さまざまなモノが格安で手に入る現代。生活が困窮した人にも選択肢が複数あるのはよいことですが、格安なぶん、耐久性に欠けるモノが多いのが現実…。
ビッグイシューの販売者も、かつては1,000円前後で買える靴を購入しては、1か月ほどで靴底やつま先に穴があき、これ以上は無理、となっては新しい靴を買わなければなりませんでした。

―2008年のある日、あるサラリーマンが通勤途中にホームレスの人を見かけ「何か支援できることはありませんか」とビッグイシューの事務所に問い合わせ。その人物が、アウトドアフットウェアブランド『KEEN』の社員さんだったことから、ビッグイシューが「丈夫な靴があると助かります…」と切実なニーズを伝えたところ、KEEN JAPAN(以下、KEEN)の社長に伝わり、KEENからの“足元支援”が始まりました。
以来、KEENは、毎年、全国の販売者に靴の寄贈やチャリティ販売の商品を提供くださっています。


社員の1割がボランティアで参加、販売者にフィットした靴を提供

2022年も、ビッグイシューの東京・大阪事務所で、販売者の靴のフィッティング会が開かれました。現在KEENには140名ほどの社員が在籍していますが、今回東西の事務所を合わせて14名が参加。社員の1割が参加する一大イベントです。KEENでは、ボランティアを「やらなければならないもの」としてではなく、文化として浸透しているようです。

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大阪事務所にて

フィッティング会に向け、事前に各販売者の足のサイズをKEENにお伝えしておくと、当日、東西の事務所に、ボランティアの社員さんたちが山のようにたくさんの靴を持ってきてくださいます。その数、100足以上!どれも新品で、この冬に発売されたばかりの新商品もあり、まるでお店のようです。
「街中で履けるモデルもありますし、防水性のことも考えると、販売者さんのお役に立てるのでは、と思います」と話すのは、KEEN東京本社から来てくださった久保さん。

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東京事務所でのフィッティング会の様子

「足の甲が高い方、幅の広い方、人によって足の形はいろいろですので、同じサイズの靴を複数用意して、ぴったりのを選んでもらっています。普段なかなか会えない方々とお話しするのが、学びになりますね」とにこやかに話してくださいました。

“足元支援”のありがたさ

当日、フィッティング会に参加した販売者に話を聞きました。

「以前は安い靴を履いていたけれど、あっという間に傷んで、破れてしまってた。KEENのは、毎日2万歩くらい歩いても、すごく長持ちするから、ほんと助かります」(神戸元町の販売者)

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大阪事務所にて

「冬の路上は、とても寒いんです。そこで10時間以上立ったまま販売するから、毎年ハイカットの靴をお願いしています。足首が出ないと、だいぶマシ。僕らは、靴を脱ぐことがほとんどないから*通気性もないと困るんだけど、KEENの靴は通気性もとてもいい。KEENのハイカットの靴、大好き。」(六甲道の販売者)

*路上生活者のなかには、靴を脱いで寝ると盗まれる恐れがあるので履いたまま就寝する人もいます。

「かつてはデパートのような場所にある椅子で、休憩したり暖を取ったりができましたが、コロナ禍で椅子も減ってしまいました。路上に立ち続ける仕事だと、足腰や膝もしんどいので、特に冬場はKEENの靴があたたかくて本当に助かります」(京都の販売者)

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嬉しそうに寄付いただいた靴を披露する販売者

「安い靴は、カカトがすぐボロボロになっちゃいます。KEENさんには“後ろ体重なのかもしれないね”とアドバイスしてもらいました。
以前、たまたまお店でKEENの靴を見て“こんな高級なものをいただいていたのか”とビックリしました。見た目にもかっこいい靴をいただいて…安いのとは本当に持ちが違います」(千里中央の販売者)

大阪のフィッティング会にはじめて参加したKEEN社員の方のなかには、「ホームレスと言えば、ブルーシートで生活しているとか、陸橋の上で寝ている人をイメージしていましたが、今回販売者さんと話してみて、ホームレス、と言っても、いろんな状況の人がいるんだなと気づけました」と語る方も。

社員が増えて組織が大きくなるなかで、「このような機会は社員のよい意識改革になっていると思います」と久保さんは語りました。

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ビッグイシュー大阪事務所で、KEEN社員の皆さまと。 (ボランティアに来てくださった社員さん、そしてその不在のカバーをしてくださったそれ以外の社員の皆さまも、ありがとうございました!)

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https://www.bigissue.jp/2022/09/24354/



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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊450円の雑誌を売ると半分以上の230円が彼らの収入となります。