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支援の顔をしていない「支援」の入り口も必要



滝口克典/ぷらっとほーむ共同代表
「サブカルチャーを活用した若者層へのアウトリーチ活動」 若年世代による若年世代のための居場所/学びの場を提供。コスプレイベントや映画上映会などのサブカル・コミュニティを、孤立しがちな若者たちの生活圏と支援空間の中間にたちあげ、そこに若者をゆるやかに誘導する取り組みを実施。


滝口:山形から来ました「ぷらっとほーむ」の滝口です。私たちは不登校やひきこもりなどの若者向けのフリースペースの活動をしています。

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たとえば、ビルのスペースを開放して若者が集まってくる場をつくっています。居場所づくり、学びの場づくりという二つの柱で活動しています。フリースペースは平日の日中、空き家を開放していましたが、昨年(2013年)からビルの一室を利用しています。場を開いて集まってきた若者たちと交流する活動をしています。

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あちこちで孤立している若者たちの真ん中にフリースペースを開いて、点の人たちを集めていきます。フリースペースには、そこに行きたいという思いが強くないと来ることができません。そのために、彼(女)らの生活圏とフリースペースの中間にテーマ・コミュニティを開いています。

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具体的には、NPO運営者を招いての企画づくりの体験講座。または労働組合の方を招いて模擬労働相談、または大学の研究室での「社会学ゼミ」の体験、美大生を招いてアートの体験などを提供しています。

服飾専門学校でコスプレ衣装をみんなでつくったり、市民活動から生まれた映画館と共催で上映会を開催したり、または地域のお祭りの花笠祭りに参加したい若者たちに機会を提供したり。コスプレパーティなどもやっています。私も一緒にコスプレをします(笑)。

あとは、非正規労働の若者たちの居場所、学び場づくりをやっています。同じ映画を見て感想を語り合う場、本好きの若者が集まる読書会、若者活動をやっている人たちが集まって講座をやったりしています。

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こうした活動がどういった意味でアウトリーチなのかというと、私たちの場合は、不登校、ひきこもりの若者へのアウトリーチということになります。この分野のアウトリーチというと、自宅に引きこもっている状態の若年孤立者を訪問支援、訪問指導するのが一般的なイメージです。

ですが、この方法は難しいんです。親が支援者を呼んだとしても、当事者からすると、望んでもいないのに、他人がプライバシー空間にやってくるということになるわけです。不登校、ひきこもり支援という文脈では、アウトリーチは気をつけてやらないと難しいと言われています。人権や自己決定権を侵害しないかたちで介入する必要性があると感じています。

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どうすれば侵襲性や暴力性を伴わないアウトリーチが可能かということを考えたときに、フリースペースと孤立する若者の間に、サブカルやアニメ、映画等のテーマ・コミュニティが必要だと思いました。

ここで、不登校やひきこもりの人が集まる場です、と打ち出してしまうと来てくれないんですね。敷居が低い中間領域、スティグマ(不名誉)を伴わずに参加できる場をつくり、誘い出すという方法でやっています。

こういった支援の前提となる考えかたとしては、人間には様々な顔があるわけです。どのような関係性のなかにいるかで顔、キャラが変わっていきます。そうした顔の束として、人のアイデンティティというものを考えていくことが可能だと思っています。

例えば、Aさんがいたときに、若者でもと不登校で非正規労働をしていて、アニメが好きだという方だとします。不登校という枠だけでやっていたら、アニメ・非正規労働という他の2つのアプローチが出来なくなってしまうんですね。

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そういう観点からすると、様々なコミュニティをつくって、当事者を巻き込んでいく、多様なアプローチが可能になります。スティグマ(不名誉)を伴うカテゴリーのコミュニティに正面から接続するのは敷居が高いので、支援と言わない、支援の顔をしていない、「裏口の支援」というものを用意する必要があるんじゃないかと思います。どうもありがとうございます、以上です。

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