たちに向け、6月15日発売の『ビッグイシュー日本版』では「生きやすくなる方法」を特集。


“世間”と“社会”の違いを意識する

作家・演出家である鴻上尚史さんは、息苦しさを和らげる方法のひとつとして“世間”と“社会”の違いを知るとよいとアドバイスする。

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そもそも“世間”と“社会”の違いとは何だろうか。似ているようにも思えるが、違いはある。
「世間」という言葉は「世間の目を気にする」「世間に申し訳が立たない」「世間知らず」など、ネガティブなことを回避しようとするシーンで使われることが多い。
それに対し、「社会の目を気にする」「社会に申し訳が立たない」「社会知らず」という言い回しはあまり聞かない。
また、「社会の中に居場所を見つける」「社会貢献」という表現はされるが、「世間の中に居場所を見つける」「世間貢献」とは言わない。
このことから違いを考えると、「世間」は現在自分の知っている人や関係のある人、および関係が作られていく人たちで構成されるもので、「社会」は自分に関係がない・きわめて薄い人たちなのかもしれない。世間と比べると距離の遠い人たちで構成されるもの、というのが鴻上さんの定義だ。

鴻上さんは、生きづらさは「世間」のなかで生まれるものであり、「社会」で起こることと分けて考えると軽減するという話や、「生きていくのが楽になる方法」についての話を本誌内インタビューで披露してくれた。

アイデンティティの分散配置を

「アイデンティティの分散配置を」と提言するのは精神科医の熊代亨さん。

アイデンティティとは自分をイメージする際に必要となる構成要素。
たとえば「企業戦士として定年まで勤めあげた」という人は、会社で培ってきた成功体験や人間関係をもとにアイデンティティが形作られることが多く、定年退職後に会社以外の場所でアイデンティティが揺らぎ、精神が揺らぐかもしれない。
アイデンティティは周囲の人たちからのフィードバックにより構成されていくもののため、アイデンティティや精神の揺らぎを防ぐには、アイデンティティの一点集中を防ぐとよいというのが熊代さんの主張だ。

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また、職場でも趣味でもよいので、異世代とコミュニケーションすることもアイデンティティの分散配置によいとして熊代さんは推奨。異世代とコミュニケーションする際のコツも本誌内で紹介してくれている。

“「年上であること」をプレッシャーに感じないで”

毎月連載の「ホームレス人生相談」には「職場で若い人に教えてあげられることがありません」という50代女性からの相談に肥後橋の販売者が、「生きやすくなる心構え」をあたたかく回答している。


『ビッグイシュー日本版』361号ではこのほかにも、
・リレーインタビュー。私の分岐点:ラジオDJ・レモンさん(山本シュウ) 
・スペシャルインタビュー:ラミ・マレック
・国際:若者の貧困と高齢者の孤立を同時に解決する、オーストラリアの「異世代ホームシェア」
・映画レビュー:『SEED 生命の糧』

など盛りだくさんです。

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361号特集に登場のインタビュイー


こうかみ・しょうじ
作家・演出家。1958 年、愛媛県生まれ。1981 年に劇団「第三舞台」を結成。現在は、プロデュースユニット「KOKAMI@network」と、「虚構の劇団」を中心に活動。著書に『「空気」と「世間」』『不死身の特攻兵――軍神はなぜ上官に反抗したか』(講談社現代新書)、『リラックスのレッスン――緊張しない・あがらないために』(大和書房)、『「空気」を読んでも従わない――生き苦しさからラクになる』(岩波ジュニア新書)など多数。

くましろ・とおる
1975 年生まれ。信州大学医学部卒業。精神科医。専攻は思春期/ 青年期の精神医学、特に適応障害領域。ブログ『シロクマの屑籠』にて現代人の社会適応やサブカルチャーについて発信し続けている。著書に『ロスジェネ心理学』(花伝社)、『「若作りうつ」社会』(講談社現代新書)、『「若者」をやめて、「大人」を始める』(イースト・プレス)などがある。






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ビッグイシューについて

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