不安定時代の居住政策



わが国では総人口の減少が続く中、高齢者人口の増加はしばらく継続し、今世紀半ばには全体の約4割程度に達する。

また、世帯総数は2015年をピークに減少に転じ、これまで最多数を占めていた「夫婦と子」が減少し、2050年には「高齢者単独」が最多となることが推計されている。

こうした人口減少・超少子高齢社会の到来と経済社会の不安定化が、様々な「生活の不安」に結びつき、居住問題にも直結する。すなわち、健康不安、雇用不安、家族関係の安定性の欠如や近隣関係の希薄さ、地域からの孤立化等による日常生活の不安感、不安定感が、安定した居住を損なう要因となることに留意しなければならない。




例えば、筆者が調査を行っている郊外ニュータウンに立地する公営住宅(ニュータウン全体で計1.6万戸)では、毎年1割程度の空き家が発生するため、高齢期に新たに入居する世帯も多い。

しかし、終のすみかを求めて遠方より来住したにもかかわらず、入居後の居住の満足度は低く、積極的な定住意向は少ない。住宅の広さや耐震性等の住宅の質はそれまで居住していた民間賃貸住宅よりも向上し、家賃負担も軽減されていると思われるにもかかわらず、トータルな住生活の満足度は高くない。

その理由を考察すると、買い物等の団地の生活環境の不便さ、家族や近隣関係からの疎外感、「住み慣れない」という意識等があるが、特に、相互に見守り、助け合う身近な近隣関係が公営住宅団地から失われつつあることが大きい。




一般的に公営住宅団地は自治会による団地管理が原則であるため、住宅管理や自治会活動を通じて豊かな団地コミュニティを形成してきていたが、高齢化、単身化、要支援者の増加等、入居者属性の偏りが顕著になり、また、団地自治会を推進・運営する力を持つ居住世帯が応能家賃制度のもと、こぞって退去したこともあり、自治会活動、ひいては地域力そのものが低迷している。

高齢者のひとりぐらしが増加しているが、団地内での互助的活動には結びつかず、中には、ひとりも民生委員が住んでいない大規模団地等も生まれている。




このようなことは、住宅に困窮する世帯に、公営住宅という「箱」をあてがうだけでは必ずしも安定居住には結びつかないことを示している。そこで生活する世帯の属性や生活特性を十分に考慮し、日常生活を安心して営むために必要な要素を付加していかなければ、真に安定した居住は実現できない。

すなわち、住まいの問題は生活の問題と一体であるという認識のもと、ハード(住宅・住環境)とソフト(管理・サービス・コミュニティ)を総合的に捉える「居住政策」の視点が、これからの不安定時代には不可欠であると思われる。




(大阪市立大学 都市研究プラザ 佐藤由美)





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