(2012年1月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第182号より)




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メキシコ、麻薬組織に使い捨てにされる未成年



「妹は何とか事件を忘れようとしています」と、16歳の少年が言う。彼は麻薬組織に「かっこいい車」を贈られ、メンバーの移動を手伝っていたが、今は組織に命を狙われる身となり、妹(12歳)とともに人権団体に保護されている。

母親が、組織を裏切った女性の手伝いをしていたためだ。その母は誘拐され、行方不明。彼と妹は米国への亡命を申請している。

「組織で出会った同世代の子は、“もう何人も殺した”と話していました」という少年の証言通り、組織の殺し屋となっている少年少女もいる。麻薬売買から暗殺まで、何らかのかたちで麻薬組織で働く未成年は少なくとも3万人、大半は貧困層の若者だという。

「教会からの帰り道、後ろから来た黒い車にいきなり押し込まれました」。そう話すのは、15歳の少年。誘拐され、麻薬組織への参加を迫られたが、手にしていた聖書を見せて信仰に没頭したいと懇願し、解放されたという。

「メキシコ児童権利ネットワーク(REDIM)」代表のフアン・マルティン・ガルシア氏によると、「未成年は安上がりで使い捨てできる、組織の格好のターゲットになっている」。

逮捕されても少年法に守られて早く釈放され、組織へのダメージが少ないことも一因のようだ。

(工藤律子)