part.2を読む

居場所を変えて、家族をつくる



イケダ:ありがとうございます。先ほど家入さんからリバ邸のお話がありました。個人的に興味があるのは、「皆で助け合う」という理想は確かにあるんですが、ぼくはコミュ障なのでストレスなんですよね。ぶっちゃけ、ぼくはリバ邸には絶対住めないと思いますし、やはり自分だけの場所が必要かなと。

その意味で、シェアハウスはセーフティネットにはなるだろうけど、万人の為にはならないような気がしています。実は今日、会場を貸してくださったギークス株式会社の社員の方で、「リバ邸」に住んだことのある方がいるんです。簡単にお話を伺ってみましょう。南光さん、お願いします。

南光:はじめまして。南光といいます。リバ邸には1ヶ月くらい住んでいました。

去年からプログラミングを勉強していたので、朝早くに家を出て、夜遅くに帰るという生活をしていたんですね。なので、住人の人とあまりコミュニケーション取る時間がなくて…。まさに、自分が透明人間である感情をリバ邸内で感じてしまっていました。一方で、この環境が合う人や住みたい人もいると思うので、パイを奪わないように、自分はリバ邸を出ることを決めました。

家入:でも、一ヶ月で飛び出したのは正解で、万人の為の居場所なんて、ないんですよね。

南光:確かにそうですね。

家入:入って、すぐに「なんか違う」と、去っていくのはしょうがないと思っているんです。

リバ邸も、全ての人を救うつもりはなく、誰かの居場所になってくれたらいいと思っていて。ここ違うなと思ったら軽やかに飛び出して違う場所に行けばいいんですよね。リバ邸が居場所にならなかったのは残念ですけど、惰性で居続けるより正しい選択をしたと思います。

この話、好きでよくするんですが、リバ邸は馴染む人にとっては家族みたいになっていくんです。僕はこれを「擬似家族」と呼んでいるんですね。ある方に、家族の定義って本当はないと教えてもらいました。血のつながった存在かどうかは関係がなくて、自分が家族だと思えば家族。疑似家族ではなく家族なんだ、と。なるほどなぁ、と。それを聞いた時、家族の形が解き放たれたんですよ。

親との関係性に苦しめられている子もたくさんいるし、地方だとそういうこともあると思いますが、閉鎖的で排他的な環境に苦しめられることもありますよね。

そういう場所は、さっさと飛び出して新しい家族を作ればいいんですよね。僕はもちろん親に感謝していますが、究極を言うと、他人じゃないですか、親は親の人生があるし、親の人生に引き摺られたくないし。そう考えると、血のつながりそこまで重視しなくてもいいんじゃないかと思います。

佐野:新しい居場所は見つけられました?

南光:はい、一応。またシェアハウスですけど。

家入:全然、それでいいと思いますよ。


「すべての人を救う」ことについて



イケダ:南光さん、ありがとうございました。

もう少し突っ込んでいくと、世の中には本当に衰弱してヤバい!という人も数多くいて、リバ邸に行ける人はそもそもポテンシャルがあって元気な人ですよね。ビッグイシューの販売者になれる人も、辛い立ち仕事をやろうと思えるほどには、元気な人だと思います。

家入さんから「すべての人を救うつもりはない」という発言がありましたが、既存のセーフティネットで救うことができない人については、どうしていけばいいんでしょうか。

11661966 2014 05 16 21 38 35 166A0219

家入:そうですねぇ…。関係あるかわからないんだけど、この前、乙武さんと話して面白かったのが、「弱者の強者」という言葉があるんですね。同じ弱者なんだけど、弱者の強者は自分の居場所を探すことができる。でも、「弱者の弱者」になると救いようがなくなって、どうしようもなくなって、社会を恨んでしまうようになる、と。同じ弱者の中で敵対意識が芽生えてしまうというか。乙武さんは弱者…まぁ、僕は弱者という言葉は好きじゃないけど、便宜上でいえば、五体不満足という意味で言えば、発信力もありますし「弱者の強者」ですよね。だから、弱者の側から「お前は強者なんだ」と言われちゃうと、どうしようもないわけですね。

さっきも言ったとおり、リバ邸は万人の場所じゃないんですよね。それは一時期悩んでいたんです。はたして、どこまで受け入れられるのか、っていう悩み。リバ邸はシェアハウスなので、本当に病んでいて、病院に行くような人が来たらコミュニティがバラバラになってしまうんですよ。

どこまで受け入れるかを考えていたときに、ダルクを(薬物依存からの回復を支援するリハビリ施設)やっている方に「それはセグメントを分けるべきなんだよ」と、教えていただきました。リバ邸はこのくらいの状態の子を受け入れる場所だと。それよりもっと貧困だったり、病んでいる人は他に受け入れる場所があるので、そういう場所に繋いであげれば、全てを受け入れる必要はないんだよと言ってくださって。

佐野:おっしゃる通りですね。万人を受け入れることに悩まれたのは、凄いなと思います。僕は、万人なんか受け入れらないと思います。そんな人を想定したら、ものすごい独裁者になってしまうじゃないか。私は何でもできるぞ、そういう人が万人を受け入れようとするでしょう。もしも万人を受け入れられる場所があるなら、それは行政的な施設、ある種の収容所に近づいていくと思っています。万人なんて受け入れられないと思った方がいいですし、そう思う方が僕は健全だと思います。

ただ、それにしても、若いホームレスの人が来ても続かないんです。彼らがどうしたら販売を続けることが出来るのか。今日も販売サポートのスタッフが来ていますが、彼らは日夜悩んでいます。

僕らとしては何を用意するかというと、今、承認欲求という話がありましたが、社会に承認されるような仕事があれば、それに越したことがないとは思います。しかし、仕事がないんです。


part.4を読む>*6/6アップ予定