東京都大田区で、子どもの学習支援と居場所づくりを行ってきたNPO法人ユースコミュニティー。この活動を、就労に困難をかかえる若者のステップアップに結びつける新たなプログラムについて、代表理事の濱住邦彦さんに聞いた。

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濱住 邦彦さん

市民ボランティアが勉強を教え子どもたちに居場所を提供

ユースコミュニティー代表理事を務める濱住邦彦さんは、建設業の労働組合で活動していた2011年、東日本大震災の被災地で支援を始めるにあたって現地を訪れた。そこでNPOの活躍を目の当たりにし、かねてより若者の就労支援を考えていたことから、地元の東京都大田区に戻って、キャリアカウンセラーをメンバーとするNPO「フェイス・コミュニティー」を設立した。

大田区は町工場が多いことでも有名だが、「グローバル化の影響で経営の苦しいところも少なくない」。そこで12年には「ユースコミュニティー」を立ち上げ、2年限定の大田区の助成を活用し、困難をかかえている子どもの学習支援と居場所づくりを始めた。

 「現在は、親子カフェや高齢者施設の会議室などの4ヵ所を空き時間に借りて、小学4年生から高校3年生まで80~90人に、大学生などの市民ボランティアが勉強を教えています」

必要な経費は、区の生活保護世帯に対する学習支援の助成金でまかない、16年からは区の委託事業として、新たに4教室で約160人の生徒を教えている。

 「子どもたちは年齢も学校もばらばらなので、イエナプラン教育(※)に基づくアイスブレイクゲームで緊張をほぐしたり、外国籍の子も多いので、区内の支援団体や日本語学校とも連携しています」

※ドイツで始まり、オランダで広まったオルタナティブ教育。子ども一人ひとりの主体性を尊重する。

活動で人生が変わった20代男性、この事例をヒントにプログラム開発

ボランティアの中に「塾講師の経験はあるが、精神疾患で休職中」という20代後半の男性もいた。「子どもは肩書きで人を見ない。この活動に参加していなかったら人生違っていた」と話す彼は、復職して結婚した今も週に一度は顔を出すという。

 「この事例がヒントとなって、中央ろうきん若者応援ファンドに応募。4月から始めたプログラムは、“働きたいけどすぐには就労の難しい若者が子どもたちへの学習支援を通して、自己肯定感や自信を取り戻し就労に向けたステップを踏む”というもので、20代後半から30代後半までの若者が延べ36人参加しています」

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若者が子どもの学習支援に携わる

参加者は月に一度の研修講座を6ヵ月間受けながら、教室ボランティアとして活動できる。研修講座の内容は、ボランティアの心得をまとめたマニュアルを読んだ上で、不登校やひきこもりなどの子どもたちの現状を学び、感想を語り合うというものだ。子どもたちの置かれた状況を学びながら若者自身も変化していくという。プログラム終了後も学習支援ボランティアとしてかかわることができる。

教室には地域差があり、居場所的な場所もあれば、進学塾のような場所もある。「勉強を教えたい気持ちが強い若者もいれば、教える自信はないけど子どもとかかわりたい若者もいて、それぞれに合った教室をマッチングします。困難をかかえた若者は困難をかかえた子どもの気持ちを専門家よりも理解できるので、不登校の子どもと接する時などは相談し、アドバイスをもらうようにしています」

それぞれの教室では親睦を深めるイベントや合宿も開催している。

「元気になった若者がずっと仲間としてかかわってくれるのが理想です。目指すのは、子どもも大人も一緒になって勉強を楽しむ“昭和の塾”。貧困が引き起こす教育格差などの課題は市民や行政が一体となって、地域で解決していくべきです。その取り組みが若者のステップアップにもつながるのであれば、これ以上心強いことはありません」


NPO法人 ユースコミュニティー
東京都大田区で、小学生・中学生・高校生を対象にした子どもの居場所づくり(自主事業)と無料の学習支援(委託事業)に取り組む。子どもたちがありのままでいられる「場」を地域につくり、子どもたちの成長・育成・学びを地域の支援者の力で支えている。
https://youthcommunity.jimdo.com/
※ボランティアさん募集中

中央ろうきん社会貢献基金

 ろうきんは、はたらく人のための非営利・協同組織の福祉金融機関。「中央ろうきん若者応援ファンド」は、家庭環境や経済状況、病気や障害などの社会的不利・困難を抱え、不安定な就労や無業の状態にある若者の自立支援に取り組む団体を応援する助成制度です。
2018年は、10団体に総額1,417万円を助成しています。
http://chuo.rokin.com/







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