現在、「一般財団法人ネコイコネ」の代表を務める橋本磨季さんが「飼い主のいない猫に避妊去勢手術を行う活動」を始めたのは2003年頃のこと。猫は生後5ヵ月で妊娠が可能になり、1度に5~6匹の子猫を出産する。

「殺処分のために、子猫を持ち込まれる動物愛護センター(以下センター)の職員さんたちは大変な苦悩を抱えています。不幸な命をこれ以上増やさないためにも、飼い主のいない猫に、いつでも、どこでも、避妊去勢手術を受けさせられる体制が不可欠です」


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殺処分に苦悩するセンター職員
青山霊園で100匹近くを手術

橋本さんは埼玉県大宮市(現さいたま市)で「動物行政を考える会」を立ち上げ、行政への提言活動は「飼い主がいない猫の去勢・不妊手術費等の一部助成金事業」へとつながった。この事業を利用し、現在まで約1万匹が手術を受けている。また、04年からは、東京都港区の青山霊園で飼い主のいない100匹近い猫を捕獲し、手術を行って元の場所に戻す「TNR地域猫活動」も実施。その後、16年に設立した「猫1匹の手術につき5000円を交付する助成金制度」では、今年の5月までに全国2000匹以上の猫の手術に助成してきた。さらに20年には「一般財団法人ネコイコネ」を立ち上げ、各地のセンターで野良猫の避妊去勢手術の実施・徹底を訴え続けている。

官・民シェルターでの避妊去勢手術
世界ではスタンダード

犬猫の殺処分数は、この約10年で10分の1近くまで減少したが、「猫の殺処分数は犬の約5倍ありますし、路上死は処分数の10倍近いともいわれています」と橋本さん。

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今年5月、橋本さんらは全国約100ヵ所のセンターにアンケートを送付。
「その結果、飼い主のいない猫の避妊去勢手術をしていないところは43%、譲渡対象の猫に絞っているところも26%ありました。しかし47%がセンターで手術をしたいと望んでいて、42%が飼い主のいない猫にも手術が必要だと考えていることがわかりました」

動物愛護管理法37条には、犬猫の適正な飼養が困難になる場合は、飼い主が避妊去勢手術の義務を負うことが謳われている。
「ところが、より公的な管理介入が必要な飼い主のいない犬猫については各地方自治体に任されているので、対応には地域格差があります。手術を徹底すれば野良猫の数は減少し、多頭崩壊を解決する一助となります。譲渡会も大事ですが、まずは予防の観点からも、センターで手術を無償提供できるようにしてほしい。センターには手術室は完備、優秀な獣医さんが勤務する自治体もあります。37条の二の動物愛護センターの業務の中に『飼い主のいない犬猫の繁殖制限を実施する』と明記されることが私たちの願いです」

橋本さんはこれまで欧米にある動物のシェルターを視察してきた。
「官・民のシェルターの多くには動物病院・施設が併設され、飼い主のいない犬猫などには無料で避妊去勢手術をしています。たとえば米国ロサンゼルス市は、生後4ヵ月超のすべての犬と猫への避妊去勢手術が法律で義務づけられています」「動物愛護を語るうえで、手術は世界のスタンダードです。日本でもセンターの業務として避妊去勢手術が明記・実施されれば、共生・命の尊厳を守る方向に動物行政は一段と飛躍すると思います」


一般財団法人 ネコイコネ
「不幸な命をこれ以上増やさない」ために、飼い主のいない猫の避妊・去勢手術を行う動物病院を支援し、動物愛護センターで手術が受けられる体制を整えるよう政府・行政に働きかけ、助成金制度を開設するなど20年以上にわたり活動を継続している。

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代表の橋本磨季さん

https://nekoikone.jp/
note  https://note.com/nekoikone/



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