2021年12月末、米コロラド州ボルダー郡マーシャルで発生した山林火災「マーシャル火災」。死者・行方不明者は出なかったものの、1000件を超える家屋が消失し、5億ドル(およそ570億円)相当の被害をもたらした。「地域社会の復興」という困難なタスクが突きつけられている中、被災者たちに100枚以上のキルトを届けた地元団体をデンバーのストリートペーパー『ボイス』が取材した。

キルトはその多彩な色や柄を楽しむために、ベッドカバーや壁にかけてインテリアとする使い方がよく知られているが、ブランケットとしても使える。中綿を詰めた3層構造で、毛布より重く、しっかり暖を取れるのだ。

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寄付されたキルトを梱包し、マーシャル火災の被災者に届けている。CREDIT: ADRIAN MICHAEL

「火災の規模が大きすぎてショックでしたが、すぐにどんな支援ができるかと考えました」と話すのはアラパホ郡キルト協会(Arapahoe County Quilters: ACQ)の代表ジェン・ディエツ。「悲惨な出来事が起きたときこそ、コミュニティの強い力を発揮するときですからね」

キルト愛好家たちの集いの場として1987年に創設されたACQは、キルト製作を通じて、地域内でさまざまな慈善活動を行ってきた。困っている人たちを助けたい、常にその機会を探している彼らにとって、マーシャル火災はまさに“アクション”のときだった。どんなかたちの支援ができるだろうと意見を求めてきたメンバーたちに対し、ディエツは「キルトづくりの才能を活かしましょう」と伝えた。

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手芸店トゥリーロッタでキルトを製作する人。CREDIT: ADRIAN MICHAEL

ACQは地域の教会と協力し、火災の被災者に100枚以上のキルトを寄付した。その他、生活必需品の寄付もしている。「ニーズがあるかぎり、キルトはじめ物資の寄付を続けるつもりです」とディエツ。手芸店のトゥリーロッタが協力し、キルトの寄付センターとなっている。「こうしたかたちで被災者を助ける機会をいただけて光栄です」と店主のテレサ・バルバガロは言う。

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手芸店トゥリーロッタと店主のテレサ・バルバガロ。キルトの寄付センターとなっている。CREDIT: ADRIAN MICHAEL

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手芸店トゥリーロッタの店内。CREDIT: ADRIAN MICHAEL

ACQのキルト作家たちは、この手づくりの品が被災者を励ます力になるはずと信じている。「火災で何もかもを失ってしまった人たちに届け、生活の再建に役立てていただきたいのです」メンバーのライアン・プヨルは言う。

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ライアン・プヨルと寄付するお手製のキルト。CREDIT: ADRIAN MICHAEL

彼の妻で同じくACQメンバーのロドリゲスも、「キルトを受け取った人は皆さんとても喜んでくれます。キルトには作り手の思いが込もっているので、こんなときには特に意義があると思います」

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CREDIT: ADRIAN MICHAEL  ロドリゲスと寄付するお手製のキルト。

お手製のキルトを寄付したシャロン・オズボーンも、「何かすぐにできる支援をと思ったんです。家を失ってしまった人たちに、少しでも心地よさをもたせればと思います」

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シャロン・オズボーンと寄付するお手製のキルト。CREDIT: ADRIAN MICHAEL

ディエツは今後も支援を続け、なるべく多くの人にキルトを届けていきたいと考えている。「各世帯に1枚ずつ提供したいと思ってます。かなり大きな目標ですが、自分たちにできることで困っている方たちのお役に立ちたいんです」

By Adrian Michael
Courtesy of Denver VOICE / International Network of Street Papers


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