ペットボトルが自然分解するには450年以上かかると言われている*。それを逆手にとって、ペットボトルが安価で丈夫な建築資材「エコれんが」として使われ始めているのをご存じだろうか。首都だけで年間35万トン以上の固形廃棄物が発生しているウガンダで、環境負荷軽減だけでなく、住宅難を緩和するツールとしても注目されているとInter Press Service が報じている。

 *1 参照:The Decomposition of Waste in Landfills

ウガンダの首都カンパラから約40キロ離れたムピジ県の丘に、ペットボトルでできた壁とタイヤの屋根の家々が建ち並ぶ村がある。現地の社会事業団体「ソーシャルイノベーションアカデミー (SINA)*2」では、プラスチックごみ問題をリサイクルではなく“アップサイクル”の手法で解決しようと「ペットボトル製エコれんが」の利用を推進しており、この村はその取り組みの一環だ。

「リサイクル(再利用)」とはゴミの廃棄量を減らす、もしくは今あるモノを一度壊して何か新しいものをつくることをいう。対する「アップサイクル」は、廃棄物を使って付加価値のある新しいモノを作り出すことをいう。今、この「ペットボトル製エコれんが」の取り組みが、ウガンダ国内のリゾート施設、難民キャンプやスラム街でも展開され始めている。

*2 https://socialinnovationacademy.org

ペットボトルがアップサイクルされる様子がわかる動画


ウガンダを悩ますプラスチックごみ問題

他のアフリカ諸国と同じく、ウガンダも飲料業界から出るプラスチックごみ問題が深刻だ。ソフトドリンクのペットボトルは埋立地行きとなるか、道端に捨てられ排水溝を詰まらせている。プラごみの大半がビクトリア湖岸や沼地・湿地帯に浮かび、または屋外で燃やされているのが現状だ。

首都カンパラだけで年間35万トン以上の固形廃棄物が発生しており、回収されるのはその半分のみ。しかしプラスチックの消費は日に日に増える一方だ。

エコれんがの推進者デビッド・マンデは建築家で、SINAでトレーナーを務めている。彼の弟はかつて沼地を渡ろうとして溺れてしまった。数時間の捜索の末、ペットボトルの堆積物の下から遺体が見つかったという悲しい過去があり、プラごみは彼に大きな意味をもつ存在なのだ。

「ペットボトルを有効利用したいんです。ネパールやナイジェリアの農村地域でペットボトルを家の建材として使っていると知り、同じことに挑戦してみたんです」そして彼は、ペットボトルのリサイクルではなくアップサイクルに精力的に取り組むようになった。

ペットボトルの中に湿った土を詰めて強度を出す。キャップをしっかり締めると、湿った砂と土がくっついてれんが状になるので壁として十分使えるという。「最終的には地球環境を守りたいんです」とマンデ。「ペットボトルとタイヤを集めてエコれんがとタイルに変えて、美しい家を建てるんです。ほら、あそこに見えるでしょう」

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「ペットボトル製エコれんが」の壁を見せてくれるデビッド・マンデ。ボトルに湿った土を詰め込み、キャップをきつく締めると、湿った砂と土がくっついてれんが状になり、強度のある壁として使えると説明する。 Credit: Wambi Michael/IPS 

マンデの見積りでは、117軒の家屋を建てるのにすでに300万本のペットボトルを使っている。ただ、この国の住宅難を解決するにはもうしばらくかかりそうだ。ウガンダ統計局によると、現在、210万戸の住宅が不足しており、さらに毎年20万戸が足りなくなっている。2030年までに住宅不足は500万戸を超えるとも予測されている。

エコれんがで建てた家で店を営むエディソン・ヌワマンヤは、「ムピジ県に来るまでこんな家は見たことがなかった」と言う。「見た目も良いし、屋内は暑くならず快適。自然の涼しさを味わえています」

“ゴミは捨てられて初めてゴミになる” ー スラム地区の若者たちの取り組み

カンパラにあるスラム街カモキアーー この辺りでは泥と編み枝でつくられた家屋が一般的だが、それに代わるものとして、非営利組織「ゲットー・リサーチ・ラボ*3」の若者らがペットボトルごみを集めてエコれんがとして活用し始めている。山のように積み上げられたペットボトルは、はるか遠くからも見える。

メンバーの一人レヘマ・ナルエケンゲは、金属棒を使ってペットボトルに土とポリ袋を詰めていく。「こうして硬くなるまで詰めていきます。柔らかいとれんがとして使えませんから。エコれんがでつくった家は耐久性にも優れていて、まだ壊れたという話を聞いたことがありません。“ゴミは捨てられて初めてゴミになる” がゲットー・リサーチの信条なのです」

*3 参照:https://borgenproject.org/ghetto-research-lab-of-uganda



中国やインドにおけるプラごみ輸入ニーズの低下

ウガンダ都市部では、大量のプラスチックごみが山積みになっている光景が珍しくない。女性や子どもたちがリサイクル目的で集めたもので、これをプラスチック片に加工し、中国とインドに輸出している。そしてインドや中国の製造業者が布や絨毯に使うポリエステル繊維を作る、またはペットボトルを再生産している。

だが、その市場も以前ほどの活気はない。チップ片を中国に輸出していた中間業者は「中国への輸出停止はウガンダのリサイクル産業に大きな打撃となりました」と言う。「従来の顧客からの需要はなくなりました。パンデミックの影響ではありません。その前から中国の需要は低下していましたし、2019年10月半ばからはインドからの需要も減りました」

エコ建材への意識向上と政府支援を

ウガンダの中心に位置するムコノ県でも、高校教師のアラン・オボーによる「アップサイクル」プロジェクトが始まっている。オボーは「ボトルガーデン・リゾート」のオーナーで、ここの外壁と各コテージをペットボトルで建てたのだ。

「プラスチックは環境に極めて有害ですからね。湖を見てください、ペットボトルで埋め尽くされています。自然分解するには何百年もかかるそうです」とオボーは言う。「建材として使えば、ペットボトルに新たな役割を与えられ、環境保護にもなります。れんがや木材伐採など既存の建材は環境にダメージを与えうるものですが、ペットボトルを使えばゴミを回収できます」

このリゾート施設のために、数えきれないほどのペットボトルを回収した。「コテージ一軒に使ったペットボトルを数えたら1万2千本でした。施設内すべてを合わせると100万本以上でしょう。ここで使われていなければ、環境を汚していたものたちです」

オボーはペットボトル製エコれんがは建材の代替品になりうると確信しているが、都市部の技術者らは、廃棄ペットボトルを使って家を建てるという開発業者の計画を認可せず、がっかりさせられたという。リサイクルによる回収量はアップサイクルには到底及ばない、というのがオボーの考えだ。

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ウガンダ東部のムバレ市では、女性たちがプラスチックごみを回収してリサイクルにまわしている。アップサイクル派は、ごみをリサイクルしても結局は環境にダメージを与えているとみている。Credit: Wambi Michael/IPS 

「再利用可能なプラスチックにリサイクルするにしても、その過程で二酸化炭素が排出されます。エコれんがだと環境を汚すものは一切出ません」

ドリーム・アーキテクト社(カンパラ拠点)の建築家パトリシア・カヨンゴは、ウガンダ政府および民間部門の建築プロジェクトを数多く指揮してきた。エコれんがはまだ国の基準局で認可されていないが、他の建材と合わせれば、持続可能な解決策になりうると考えている。「エコれんがの研究はまだあまりされていません。もっと安価に家を建てられる選択肢になると考えています」

By Wambi Michael
Courtesy of Inter Press Service / INSP.ngo
サムネイル写真:Image by Karl Allen Lugmayer from Pixabay 

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