中国、「小悦悦(悦ちゃん)事件」に社会が反省 [世界短信]

「小悦悦」とは広東省で車にひかれて数日後に亡くなった2歳の女の子の愛称だ。防犯カメラが捉えた事故の一部始終が公開され、彼女の名は流行語になるほど広まった。映像には、悦ちゃんがひかれて倒れているのに、18人の通行人が無視していく様子が映っている。

この背景には、助けた相手から「突き飛ばされて転んだ」と言いがかりをつけられて賠償金を請求される事件の多発がある。しかし社会全体が他人に無関心になり、道徳心が薄れていることが根底にあると専門家は指摘する。

事件後、誹謗中傷がさらに遺族や関係者を傷つけている。悦ちゃんを助けた19人目の通行人はごみ拾いで生活する女性だが、売名行為だと中傷された。悦ちゃんのお父さんは治療のために贈られた多額の寄付を横領したと誹謗された。

最近、子どもが車にひかれ、周りの人はすぐ救助にあたったという。小悦悦事件は19人目の傍観者になってはいけないという思いを人々に植えつける結果ともなった。

(森若裕子/参照:中国青年報、揚子晩報、広州日報)

(2012年1月1日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 第182号より)