マニラ首都圏だけでも万単位の子どもや若者が路上で暮らすフィリピン。現地のNGOと協力して彼らの自立を助ける支援をしているアジア・コミュニティ・センター21。その活動を聞いた。


スラムから路上に出て稼ぐ子や親から逃れ孤独に暮らす子たち

 アジア・コミュニティ・センター21(以下ACC21)は募金型公益信託(※)「アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)」の事務局として、2005年に設立された。代表理事の伊藤道雄さんは財団やNGOをはじめとして、長年、国際協力にかかわってきた経験から、アジアの国々を何度も訪れてきた。

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伊藤道雄さん  辻本紀子さん 

「中でも、フィリピンには100回近く行っています。初めて訪問したのは1977年。夜10時頃、マニラ湾の近くで7~12歳くらいのストリートチルドレン4、5人に囲まれて、お金をせがまれ、可哀そうに思って渡すと、もっとくれとポケットにまで手を突っ込まれました。腕をつかむと折れそうに細くて、にこりともせず、地獄の底を見てきたような冷たい目でにらみ返されました」

 現在もマニラ首都圏の路上には「虐待する親から逃れ、子どもだけで生活するグループ」や「スラムから日中だけ稼ぎにくる子どもたち」「田舎から出てきて家族と路上で暮らす子どもたち」が万単位でいるが、しっかりした政府の統計はない。

 そこでACC21は現地のNGO「チャイルドホープ」と協力して、路上で暮らす16~24歳の若者年間30人がライフスキルトレーニングやマニラ市人材開発センターでの職業訓練を受けられるよう講師への謝金をはじめ、センターまでの交通費や食事代などを応援している。

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職業技術訓練(理容コース)の様子 

人を信頼、感情をコントロール 履歴書にも堂々と書ける修了証

「若者たちはまず、ライフスキルとして人生の目標を立てたり、お金の管理について学ぶ。その後、ホテルやレストランのサービス業や理容師など10以上の選択肢から職種を選んで40日間の研修を受け、1ヵ月間の職業体験をします」と広報の辻本紀子さん。研修は公的な機関が行うので、履歴書にも経歴として書ける。「受講生の一人、18歳のジェイ君は路上で父親や異母兄弟と暮らしていましたが、職業体験のホテルのレストランでの働きが高く評価されました。勤勉さや人を信頼することを学んだと彼自身も話しています。血気盛んで喧嘩っ早かった20歳のアンジェリカさんも、ライフスキルトレーニングや職業訓練を受けるうちに、自分の感情をコントロールできるようになり、今ではにこやかに働いています」(年齢は受講当時)

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職業訓練中のアンジェリカさん(左)

 また、シングルで子育て中などの女性対象に、起業支援も始めた。20代前半のアイリーンさんとマイラさんはチャイルドホープの基金から一人5000ペソ(約1万2000円)を借りて、それぞれ手作り弁当と雑貨の露天商を始め、1%の利息をつけて完済。さらに大きな額を借りて事業を広げる計画だという。

 さらに19年度は「日本とフィリピンの大学生が、路上で暮らす若者と語り合う場を設けること」を伊藤さんらは計画している。

「人間の尊厳を失った生活を強いられた若者たちが社会の一員として参加し、納税し誇りを持って生きられるようにしたい。世界のストリートチルドレンは1億人とも言われますが、こうした子どもや若者を放っておくことは私たち人間の恥だし社会の大きな損失。SDGsの基本理念である『誰一人取り残さない』に基づき、30年までにストリートチルドレンをゼロにする。そのために、フィリピンのNGOや行政、経済界、大学の関係者にも協働を呼びかけています」

 活動は一部助成金のほか、寄付に依っているため、ACC21の掲げる目標の周知を通じて、広く協力・支援を訴えている。

※ 委託者が寄付金を信託銀行などの受託者に信託し、運用益または元本を公益活動に充てる仕組み。

クラウドファンディングにご協力ください

「ストリートチルドレンをゼロにしたい! フィリピンの路上で暮らす若者に雇用と未来を」(2019年5月30日まで)
https://camp-fire.jp/projects/view/138841

郵便振替、ゆうちょ銀行へのお振込みでも受付中。
00160-6-718320
特活)アジア・コミュニティ・センター21

認定NPO法人 アジア・コミュニティ・センター21(ACC21)
アジアの現地NGOとの幅広いネットワークを基盤に、アジアの貧困削減の実現に向けて活動する国際協力NGO。寄付・賛助会員随時募集中(詳細はHP)。
http://www.acc21.org






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