2018年6月の大阪北部地震では17万戸停電し2時間半で復旧したが、9月6日の北海道胆振東部地震では約295万戸が停電、全ての停電が解消したのは10月4日だという。また、災害ではなくともベネズエラのように国土全体が長期間たびたび停電ということも起こっている。
「電気は使えて当たり前」の生活をしているとなかなか意識しづらいが、いったん停電となるとできないことのあまりの多さに直面し愕然とする。
家の中では
- エアコンが使えなくなる
- 冷凍庫・冷蔵庫のものが腐る
- 通信手段が絶たれる
- 洗濯ができない
- 炊飯器や電子レンジが使えない
- 夜間に灯りがない
- オール電化の家などでは、水道・トイレが使えない
家の外では
- エレベーターが使えない
- オートロックが動かない
- 買い物ができない
- 信号が機能しない
- 医療機器がストップする
といったことが挙げられる。
これらのことを、「天災だから仕方がない」と受け止める人がほとんどだが、未曾有の大災害であった3・11をきっかけに、「いつか必ず来る災害」に備えようと地域ぐるみで奮闘している人たちがいる。4月15日発売の『ビッグイシュー日本版』の特集は「市民発電所 都市・里・山の試み」。地域の特性に合わせた、3つの市民発電の現場を訪ねる。
東京・多摩電力&たまエンパワー「“買電”から自分で電気を作って使う“自家消費”の時代へ」
3・11の後、いてもたってもいられず東京・多摩市を中心に13の太陽光発電所を建設した「多摩電力」、そして再生可能エネルギーの自家消費を首都圏に広める「たまエンパワー」。この2つの事業を立ち上げてきた山川陽一さん(多摩エンパワー株式会社取締役社長)に再エネにかける思いやこれまでの取り組みについて話を聞く。

兵庫・非営利型株式会社 宝塚すみれ発電「農業と発電のコラボ、ソーラーシェアリング」
農業をやっている人、興味のある人には興奮してしまうであろう事例が、「宝塚すみれ発電」。
作物が育つ田畑の上に8基の太陽光発電システムが設置されている。設置事業者であり、これまで市内に6つの市民発電所をつくってきた「宝塚すみれ発電」の井上保子さんと、ソーラーシェアリングを導入した農家の古家義高さんに話を伺う。
田畑の上に太陽光発電があることで、真夏の厳しすぎる日光が和らぎ作物にも好影響、作業をする人間も日影ができて楽になるという。このシステムには非常用電源があり、地域の人が災害時などに利用できるという優れものだ。
長野・まめってぇ鬼無里(きなさ)「利用されなかった木材を薪にしてエネルギーに」
住民の高齢化や過疎化、森林の荒廃に悩む、長野の中山間地域・鬼無里。ここで薪ステーションや太陽光発電所を自分たちの手で立ち上げ、「エネルギーの地産地消」を目指すNPO法人「まめってぇ鬼無里」のみなさんにその取り組みを聞く。
薪は畑に植えられたまま放置され、利用される機会がなかったスギやカラマツといった" 支障木"。薪は地域のベーカリーやピザ屋の石釜や、キャンプ場、薪ストーブユーザーに販売しているという。

「儲かる」からではなく、防災・地域の暮らしのための発電
12年7月に始まった「固定価格買取制度」(FIT法)で、再生可能エネルギーは国の定める価格で電力会社に一定期間買い取らせる仕組みができていたが、その価格は下降傾向だ。10kW 以上の太陽光(税抜)の場合、12 年に40 円/ kW だった太陽光の売電価格は、16 年に24 円、19 年は14 円まで下落している。
かつては「儲かる」という動機で再エネに興味を持っていた人たちも、今その熱は冷めつつあるかもしれない。
しかし記事冒頭でお伝えしたように、災害はいつか必ず来る。現在東京でのエネルギー自給率は1.8%ほどだが、エネルギーの地産、省エネを真剣に考えることは、災害に対する最大の備えになるということを忘れてはならない。
『ビッグイシュー日本版』357号ではこのほかにも、
・リレーインタビュー。私の分岐点:ダンサー 森山開次さん
・スペシャルインタビュー:ティモシー・シャラメ
・国際:今や、日本は唯一の象牙販売国になろうとしている
・ホームレス人生相談:40代女性からの「夫は基本的には良い人なのですが、パソコンのトラブルが起こった時に『教えて』と聞くとすごく不機嫌になる」の相談
など盛りだくさんです。
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