(2007年9月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第78号より)




スペシャルインタビュー U2・Bono(ボノ)



アフリカにおける貧困やエイズとの闘いに
力を注ぐようになってから7年。
U2のボノが語る
「REDキャンペーン」のこと、政治のこと、
そして最近魅了されているという北アフリカの音楽のこと。







U2 5加工




2500万ドルの利益で、支出はゼロ。アップルコンピュータも巻き込んだ「REDキャンペーン」



ボノがアフリカにおける貧困やエイズとの闘いに力を注ぐようになってから、7年の時が流れた。いまや彼の写真は、エンターテインメント欄よりも政治欄で見かけることが多いほどだ。

「あとどれくらいこのような活動を続けるかについては、このごろ自分でもよく考えるんだ。僕らは何を成し遂げたんだろうか? いつまで続ければいいのか? エリゼ宮(フランス大統領官邸)やカンツラーアムト(ドイツ首相官邸)から出てくると、もう一人の自分の声が聞こえるんだ、おまえは一体、こんなところで何をやってるんだってね。この手の活動は僕の本来のビジネスではないし、政治家が自分たちの仕事をきっちりこなしてくれれば必要のないこと。そうなったら世間の人たちは、口うるさいボノがアフリカに対する世界の借りについてしつこく語るのを聞かなくてすむというわけさ」と笑う。

「自分のスピーチに耳をふさぎたくなることもたびたびさ。以前のようにただ歌っていられたらと思うこともよくある、でもしばらくは難しそうだね。アフリカに対する僕の関心は、表面的でも一時的でもないから」




アフリカにのめり込むことで、ボノのイメージが悪くなるという人もいる。

「僕がアフリカ絡みでメディアに登場することで、U2の足を引っ張るということはあるかもしれないね。一部のファンの神経を逆なでしてしまうんだ。『彼にはもううんざりだ』という具合に。でもアフリカの問題は僕にとってあまりにも重要なんでね、まだしばらくやめるつもりはないよ」




アップルコンピュータ社などの企業が赤い色の商品を販売して、その利益をボノたちのかかわるアフリカ支援にあてるという趣旨の「REDキャンペーン」は、彼らを非難の矢面に立たせる結果となった。商品を売って得られるよりも多くの金額を宣伝に費やしていると、メディアが報じたのだ。

「まったくの見当違いで、実に腹立たしいね。火事で家が全焼しそうなとき、手を貸さないどころか、消防士に石を投げるようなもので、まったく不愉快だよ。噂が大きくなってしまっただけで、何の根拠もない。僕らが宣伝に1億ドルを費やして、利益は1500万ドルのみと言われたんだけど、実際は2500万ドルの利益に対して、支出はゼロ。『REDキャンペーン』の宣伝費用はすべて、各企業の通常予算内に組み込まれていたんだ。REDに対する多くの企業の協力はあっぱれだった。同じような企業をもっと探していきたいね」





いつも心に浮かぶのは 間に合わせの病院で働く アフリカの医者のことだ



ボノは、G8サミットの周辺で暴動が起こる可能性についてたびたび警告してきた。G8諸国の多くが、2005年にイギリスのグレンイーグルズ・サミットで交わされた約束を履行せずにいる状態を、彼はどう思っているのだろうか。




「2001年のジェノバ・サミットのときのような暴動を許すつもりはまったくないよ。市民的不服従は、暴力行為とはまったく別のものだからね。でも、約束が破られたことに対する大勢の怒りはもっともだと思う」

「いつも心に浮かぶのは、間に合わせの病院で働くアフリカの医者のことだ。あるのは壁ばかりで、屋根もなければ電気もない。看護師たちが向き合うのは、病気の子供を腕に抱いた母親たちの長い列。彼らに薬を与えることもままならず、看護師たちは途方にくれて立ち尽くす。そんな光景も何度も見てきたよ。母親たちが責めるような目で僕を見ることはないけど、看護師たちからはいつも射抜くような視線を向けられる。まるで雌ライオンのような彼女たちが、僕を責めるんだ。『この薬を私たちのもとに送るのは、あなたにとってそんなに大変なこと? この人たちを見て。こんなに苦しんでるのよ』とね」




後編に続く