イギリスのドラッグ依存症のホームレス男性、ジェームス・ボーエンが書いた「A Street Cat Named Bob」という実話をもとにした小説を、ビッグイシュー・オンライン編集部が取り上げたのは2013年のこと。

その後映画化されたこの作品が、英国のNational film Awards2017の一般投票部門賞にノミネートされたというニュースが飛び込んできました!

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ジェームス・ボーエンは2007年に茶トラの猫「ボブ」と出会い世話することで、「ドラッグ」と「投げやりな人生」から決別することを決心します。

そして紆余曲折を経て、イギリス版ビッグイシューをボブとともに路上で販売し始めるのですが、「猫とコンビ」の販売スタイルがYouTubeなどでも注目を集め、本を出版しベストセラーになる…という奇跡のようなドキュメンタリー小説が「A Street Cat Named Bob」です。(邦題:「ボブという名のストリート・キャット」)

過去記事:「ハリウッド映画化も?元ホームレス男性の著書「A Street Cat Named Bob」が話題!

上記の記事を公開した頃はまだ英語版の書籍が出たばかりでしたが、その後その本は世界28カ国以上で翻訳出版されるまでに。日本語訳版は2013年に出版されました。



続編の出版に次いで、イギリスで映画化。
英国のNational film Awards2017にノミネートされたストリートキャット、ボブ。

さらに続編も出版され、2016年11月にはイギリスで映画が公開されました。
(続編「ボブがくれた世界」(原題:The World According to Bob)

2016年11月にイギリスで公開された映画の予告編はこちら。
なんと2月8日に英国のNational film Awards2017の一般投票部門賞にノミネートされました!
日本では2017年夏に公開予定とのことです。


*ボブ役はボブ本人(本猫?)だそうです。本当にタダモノではありません!

ドラッグ依存症のホームレス男性が「投げやりな人生」と決別する勇気を持てた理由

未来に夢を持てず、自分自身が生き延びるのがやっとだったドラッグ依存症のホームレス男性が、なぜ、ボブと出会ったことでそれまでの「投げやりな人生」と決別する勇気を持てたのでしょうか。

「A Street Cat Named Bob」の作者のジェームス・ボーエンはこう話します。

ボブのおかげで毎日の生活は愛とユーモアにあふれている。
いままで一度も感じることのなかった責任感も抱いている。
さらに、ボブは生きていくうえでの目的を与えてくれ、ありがたいことにぼくは過去のどんな時よりもはっきりと世界を見ることができるようになった。
(「ボブがくれた世界」、P.16より)
たったひとりでその場しのぎの過ごし方をしてきたジェームスも、「共に歩みたい存在」という絆ができたことで、少しずつその視野や行動が変わってきます。

「ドラッグ依存症のホームレスへの支援」としてさまざまな社会的ケアを受けてきたときには、変われなかったジェームス。しかしボブと出会ったことで、ボブに食べ物と暖かく眠れる場所を提供しなければ、という責任感、そして友達であるボブに、ドラッグに翻弄されている様子を見せたくないという気持ちが生まれます。

猫のボブのおかげで「目を逸らされなくなった」ホームレスのジェームス。

そして、路上で音楽を奏でてお金をもらう「バスキング」のときにも、ビッグイシューを販売するときにも、ボブがいたことで、「人の目」を集めることができたことが何より自立の助けとなったのだと思います。
日本でも、「ビッグイシューの販売って、ただ立っているだけでしょう?」「立ち続けるくらいなら、他の仕事をすればいいのに」と非難されることがあります。

しかし、毎日何時間も「立ち続ける」ことがどれほど大変か、そして、住所や自分を助けてくれる人脈を持たないホームレスが「他の仕事」に就くことがどれほどハードルの高いことなのか…。ジェームスは著書のなかで詳しくリアルに説明してくれています。

ビッグイシューの販売は、常連客が大勢つかない限り、何百、ときには何千人もの人々が前を通り過ぎるのに、「見てみぬふりをされる」という、精神的タフさが求められる仕事です。何百人かに一人は買ってくれますが、それ以外はただひたすら、夏の暑い日も冬の寒い日も、立ち続けなければならないという、肉体的にもハードな仕事です。

その状態を、ジェームスはこのように表現しています。

路上で暮らしていると、人間としての尊厳や自分らしさ、そのほかのあらゆるものが剥ぎ取られてしまう。まわりから見れば単なるホームレスでしかない。
そこにいるのに、人間以外の存在とみなされる。誰もがかかわりを避けたがる。そして路上生活者には本当の友人が一人もいなくなる
(「ボブという名のストリートキャット」、P.38より)
多くの人々にとって透明人間だったホームレスが、目を逸らされなくなり、優しいまなざしを向けられたり、心を寄せてもらったり、話しかけてもらったり…それだけで、「自分は生きている」「社会とつながっている」という勇気が得られるのではないでしょうか。
(ボブを連れてストリートに出た時の、世界の広がり具合はじつに爽快な描写です!)

猫を連れていようといまいと、通りゆく人々の優しいまなざしがあれば、多くのホームレス状態にある人たちの心が勇気づけられるのではないか…と感じられる作品でした。

ぜひ、小説「ボブという名のストリートキャット」「ボブがくれた世界」、そして映画「A Street Cat Named Bob」とをチェックしてみてくださいね。


Facebook(日本語):https://www.facebook.com/jamesandbobjapan/
Facebook(英語):https://www.facebook.com/StreetCatBob/
Twitter:(英語):https://twitter.com/streetcatbob

日本にもいる、猫を愛するビッグイシュー販売者

ビッグイシュー日本の販売者にも、猫を愛する販売者は何人かいます。
うち2人は、過去のビッグイシュー本誌「今月の人」にも登場しています。

▽「愛猫がいるからアパートに入れない」と話していた金井さん。

*現在は春日駅・後楽園駅の文京シビックセンター前で販売しています。
「今月の人」記事:https://www.bigissue.jp/vendor/vendor166.html


▽10匹の猫の食費が1000円!シェルターに入るため猫たちと離れざるを得なかった関さん

*現在はビッグイシュー販売を卒業されています。
「今月の人」記事:https://www.bigissue.jp/vendor/vendor49.html

飼い主と離れざるを得ないペットに思いを馳せる

ビッグイシュー本誌181号でも紹介していますが、災害が起こった時に、人々とペットは分断されてしまいます。ペットと離れたくないから、仮設住宅ではなく車で過ごす…という人の気持ちも、「ボブという名の~」の小説を読むと理解できます。

被災地福島の犬猫たち、飼い主と離れシェルターで越年へ [被災地から]
http://bigissue-online.jp/2012/11/05/fukushima-animals/



動物が人に与えるポジティブな影響

こちらは猫ではありませんが、犬と動物のWin-Winの関係の記事です。

捨てられた犬のトレーニングを通して引きこもりや不登校の若者の社会復帰を支援

2年ひきこもっていた20代半ばの男性は「初めは心因性の頭痛がひどくて休みがちでしたが、犬と接するうちに頭痛が楽になり、1年経った今では会報づくりのまとめ役。IT関係の仕事に就くために、面接の練習やバイト探しにも励んでいる」という。

捨てられた犬と少年をマッチングすることで、若者の社会復帰を助け、殺処分をされる犬たちが減るWIN-WINの関係になるプログラムが紹介されています。

リンク:「殺処分をされる犬たちが減り、若者の社会復帰も助ける」WIN-WINのプログラムを全国に。



人と動物のあたたかい関係、そして不可視化されがちなホームレスの存在に、思いを馳せてみませんか。





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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。