「ホームレス状態の人の自立を支援したい」というビッグイシューの事業理念。
その事業理念や雑誌の内容に共感した人たちが、全国各地でサポーター団体を組織し、ボランティアとしてその地域の販売者のサポートをしている。

九州で唯一の販売者、中西さんを支えている「ビッグイシューくまもとチーム」もそんなサポーター団体のひとつ。
ビッグイシューくまもとチームの代表:中村徳佳さん(36)を訪ね、組織の経緯や活動内容、目指していくことなどをお伺いした。


 ※熊本の販売者、中西さんのインタビューはこちら

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Q:ビッグイシューの販売サポーターになろうと思ったきっかけは?

「ホームレスになるのは誰にでも起こり得ること」だと体感したから…だと思います。
私は新卒の時とある仕事に就いたのですが、残業が多かったりしてつらくなり、1年くらいで退職したんです。

そうしたら、元々資格を持っていた福祉業界で転職活動をする際に「資格はあるけど未経験の中途」扱いになってしまって。なかなか転職先が決まらない現実に、かなり焦ったことがあったんです。 そのときに、「ホームレスになるって、誰にでも起こり得ることなんだ」と身に迫る思いをしました。

そして「たとえホームレス状態になったとしても、再チャレンジしやすい世の中であってほしい」という気持ちが湧いてきたんです。

そう思って様々な支援活動をしているうちに、九州ホームレス支援団体連合会という支援のネットワークができ、「福岡でビッグイシューの販売をするらしい」ということが耳に入ってきました。それで熊本でもやろう、となったんです。

そのときの私は別のホームレス支援団体の理事の仕事がメインだったので、ビッグイシューくまもとにはいちボランティアとして関わっていただけなんですけど、前代表が辞めてからは、便宜上私が代表をしています。もしやりたい人がいたら、若い人に喜んで代表の座を譲りますよ!(笑)

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Q:ビッグイシューくまもとの、サポートの内容を教えてください

他のサポート組織では重要な活動として「仕入れ」(サポーター側から見た時の「卸し」)の業務があるのですが、私たちの場合はサポートの人数も少なく、仕入れのサポートは厳しいため、常駐スタッフのいる「社会福祉法人グリーンコープ」さんにお願いしています。

それ以外の社会人や学生ボランティアからなる活動としては、仕入れ先からの売上回収とビッグイシュー日本への入金や、SNSでの広報、イベント出張販売の企画や調整・準備、勉強会の開催、他の団体とのネットワークづくりなどを行っています。

月1回のミーティングは、中西さんも交えてみんなで意見交換します。
活動としては月に2回くらいのペースです。

Q:苦労する点はありますか?

ボランティアが実質4人で運営しているということもあり、何かと人手が足りなくて…よく言えば常に「やりがいがある」(苦笑)。
学生ボランティアが多いので、4年生になると就職活動で忙しくなって卒業していくので…。その人手不足以外で言うと、大きくふたつあります。

ひとつには、販売者の確保。
もともと熊本市は、当時の政令都市を除いた市の中では1、2を争う、路上生活者の多い市だったので、これをなんとかしようと2008年にボランティア有志が集まり、販売希望者のサポートを開始したんです。
でも、心ない方からの販売者への暴言、また販売者の体調不良などから、販売を辞退する販売者が続出してしまい、いったん3カ月ほどで活動を休止しました。

その後も他団体の炊き出しなどで路上生活の方などにお声掛けしてスカウトするのですが、やっと決まった、と思っても、本人が「ビッグイシューの販売を始める」と友人に言ったら「そんなもの売るのー?」みたいな冷たい言葉が返ってきて、思い直して辞退されることもあり、販売者の確保がいちばん大変なことですね。
活動休止後、3年後にようやく販売者が2人集まり活動を再開しました。

現在熊本市には23人のホームレス状態の方がいることはわかっていますが、販売者のなり手がなかなかいないということに苦労しています。


ふたつめは、「サポーター組織は販売だけをサポートするのではない」ということです。

実際に販売のサポートをしてみてわかったのですが、「仕入れ」だけでは支援としては足りないんですね。販売者の中には金銭管理が苦手な方も多いんです。「だいぶ売れたはず」と私たちが思っていても、販売者がほとんど使ってしまっていて、次の号を仕入れるお金が足りない…などの事態もちょくちょくありました。

現在の販売者の中西さんは経理出身ということもあり、そういった心配はまったくないんですが、これまでの経験では販売以外にも、生活や医療の分野まで支援や連携が必要なシーンがあるので、さまざまなジャンルの支援組織とのつながりづくりが必要だな、と感じます。

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「私は経理出身ですから、仕入れに必要なお金はきちんとわけてますもんね」と穏やかに話す中西さん(左)。「はい、僕よりきちんとしてるくらい」と中村さん(右)。

Q:どんなことにやりがいを感じますか?

熊本で長年、「様々な支援組織とつながる」ということを心がけてきたので、2016年の熊本地震のときにも「よか隊ネット」ともすみやかに連携が取れましたし、その活動をビッグイシュー日本にも伝えることができ、記事となって多くの人に知っていただくことができました。(292号の「ビッグイシュー・アイ」に掲載)

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活動をずっと続けてきたからこそ、全国の他の団体の参考になりそうな情報を発信する側として関われた、ということはとてもうれしかったです。

Q:これからやりたいことはありますか?

ずっと思っているのは「雨の日対策」ですね。路上販売であるビッグイシューは、雨の日だと販売ができないので、「雨の日の販売場所」をどうにかしたいなと思います。以前、ある地下の場所で販売させていただいたことがあったのですが、当時の販売者さんの「においが気になる」と苦情を受けてしまって。

現在の販売者の中西さんはきちんと清潔にされているんですが、雨の日でも安定できる場所探しを引き続きしたいですね。

あとは勉強会のように真面目な会だけでなく、「バーベキュー大会」みたいに、楽しいイベントを開いてビッグイシューのことを知ってもらえるきっかけを増やしていきたいなと思っています。 ちょっと前は人に来てほしいお寺が主催の「寺フェス」に参加して、ビッグイシューを販売させてもらったりもしました。

Q:ビッグイシューのサポーター活動に向いている人ってどんな人ですか?

さまざまなことが起こり、さまざまな人とつながる機会が多いので、何にでも興味を持てる人が向いているんじゃないかな、と思います。

あとはちょっと娯楽的なことが足りないなと思うので、音楽やアニメなど、何でもいいんですがご自身の興味のあるジャンルで活躍してもらえればいいのかなと。テーマは何でもいいので、人が集まるイベントでビッグイシューを紹介していけたらいいなと思っています。いろんなジャンルの活動を通して、もっと多くの人たちに、ビッグイシューやホームレス問題を身近に感じてもらえたらなあと思います。
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「中村さんは熱い、熱すぎることもあるんだよねえ…」としみじみ話す販売者の中西さん(左)と苦笑する中村さん(右)。

親子ほども年の差がある二人ですが、「ビッグイシューの販売を通して、<再チャレンジ>しやすい社会をつくりたい」という気持ちはひとつのように見えたインタビューでした。

ビッグイシューくまもとチームでボランティアをしてみませんか

販売者の中西さんや、販売希望者を熊本で支えてみませんか。
無理のない範囲で大丈夫です。まずはお気軽にご連絡ください。
E-mail: bigissue.kuma@gmail.com
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ビッグイシューのサポーター組織でホームレス状態の人をサポートしませんか

決して多い金額ではないかもしれませんが、地域のホームレス状態の方にコンスタントに収入を提供し、地域の一員として迎える活動です。あなたもサポート活動をしてみませんか?

ご興味のある方は下記の「全国のサポーター」からお住まいの地域のサポーター組織を探してご参加いただくか、サポート団体の立ち上げをご検討ください。

https://bigissue.jp/sell/supporter/

参考)札幌の事例
主婦やサラリーマン、学生、社長などがボランティアで支える「ビッグイシューさっぽろ」の10年








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ビッグイシューについて

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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

ビッグイシューはホームレスの人々の「救済」ではなく、「仕事」を提供し自立を応援するビジネスです。1冊350円の雑誌を売ると半分以上の180円が彼らの収入となります。