IAEA(国際原子力機関)って何?福島県内に研究拠点、市民がウォッチする

12月15日から17日にかけて、政府とIAEAが郡山市で「原子力安全に関する福島閣僚会議」を開催し、来年2013年には除染実施などのため、福島県内にIAEAの研究拠点を設置することが発表された。

ところが、原発事故に伴い避難生活を送る被災者、一般市民に対しては、IAEAの拠点設置の理由や研究の内容について説明がなく、原発被災者の声が反映されるのかどうかが不透明なことから、11月24日、福島市内でIAEAについて学び、その研究の透明性や公正性をウォッチしていこうという市民グループ「フクシマ・アクション・プロジェクト」が発足した。

IAEAについて学ぶフクシマ アクション プロジェクト結成
(市民により発足した「フクシマ・アクション・プロジェクト」設立集会(11月24日))

翻訳家の竹内雅文さんは「IAEAって何?」と題して講演。

IAEAは商用原子力の推進機関であり、その上部にある安全保障理事会・常任理事国は核を独占している国々。本来、福島に来て調査すべきはWHO(世界保健機関)だが、1959年にWHOとIAEAが合意書を取り交わし、それによりWHOは原子力の健康被害について発言する際には、事前にIAEAの同意を得なければならないことになった」と説明。IAEAによる福島での研究に懸念を示した。

今後、閣僚会議開催期間中に、福島県内で脱原発首長会議や県庁前でのアピール行動、IAEAへの申し入れ、市民会議を開く予定で準備を進めている。

小渕真理さん(アウシュヴィッツ平和博物館)、武藤類子さん(福島原発告訴団)、関久雄さん(りょうぜん里山学校)の3人が共同代表で、佐藤栄佐久さん(前知事)、崎山比早子さん(医学博士・高木学校メンバー)が顧問を務める。

結成集会では、国会事故調委員も務めた崎山さんが講演し、「国会事故調でわかったことは、東電の原子力部門が考えるリスクとは『原子炉の長期間停止』であり、文科省や経産省は低線量被曝のリスクが知られること自体をリスクと考えている。これは国民が考える健康影響や被曝のリスクとはかけ離れたもの」と指摘。

「100ミリシーベルト以下のリスクはわからないとされていることは、原発を推進したいとの考えがあるからだ」と述べた。

(文と写真 藍原寛子)

(2012年12月15日発売、THE BIG ISSUE JAPAN 205号より)