プラスチックごみが環境にもたらす深刻な影響から、使い捨てのプラスチック製品をなるべく避けたいと感じている人も増えているだろう。 しかしプラスチック以外の容器は本当にプラスチックより良いものなのだろうか?この点を明らかにしたく、英国サウサンプトン大学環境科学のイアン・ウィリアムズ教授らは5種類の加圧型の飲料容器を比較し、製造、使用、廃棄のサイクルにおける環境負担をさまざまな基準でテストした*1。地球環境へのインパクトが大きいものから順に紹介しよう。


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AndriiKoval/Shutterstock

*1 参照:LIFE CYCLE ASSESSMENT OF BEVERAGE PACKAGING

ワースト1位:ガラス瓶

ワースト1位はガラス瓶だった。プラスチックを避けるとなると感覚的にガラス瓶に手を伸ばしたくなるかもしれないが、ガラス瓶の製造には多くの資源とエネルギーが必要で、原料となるケイ砂やドロマイトなどの採掘は汚染物質を出し、吸い込むと珪肺症(けいはいしょう)*2 の原因となる。また原料を溶かすには高温環境が必要で、大量の化石燃料を使った処理を行う。製造中にガラス自体が二酸化炭素を排出する。

またガラスの製造には大量の電力も必要なため、二酸化硫黄の排出が多く、酸性雨の主原因とされている。ソーダ灰などの原材料を抽出する過程でも多くのリン酸塩が空気中に放出され、河川や沿岸海域に過剰な負荷をかけ、水中の酸素を枯渇させている。

分析の結果、大量の原料を必要とするガラス瓶が天然資源を最も多く使用することが明らかとなった。 容器の質量も、1リットルのガラス瓶で800 gあるが、同じ容量のペットボトルだと約40gだ。 その重さの分だけ、輸送時にも多くの化石燃料を消費する。こうした理由から、ガラス瓶の地球温暖化への影響度は、ワースト5位のアルミ缶より約95%大きいことが分かった。

*2 結晶シリカ(ケイ酸)粉塵を吸入することで生じる職業性肺疾患の一種。

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重量があるものほど温室効果ガスの排出量は増える
Makushin Alexey/Shutterstock

ワースト2位:リサイクルガラス瓶

普通のガラス瓶がワースト1位でも、100%リサイクルのガラス瓶ならもう少しマシなのでは? 残念ながら、そうではなかった。

原材料の採掘、加工、輸送にかかるエネルギーを節約できるが、ガラスをリサイクルするには高熱で溶かす必要があるため、相当のエネルギーが必要となる。エネルギー使用量が増えれば温室効果ガスの排出量も増え、リサイクルの過程で再び二酸化炭素を放出するおそれもある。

英国でのガラスのリサイクル率は2017年度で67.6%だ*3。これを100%まで上げていきたい。

*3 日本のリサイクル率も67.6%(2019年度)参照:びんtoびん率・リサイクル率の推移(ガラスびん3R促進協議会)

ワースト3位:ペットボトル

3位はペットボトルだった。プラスチックは飲料容器として理想的な材質だ。 丈夫で、化学物質への耐性があり(飲料成分によって劣化しない)、軽量。大量のペットボトルを環境負担は少なめで輸送できる。 その点では、地球温暖化への影響はガラス瓶より大幅に低い。しかし、プラごみの悪影響は世界各地で実証されているとおり。ガラスやアルミニウムだと、プラスチックのように有害な微粒子に分解されることはない。

ペットボトルのリサイクルに関しては、原料を溶かすのにそれほど高温である必要はないため、エネルギー量は比較的少なくて済む。 しかし、ガラスやアルミニウムと異なり、何度もリサイクルすることができない。これは、リサイクルする度にプラスチックを構成する分子の鎖が短くなるため。すべてのプラスチックはいつかはリサイクルできなくなるため、埋め立て地行きとなるか、焼却されるか、または自然環境の中に放置される運命にある。

ワースト4位:アルミ缶

4位はアルミ缶だ。 ガラスやプラスチックよりも地球温暖化への影響が少ないのは、製造時に消費するエネルギーや資源が少ないため。 ガラスよりも軽量、プラスチックと同じで化石燃料を使っていない。

製造プロセスでも環境への負担は低め。とはいえ、アルミを作るにはボーキサイトの精錬が必要だが、ボーキサイトの採掘は水を汚染する可能性があり、供給元となっているオーストラリア、マレーシア、インドなどが被害を受けている。重金属で汚染された河川や堆積物は、鉱山周辺に暮らす人々や野生動物の健康を脅かしている。

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ボーキサイトは熱帯・亜熱帯地域の国々の表土から採取されている
Alexey Rezvykh/Shutterstock

ワースト5位:リサイクルアルミ缶

最も環境インパクトが少なかったのはリサイクルアルミ缶だった。 アルミニウムはその特性を変えずに何度でもリサイクルできる。 リサイクルだと新しい原料の採掘・輸送の必要がないため、新しくアルミ缶を作るより95%のエネルギーを節約できる。

しかし、英国のアルミ容器のリサイクル率はわずか52%だ*4。 この割合を大幅にアップさせ、リサイクルアルミ缶を主流としていくべきだろう。

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photo:ジルバーナー/photo-ac

*4 日本のリサイクル率は2019年度97.9%。参照:リサイクル率(アルミ缶リサイクル協会)

こうして比較すれば優劣はつけられるが、いずれも地球環境への負担があることには変わりない。一番良いのは、使い捨てタイプの容器を段階的に廃止していく、容器の再利用を積極的に推進していくことだ。

英国では、マイボトルでセルフサービスで飲み物を購入できるシステム*5 の導入や、リサイクルを奨励するデポジット返却システム*6が広がりつつある。ボトルの再利用もできるだけ心がけていきたい。使い捨てタイプを減らし、ごみを減らし、環境への負担を抑えていきたいものだ。

*5 英国では近年、牛乳もボトルタイプのニーズが復活傾向にある。洗浄して店舗に持ち込み、中身を補充できるサービスが環境意識の高い人たちに好評。Plastic waste: Shop launches refillable milk scheme
*6 Most people back drinks bottles deposit scheme, survey finds


著者
Ian Williams
Professor of Applied Environmental Science, University of Southampton

Alice Brock
PhD Candidate in Environmental Science, University of Southampton

※ 本記事は『The Conversation』掲載記事(2020年11月18日)を著者の承諾のもとに翻訳・転載しています。

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