新緑を眺めると、さわやかな気持ちになり、心が落ち着く人が多いのはなぜなのか、考えてみたことはあるだろうか。樹木と寄り添い合いながら生きてきた歴史の中で、生物として取るべき調和へのアンテナが本能として刻まれているのかもしれない。

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『ビッグイシュー日本版』335号の特集「樹木と対話」をテーマに、樹木と向き合う人々のインタビューを読むと、そんな気持ちにさせられる。

木の下の雑草を刈ることで、木が弱る?

二階堂太郎さん(植木職人、樹木医、森林インストラクター)は、国立科学博物館筑波実験植物園で、時に高さ20m もの樹に登りながら植物の世話をしている。

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二階堂さんは常日頃「樹木と対話をしている」と言うが、それを表すエピソードとして植栽管理としての雑草の除草作業を挙げる。
会社勤務時代に海に近い植栽で、木の下に生えていた雑草を通常通りに除草したところ、木が弱ったことに気づいたのだ。

素人が考えると、木の下に生えている雑草など、木の健康には関係がなさそうである。だがそこには驚くべき樹木と雑草の関係があるのだという。その関係は本誌335号に詳しいが、二階堂さんは「雑草は不要というのは人間の思い込みにすぎない」と語る。
時々でいいので、公園に行った時に樹に触ったり、葉の匂いを嗅いでみたり、幹に抱きついたりして、よく観察してみることでしょうか。そして、どうやって根から水が上がるんだろう、どうしたらこの樹は元気になるんだろうと想像してみてください。
と語る二階堂さん。彼の樹木との対話のエピソードの数々は、本誌にてご覧いただければと思う。


にかいどう・たろう
1970 年、新潟県生まれ。山形大学農学部林学科修士課程修了。新潟市の造園会社に勤務後、05 年より国立科学博物館筑波実験植物園技能補佐員。樹木医。森林インストラクター。日本森林学会の定期刊行物『森林科学』にてコラム「森の休憩室Ⅱ 樹とともに」を連載中。著書に『植物園で樹に登る』(築地書館)。

木の生き方を知らない「剪定」で木がバランスを崩す?

二階堂さんは樹木を観察してみてほしいと言うが、現代の多くの人々には、樹木とそもそもなじみが少ない。我々は薪や炭をエネルギーにし、樹木の名前を覚える必要のあった人々とは異なり、樹木と距離のある暮らしをしている。

そこで樹木の代弁者のような石井誠治さん(樹木医、森林インストラクター)に、そんな人々にとってもなじみやすい、大切な葉と根といった樹木の観察のポイントなどを本誌で解説していただいた。

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石井さんは、枝葉末節という言葉とは真逆に「一枚一枚の葉が生命維持装置で、その集積の結果が木全体の意思」、つまり葉っぱがとても大切なのだと言う。
それゆえに、「木の生き方を知らない人間による、むやみな樹木の剪定」は、木がバランスを崩してしまうと語る。

いしい・せいじ
1951 年、東京都生まれ。樹木医、森林インストラクター、環境カウンセラー。樹木診断調査、園芸相談、環境教育活動などで活躍。軽妙な語りの野外講座が好評。著書に『樹木ハカセになろう』(岩波ジュニア新書)、『大人の樹木学』(洋泉社新書)、『木を知る・木に学ぶ』(ヤマケイ新書)、『都会の木の花図鑑 新装版』(八坂書房)、『わたしは樹木のお医者さん』(くもん出版)など多数。


「新緑を見ると心が落ち着く」という本能に従って、この緑の季節に樹木と対話するヒントを見つけてみませんか。

ビッグイシュー335号ではこのほかにも、
・リレーインタビュー。私の分岐点:女優 小林聡美さん 
・スペシャルインタビュー:ポール・マッカートニー
・国際:どうなる?自然・先住民族の権利。エクアドル「21世紀の社会主義」の行方
・ワンダフルライフ:数学の楽しさ伝えたくて「数学のお兄さん」に
・ホームレス人生相談:50代男性会社員からの「感情をもう少しコントロールしたいです」の相談

など盛りだくさんです。
ぜひ路上にてお求めください。

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THE BIG ISSUE JAPAN266号
木の都市へ― ウッドファーストの世界
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https://www.bigissue.jp/backnumber/266/


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THE BIG ISSUE JAPAN266号
スペシャルインタビュー リンゴ・スター
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スペシャル企画 ザ・ビートルズ
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