児童養護施設出身の若者は住宅探しに苦労することが多い。保証人・敷金不要のシェアハウスを運営する「すみれブーケ」理事長の内田朝代さんに、若者が抱える問題、今後の課題を聞いた。



孤独感から挫折繰り返した女性
ひきこもりから就職へ

「すみれブーケ」理事長の内田朝代さんは、地域の子どもを見守る「主任児童委員」(※)を務めていた経験から、虐待など、さまざまな事情で養育が困難な家庭の子どもたちが暮らす「児童養護施設」と交流があった。
今年になって、施設にいられる年齢は22歳に引き上げられました。それまでは18歳で施設を出なければならず、頼れる保証人もいない若者は住宅を探すのもひと苦労で、何か支援できないかと考えていました。
 14年、その解決策として東京都世田谷区の一軒家を個人的に借りて「シェアハウス」の運営を始めた内田さんは、ある児童養護施設を退所した若者をひとり受け入れた。ひとり暮らしをしていたその女性は、施設を出て専門学校に通っていたが、孤独感から挫折を繰り返していた。

 その半年後、内田さんは「すみれブーケ」を設立し、シェアハウスを保証人・敷金不要として運営。児童養護施設を退所した若者だけでなく、「さまざまな個性に触れるだけでも成長につながる」と考え、一般の社会人女性も受け入れた。「冷蔵庫の使い方やごみの出し方など小さなことでぶつかり合うこと」も多々あったという。

 専門学校に通っていた女性は「半年ほどひきこもった時期もありましたが、今では準社員として働き、共用スペースも率先して掃除してくれるまでになった」という。

トラブルの仲裁や就労の相談も
“子どもを連れて帰れる実家”が夢

 賃貸期間の終了に伴い、最初のシェアハウスは閉鎖したが、「中央ろうきん若者応援ファンド」の助成を受けて今年4月、区内に5DKの新たなシェアハウスを開設した。

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シェアハウスの一室
光熱費込みの家賃は社会人が7万円、施設出身で安定収入のある準社会人は6万円、まだ収入が安定しない当事者は4万円。児童養護施設出身の当事者だった彼女は準社会人として、今度は支える側に回ってくれます。
 シェアハウスにはコーディネーターを配置し、「住人同士のトラブルの仲裁や就労の相談」に乗るなど家庭的な見守りをしている。さらに、月に1度はみんなで料理をする「食事会」を開き、気軽に悩みを相談できる雰囲気をつくる。

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シェアハウスの入居者たちで食卓を囲む

 働く意欲があることが入居の条件だが、それでも家賃を払えなくなることはある。そんな時は団体が相談に応じる。「資金の確保」と「活動の周知」を兼ねて、地域のイベントでは団体のオリジナルキャラクター・グッズの販売なども行っている。
相談したり頼りにできる大人が一人でも二人でもいれば、安心して社会に出ていける。そして、いつか家庭をもったら、実家のようにここへ子どもも連れて帰ってきてほしい。それが私たちの夢です。
 内田さん自身も「酒乱の父親による暴力がすさまじい家庭で育ち、18歳で家を出た」経験をもつ。
子どもたちの気持ちはわかりますとは言えませんが、わかろうとすることはできます。しかし、場合によっては専門的支援も必要になってきます。臨床心理士などのスタッフを常駐できるだけの財政基盤を築き、いずれは、当初は経済的に家賃負担が困難な若者でも受け入れられるようにしていきたいと思います。
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内田 朝代さん

※ 地域の民生委員が兼ねる児童委員の中でも、とくに児童に関することを専門的に担当する委員
 
 
NPO法人 すみれブーケ
2014年に設立。東京都世田谷区で児童養護施設や里親家庭を巣立った若者の自立支援の一環として、 安心して暮らすことができ、巣立ったあとも「帰る家」となる女性専用シェアハウスを運営。

☆現在、社会人・準社会人・当事者若者の女性入居者を募集しております。
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これからも児童養護施設や里親家庭を巣立った若者の自立支援の一環として 安心して住むことの出来るシェアハウスを運営してまいります!

【若者応援ファンド2018公募】

受付期間 2017年10月2日(月)〜27日(金)
詳しくは特設サイトをご覧ください
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ビッグイシュー・オンライン編集部より:本誌連動企画として、「中央ろうきん若者応援ファンド2017」の特集記事をお届けします。この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています。






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