3つの若者支援団体の代表が、若者が働き、自立していくためには何が必要なのか、活動から見えてきたことについて語った。

彼らは2015年に始まり、4年目に入った助成事業「中央ろうきん若者応援ファンド」の助成先。助成2年目を迎えた2団体と、3年目の1団体だ。

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左から内田 朝代さん、桑野 秀男さん、永岡 鉄平さん

若者のシェアハウス運営
NPO法人 若者の自立支援すみれブーケ理事長 内田 朝代さん

児童養護施設を出た若者のシェアハウスを運営しています。東京都世田谷区内の3LDKから5DKの建物に移った昨年は助成金で設備を整え、2年目の今年は、発達障害の専門家と精神科医に有償ボランティアでメンタルサポートをしてもらっています。

入居の家賃は当事者、準社会人、社会人と上がっていきます。最初に入居した女性は半年ほどひきこもっていた時期を乗り越え、5年目に入りました。就労意識が高まり、生活も安定してきたことから、今年4月から「社会人」として後輩二人をサポートしています。

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シェアハウスの入居者たちで食卓を囲む

活動の詳細:蓄えも保証人もないまま社会に巣立つ児童養護施設・里親家庭出身者を「女性専用のシェアハウス」でサポート

学童保育の支援員
NPO法人 アフタースクール代表理事 桑野 秀男さん

千葉県船橋市で02年から民間学童保育を運営しています。夜7時までの公設学童保育より長く、夜8時半(最長10時)まで開いています。時間指定できる送迎が20回付いて月2万8000円の保育料です。

高卒以上で2年の実務経験を積み、都道府県の講習を24時間受ければ取得できる、国家資格「放課後児童支援員」が15年度にできました。そこで、助成金で“働けない若者”をこの支援員の研修生として受け入れ、昨年は15人に20日の研修で7万円、今年は10人に5日の研修で3万円の給料を支給。さらに2年間の実務経験を積むための実習生として、昨年は4人、今年は2人を新たに受け入れ、最低賃金868円の仕事になっています。
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学童保育の現場で子どもたちと触れ合う若者

活動の詳細:「学童保育の人手不足」×「ニートの若者の就労支援」=ニートの若者に「放課後児童支援員」のトライアル研修

企業インターンと就職斡旋
NPO法人 フェアスタートサポート代表理事 永岡 鉄平さん

神奈川県を拠点とし、児童養護施設や里親家庭、定時制高校の若者に、職業適性検査や会社見学、インターンシップの機会提供や就職後のアフターフォロー、就職の斡旋をしています。主にNPOで活動していますが、就職斡旋は株式会社で行います。

助成1・2年目は東京・神奈川を中心に事業展開し、3年目の今年は、群馬・栃木・茨城・千葉・埼玉・静岡の一部まで拡大。施設を出た若者が最初の就職でつまずいてやめてしまうことがワーキングプアに陥るきっかけにもなるので、この“もったいない離職”を防ぐために、高校生から中学生、小学校高学年まで広げたインターンシップにも力を入れています。
若者たちと企業訪問
若者たちとの企業訪問


失敗できる職業体験。企業と子どもたちの接点づくり
人にしかできない仕事の確立

内田 シェアハウスに来ている女性たちは働いて辞めてと、失敗しています。でも、失敗は将来の糧にもできるので、うちにいる間にたくさん経験してもらいたい。施設にいる小中学・高校生の間にいろいろな仕事を体験できたら、自分の将来についての見方も変わっていくと思います。やりたいことも見つけやすいんじゃないかな。自分で選択して、失敗して、道を拓いて、前に進むことこそが“自立”なんじゃないでしょうか。

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シェアハウスの一室


永岡 施設の職員さんも、それぞれの子どもたちに向く仕事を考えていますが、情報や企業とのつながりがなくて踏み込めない。高校3年生の7月初めに求人情報が解禁されて夏休み1ヵ月で選べというのでは、会社見学も実際には1、2社しか行けません。

その前に地域の企業と子どもたちの接点をつくろうと、群馬では中小企業家同友会と施設職員さんの意見交換会を実施。旅館やホテルを清掃する夏休みのアルバイトも提供してもらいました。こうして出合った企業に卒業後、双方が納得して就職するのもいいと思うんです。


桑野 今の景気がいつまで続くかという不安もあります。不景気の風当たりを真っ先に受けるのはフリーターの若者たち。印象的なのは、研修に来ている若者が学童保育の子たちに、いじめや不登校の経験を話すと、非常に効果があるんです。AIが発達して人が働ける職場が減らないうちに、人にしかできない仕事を確立したいと考えています。

研修中の若者と学童の子ども達
研修中の若者と学童の子ども達


日本はGDP世界3位でありながら、7人に1人が貧困という“見えにくい貧困”の国。35人学級で、前進志向をもつ子を育てるのは無理がある。少子化の今だからこそ10人・20人学級にして、互いをぶつけ合い、自分を主張できる骨太の人間を育ててほしいものです。

大人が人生を語る
夏休み、地域で就労体験、企業主導型学童保育


永岡 社会が人を育てる意識も薄れてきたような気がします。僕たちは地域の中小企業経営者に、定時制高校の子どもたちに向けて主に仕事について話してもらっていたのですが、あまり聞かない子もいたんです。それで、今年から趣向を変え、ご自分の人生について語ってもらったら熱心に聞くんです。彼らの中に「生き方の参考にしたい」というニーズがあるのかもしれません。

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定時制高校でのキャリア授業


内田 子どもたちが地域のおじちゃん・おばちゃんと話せる茶話会をするのもいいですね。施設の小中高生にアンケートを取って、いろいろな企業や商店に夏休みの何日かだけ就労体験する取り組みをしているところもあります。互いが互いに興味をもてる場づくり。これこそが“包括”ケアなのかなと思います。

一方で、働く女性の地位はいまだに低く、子育てと仕事の両立は過酷です。女性が生きやすいように、その地位を向上させるサポートもしていきたいですね。


桑野 16年度から始まった 企業主導型保育事業は、運営費・整備費を国が助成し、保育を企業の従業員だけでなく地域にも開放する仕組みですね。以前、千葉県の工場で学童保育に応用しようとしたこともありましたが、東日本大震災で計画は中止に。全国の企業にも呼びかけようと、現在、子育て支援専門の中間支援団体の立ち上げを進めているところです。併せて企業主導型の介護施設もつくれば、豊かな人材が集まりそうです。


安心して人とぶつかり合える場
意欲ある企業をサイトに掲載、若者が新しい仕事をつくる


内田 家庭的なサポートと専門的なサポートができる常勤スタッフの確保が、私たちの課題です。入居する若者が働けなくなった時は、家賃免除と分割払いの2通りの方法を用意しています。一人じゃない安心感の中で人とぶつかり合えるシェアハウスのような場所が、どんな若者にも必要なのかもしれません。


永岡 若者が主体性と納得感をもって、自分なりの“はたらく”を実現できるように、これからも、企業の会社見学やインターンシップの情報を可視化していきます。同時に、進路決定までに地域のことを深く知る機会も提供したい。そのためのインフラとして「18スタート」というウェブサイトを運営しています。全国の「若者を育てたい」という意欲のある1000~2000社を掲載することが目標です。


桑野 小学生が約643万人もいるのに、学童保育の利用者は約117万人。まったく足りていないし、公設の学童では学習指導が不可といった制約もあります。だから、研修生には、アフタースクールで気づいたことをもとに、学童保育に限らず、新しい仕事をつくって起業すればいいと話しています。若者がそんなふうに参入できれば、日本の社会も、もっと風通しがよくなるのではないでしょうか。


 
NPO法人 若者の自立支援すみれブーケ
14年に設立。東京都世田谷区で児童養護施設や里親家庭を巣立った若者の自立支援の一環として、安心して暮らすことができ、巣立った後も「帰る家」となる女性専用シェアハウスを運営。
Facebookページ

NPO法人 アフタースクール
地域の声によって開かれた会員制学童保育を運営。地域の空きスペースを活用し、安価で質の高い保育を提供。電話1本の緊急保育など、新たな社会実験も試みている。
 http://af-school.jp/

NPO法人 フェアスタートサポート
11年に株式会社、13年にNPOを設立。児童養護施設や里親家庭出身者、定時制高校等の生徒など、家庭環境の問題により親に頼れない若者の就労支援を行う。
http://fair-start.co.jp/

【社会貢献基金について】

中央ろうきん社会貢献基金
ろうきんは、はたらく人のための非営利・協同組織の福祉金融機関。「中央ろうきん若者応援ファンド」は、家庭環境や経済状況、病気や障害などの社会的不利・困難を抱え、不安定な就労や無業の状態にある若者の自立支援に取り組む団体を応援する助成制度です(2014 年10 月創設)。

若者応援ファンド2019公募
受付期間 2018年10月1日(月)〜31日(水)
☞詳しくは特設サイトをご覧ください


ビッグイシュー・オンライン編集部より:本誌連動企画として、「中央ろうきん若者応援ファンド2018」の特集記事をお届けします。この記事は「中央ろうきん若者応援ファンド」の提供でお送りしています。






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ビッグイシューは1991年ロンドンで生まれ、日本では2003年9月に創刊したストリートペーパーです。

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