ビッグイシューオンライン編集部より。11月15日発売の299号から、「被災地から」を転載します。

多くが経済的負担増 -公営住宅でも「追い出し政策」

来年3月末で原発事故の自主避難者(避難区域以外からの避難者)に対する避難用住宅(みなし仮設住宅)の無償化が完全に打ち切られる。それを前に、全国各地から集まった自主避難者や支援者が打ち切り延期を求める集会が、都内の衆参議員会館で相次いで開かれた。10月20日、参議院議員会館での「避難住宅打ち切り反対 福島原発事故避難者の院内集会」には、約150人が参加した。
 森川清弁護士は、みなし仮設の公営住宅からの原則退去について「現在、各地の公営住宅で暮らす自主避難者も、抽選に応募し、当選しなければ入居できない。多少の優遇策はあるが倍率が高く、何回応募しても入居できない人もいる。こうした政策が、二次被害を招くことは明らかだ」と、「追い出し政策」の問題を指摘した。

 公営住宅では「特定入居」という枠で来年3月以降も自主避難者が入居できるが、収入制限があるなど、制約の多い制度になっている。そのため福島県に家族を残して避難している家庭や母子避難の家庭など、希望しても自主避難を継続できる目処が立たず、福島へ戻る家庭が出ている。福島県は家賃の半分まで、毎月最大3万円(1年目)の家賃補助策を準備したが、対象となる民間の借り上げ住宅に入る場合などに限られる。公営住宅や民間賃貸住宅などに避難している自主避難者のほとんどが、今の生活を継続しようとすれば経済的負担を強いられる。
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コミュニティを再び失うリスク 避難住宅の無償化継続を

 幼い子どもといわき市から東京へ母子避難した女性は、子どもを抱き、マイクを握った。
「避難で6ヵ所を転々とし、今の都営住宅での生活にようやく慣れてきたところ。無償化打ち切りが決まり、都営住宅の抽選に申し込もうとしたら、収入要件が数万円オーバー。特定入居にも応募できず、途方に暮れている。できれば今のところに住み続けたい」と訴えた。

 郡山市から大阪府に避難している森松明希子さん(原発被害者訴訟原告団全国連絡会共同代表)は「希望しないのに帰還しなければならないのは、強制送還に等しい。放射能は目に見えないが、その被害を可視化しているのが私たち自主避難者。この被害に遭っているお母さんたちの声、避難者の声に耳を傾けてほしい」と話した。

 10月26日午前には、日弁連の主催で「長期避難者の住宅支援制度の充実に向けて――それぞれの選択を尊重した施策の重要性」が開かれた。

 関東弁護士連合会(関弁連)は、今年7月25日から30日まで実施した電話相談の概要を報告。相談の中身で最も多かったのは、避難を継続したいが住宅打ち切りの問題があることへの相談(32件・35%)、次いで避難費用(29件・32%)と、住まいや生活に関する問題が67%を占めた。「借り上げ住宅支援が終わったら、どうしたらいいか、精神的に不安で仕方がない」(南相馬市・男性)、「認知症の父がこれ以上住居を変えると混乱してしまう」(東京都・30代女性)など、切実な状況に直面している相談が寄せられた。

 伊達市から北海道に避難した宍戸隆子さんは、ようやく地域に慣れて、コミュニティができた時に、再度の転居を強いられるリスクを語った。
「避難直後、小さな子どもを抱えたお母さんたちが一人で生活していくなんてできないと、お茶会などでコミュニティを作った。それがまたバラバラになるのは悲しい。打ち切りに伴って、新たな住宅の契約が必要となるが、雇用促進住宅では家賃の3倍の収入がないと入居できない。母子避難者や生活困窮一歩手前の人が、同じところに住み続けられない問題がある。本当に大変な人が救われない。避難したすべての人たちのために、住居を用意してください」と声を震わせた。

 同じ日の午後には、原発事故被害者の救済を求める全国運動による「10・26 請願署名提出集会」が開かれた。全国の自主避難者や支援者が集めた安倍首相や衆参議長らに対する打ち切り撤回を求める請願19万3197筆を国会議員に提出。全国各地で自主避難を続ける人々が、生活の実情とともに、避難住宅の無償化継続の必要性を訴えた。

 期限まであと半年。次々に上がる打ち切り反対の切実な声。もしも国と福島県が強行していったなら、二次被害、三次被害も出かねないという深刻な状況が、もうすでに始まっている。
(文と写真 あいはら ひろこ)

あいはら・ひろこ

福島県福島市生まれ。ジャーナリスト。被災地の現状の取材を中心に、国内外のニュース報道・取材・リサーチ・翻訳・編集などを行う。

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