前編「”水“赤字国、日本。沖大幹さんが語る、バーチャルウォーター(間接水)から見える世界(1/2)」を読む




”水“赤字の日本。バーチャルウォーター年間640億トン



ここまでくると勘のいい人は気づいたかもしれない。なぜ日本では、水があり余っているように見えてしまうのか? そのカラクリが——。


570億トン(㎥)。これが日本国内で農産物の生産に使われるおよその水量(年間)。この数字だけを見れば、日本は他の先進国と比べてもそれほどの量を使用していないといえる。



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しかし輸入しているバーチャルウォーターの水量はそれを上回る、およそ640億トン。この国はある意味で”水“赤字といえなくもないのだ。



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「カロリーベースで食料自給率が40%なんですから、数字が大きくてもおかしくないですよ。非常に妥当な数字だと思いますけどね」




途上国はお金がないゆえ間接水には頼れず、人々が飢え死に、日本はその経済力でもって水・食料を確保しているだけのこと。水がただあり余っているわけではないのだ。

それにしても、どうして日本のバーチャルウォーター依存度はこれだけ高いのだろうか? 食糧自給率が低いせい? 確かにそうなのだけど、もっとわかりやすい理由がある。その鍵は日本の”肉食化“にある。




つい昔まで牛肉は奮発しないと買えないような贅沢品だった。それが今は牛丼をはじめ、安く、気兼ねなく食べられるイメージまである。この牛肉にかかるコストというのが実は莫大なものだ。私たちに身近な”米“を例にあげれば、米を1キロ生産するのに最低1900リットルほどの水が必要とされる。

しかし牛肉の場合、同じ1キロを生産するのに1万5000リットルもの水が必要になるのだ。(※)これは単に飲み水だけでなく多くの飼料が牛の育成に必要となるためで、この数字は他の食料と比べても群を抜いている。日本の間接水輸入のかなりの部分は、この牛肉の消費のために引き起こされているのだ。


※(アメリカでの値。沖さんらによる日本での統計では、米1キロ生産に約3600リットル、牛肉1キロに約2万1000リットルとなる)




残飯率世界一の称号を返上したい




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「牛丼1杯2トンとか、ハンバーガー1個に1トンとかの水が必要とされているんです。お店のメニューにカロリーがどれぐらいと数字があるのと同じように、この食べ物にはこれぐらいのバーチャルウォーターがかかっています、みたいなものが載せられたらいいですよね」




一方で、莫大な輸入を続ける日本のもうひとつの顔は食べ物を無駄に捨てる”残飯率世界一“の称号。

「バイオ燃料のために穀物の値段が多少上がっているなか、日本は輸入できても、それを買えない国が出ます。日本がどんどん買って捨てるようなことをしているせいで、やっぱり他の国に迷惑がかかる。残飯を減らすとその分、食輸入も減らせるわけです。日本の買えるものを、お金のない国が買えるとは限らないわけですが、それによって水・食料が他の国に行く機会が増えて、少しは影響を与えるんじゃないかなという期待ができます。また、途上国の水確保に技術支援、資金支援、人的支援をし、それらの国が自前で水と食糧をもっと確保できるようにすることも大事だと思います」




水が、単に飲み物、食べ物として存在するだけじゃないことも思い出そう。

想像してみてほしい。就職活動をしているとき、一週間、顔や身体を洗わずに、果してあなたは面接に行けるだろうか? 水を流せず、ただただ溜まっていくトイレの汚物の臭いに、あなたは一体何日間、耐えられるだろうか?




「目の前にある食べ物は……まあ食べ物に見えますよね。だけど水問題を考えたときに、食料の裏にある水、水道からジャーっと出てくる水じゃない、手の触れられない水、その”見えない水“にちょっと想いを馳せていただいて、それが単に自分が食べるものを作った水なんじゃなくて、このおんなじ時代に、文化的で最低限な生活のためはおろか、生きるためにも水が得られない人がいるんだな、あるいは、後の時代の子供たちが同じように水で遊べるのかな?と、縦横に想像力を馳せていただくことが大切なんじゃないかと思います」

(土田朋水)
photo:高松英昭





沖 大幹(おき・たいかん)
1964年生まれ。東京大学生産技術研究所人間・社会系部門教授。専門は地球水循環システム。日本におけるバーチャルウォーターの数値化に取り組み、話題を呼んだ。人間活動の影響を考慮した上での世界水循環水資源モデル構築を目指し、現在および将来的に水の存在する場所、水の不足する地域の見通しを立てることで、持続可能な水利用を目指す。

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(参考文献:『水の世界地図』監訳=沖大幹、訳=沖明)










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