地域の人と人をつなぐ中間支援の拠点、みのお市民活動センターの取り組み

市民と行政・企業、行政と企業などの間に立ち、活動や連携を支援する”中間支援“の機能を持った施設は全国にある。大阪府箕面市にある、みのお市民活動センター(以下、同センター)もその一つだ。
箕面市より指定管理者として指定を受け同センターの運営をしている「特定非営利活動法人市民活動フォーラムみのお」(以下、同団体)スタッフの松木 亮さんより、同センターの取り組みや、雑誌『ビッグイシュー日本版』との関わりについてお話を伺った。


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写真提供:みのお市民活動センター

人と人をつなげる、市民活動の拠点。

同団体の設立について、「箕面市の市民活動を応援する拠点が必要となり、市民の有志団体が行政とともに仕組みを作っていったのが始まりです。」と松木さん。

同センターでは、NPOのスキルアップ講座や社会課題を啓発するイベント、情報発信、NPO運営相談、支援金事務局、調査、支援者との仲介・マッチングなどを行なっている。
「市民や団体さんには、例えば『ボランテイアをしたい』という人もいれば、『誰かに活動を手伝ってほしい』という団体もありますよね。私たちだけでは解決できないことも、そういう需要と供給をつないだり、関連する活動団体さんを紹介したりしています。」

そんな同センターには、『地域のために活動をしたい』というさまざまな相談や情報が日々寄せられ、人と人をつなげる役割を担っている。

「障害のある人が通う作業所の農園で果物を栽培していたのですが、そこで収穫した果物が予想以上に豊作になった年があって。なにか有効に使えないかという相談がありました。そこで、地域の洋菓子店に相談させていただいて。その農園の果物を使った、新しいメニューを開発していただいたこともありました。」

他にも、アパレルショップ内のスペースを借りて、福祉施設に通う人たちのアート作品の展示会をするなど、地域のなかの新しいつながりを生みだす活動をサポートしているそう。

どんな人も「ここは私たちの場所」と思える活動を広げていきたい

同センターに相談を寄せるのは、すでに活動に携わっている人や、これから関わりたいと考えている人がほとんど。しかし、必ずしも市民活動に関心の高い人ばかりではないはず。松木さんはこう語る。

「市民活動をしようと思ってセンターに来たつもりはない人も、ここに立ち寄ると、何かしらの地域情報や活動に触れられる。いろんな人が関われる余地がある、そういう場づくりが大事かなと思っています。」

同センターは商業施設「みのおキューズモール」に設置されていることから、買い物や映画館に訪れた人が休憩に立ち寄る場所でもあり、待ち合わせ場所としても使われている。
そこで、家族や子どもも気軽に参加できるワークショップを実施することもある。
たとえば、共有スペースに設置されている古くなった椅子の座面の張り替え作業を利用者とともに行うという企画が生まれた。張り替える生地は、地域のカーテン屋さんに提供いただいた生地を使用したそう。

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「参加してくれたお子さんが、『これ、僕が作ったんやで』と、嬉しそうに家族に話す場面もありました。公共施設というと、とっつきにくい印象があるかもしれないですが、そもそもみんなのものですし、それぞれの人が『ここは私たちの場所だ』と思えるように、いろんな人に参加してもらいたいですね。『自分達の場なのだから、自分達で良くしていける』という体験から、市民活動の幅も広がっていくのではないかなと思います。」

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通りぬけるだけだった場所に、“関わる余地”を

 また、“公共空間をもっと面白く活用したい“という声から通りかがりの人も参加できるよう『公共的空間活用プロジェクト』なる企画を立ち上げ、運営もしている。

みのおキューズモールのエリアをつなぐ連絡通路となっている、かやのさんぺい橋を舞台に、通りがかりの市民が自由に絵を描けるようにする『おえかきボード社会実験』や、橋のスペースにバーカウンターを設置し市民に1日バーテンダーを体験してもらう『Bar Bridge』も、市民と公共空間を近づける企画の一つだ。『Bar Bridge』は、“暗い”、“寂しい”と言われがちだった橋に交流と居場所を創出しようと生まれた企画。地域のお店やNPO関係者も1日バーテンダーとなり、好きな分野や専門知識を活かして市民と語りあう場になっていたという。

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写真提供:みのお市民活動センター

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写真提供:みのお市民活動センター

「ただ通り過ぎるだけだった空間も、なにかしら人が関わり、人がつながる余地をつくれたのではないかと思います。」と、松木さんは語る。

一人ひとりの何気ない声が、人が関わる余地を広げていく

同センター入り口付近の明るく広いスペースには、雑誌『ビッグイシュー日本版』の最新号やバックナンバーが手に取りやすいよう並べられている。

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写真提供:みのお市民活動センター

松木さん「ここでビッグイシューが読めるようになったのは10年以上前からで、市民の方が寄贈してくださったことがきっかけでした。創刊してすぐから集めていたそうで、並べてみると“ビッグイシューコーナー”ができるくらい、たくさんいただいたんです。

こちらに立ち寄った人たちも自由に読めるようにしてはどうかということで、閲覧コーナーができました。2019年になって、他の市民の方から、「委託販売ができるらしいから、ここでもビッグイシューを売ったらいいのに」と言っていただいたんです。それが、委託販売を始めるきっかけでした。」

ビッグイシューが、市民が社会課題に関心をもつきっかけになれば、と語る松木さん。雑誌『ビッグイシュー日本版』を手に取る市民の反応についても伺ってみた。

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「雑誌の前で止まってみてくださる方は多いですね。購入してくださる方とは、取り上げられてる社会課題について会話が生まれます。そうした会話をきっかけにして『実はこういう活動にも興味があるんです』とさらに深い話ができることもありますね。実際、市民活動立ち上げの相談でも、『このテーマだったら、ビッグイシューに事例が載っていたな』と誌面から事例紹介をすることもあります。」

「市民活動へ関わる入口は、なんでもいいと思っていて。センターでの待ち合わせでも自習でもいいし、企画に参加してみて、まずは“楽しい”と思えるだけでもいいと思います。でもその隣にある、社会や地域の課題との出会いにつながればいいなと思います。」

ビッグイシューの存在は、市民活動への理解や関心を深めるツールになっているようだ。

取材・記事作成協力:屋富祖ひかる


みのお市民活動センター
住所:大阪府箕面市坊島4−5−20
みのおキューズモールWEST1−2F
TEL&FAX:072720-3386
URL: http://www.shimink.jp/


ビッグイシューの委託販売制度について