ジリアン・アンダーソンの代表作と言えば、かの有名な世界的テレビシリーズ『Xファイル』。同作品でアンダーソンは、懐疑的でセクシーなFBI特別捜査官ダナ・スカリーを演じた。13年ぶりに6話からなる続編の制作が決まった今、アンダーソンが、アメリカとイギリスの2つの故郷をもつことや、ハリウッドのジェンダー格差について語る。
From : THE BIG ISSUE UK
Photo : Stephen Busken
翻訳:ビッグイシュー・オンライン編集部
「心優しい役柄を演じるチャンスはあまりないの。たいていは、タフで知的なボス役ばかり。所属はイギリスの情報機関だったり、ロンドン警視庁だったり、FBIだったりするけれどね」
超常現象を体験したこと? その質問は何千回もされたわ
「真実はそこにある」(※”THE TRUTH IS OUT THERE”。『Xファイル』でオープニングと本編の間に表示されるキャプション)かもしれないが、ジリアン・アンダーソンは興味がない。
1990年代に世界的ヒットとなり、最近続編の制作が決まったテレビシリーズ『Xファイル』で懐疑的でセクシーなFBI捜査官ダナ・スカリーを演じて有名になった彼女は、今でも超常現象の話題が持ち出されることが多いらしい。
「本当にしょっちゅうなのよ!」と彼女は言った。
「ついこのあいだも、私が発表したSF小説(※作家のジェフ・ロビンと共作の”A Vision of Fire”のこと)を読んだという人から、本に書かれたのと同じことが自分の身にも起こったので話をしたいと言われたの。ええ、人は時おり私に話を聞かせたくたまらなくなるようね」
−超常現象を経験したことはありますか?
「その質問は何千回もされたわ」とため息をつく。
「その質問に答えるたびに、話した内容が大げさにとりあげられて、タブロイド紙をかざるの。だから、その話はしないわ。申し訳ないけど、今回の記事の見出しにはできないわよ」
46歳になるアンダーソンは、イギリス系とアイルランド系の両親のもと、シカゴで生まれた。2歳のときにロンドン郊外のクラウチ・エンドに引っ越し、11歳で再び米国ミシガン州のグランド・ラピッズに移ったものの、彼女にとって英国は故郷といえる存在で、現在はロンドンに住んでいる。
「アメリカよりもずっとくつろげるの。いまだにロンドンでは色々なものが新鮮に感じられるし。生け垣のにおい、歴史や建築物、それにイギリス人の英語のアクセントもね」
ふだんはイギリス中流階級のアクセントで話す彼女だが、米国の中西部風にも話すことができる。大西洋をはさんで両国で活躍する人間には便利な特技だ。
−なぜ女優を志したのですか?
「私にできる唯一のことなの。だから続けているんでしょうね」と、さも当然のように答えた。
テレビでは、女優にも多くのチャンスがある
『Xファイル』はテレビドラマの概念を変えた。『Xファイル』がきっかけになって、現在のように練られた脚本に充実した演技陣によるドラマをテレビで見られるようになったのだ。また、テレビドラマからはタフな女性キャラクターが数多く生まれたが、スカリーはその先駆けといえる。
「私はとても幸運だったわ。そうしたテレビドラマの傾向はもう10年以上続いているもの。映画には現実的な女性キャラクターが登場することは稀だし、そうした状況はなかなか変わらない。でも、テレビでは女優にも多くのチャンスがあると思う」
その通りだろうが、そうしたチャンスの多くをつかんできたのがアンダーソン自身だ。『ハンニバル』では精神科医ベデリア・デュ・モーリア博士を演じ、『警視ステラ・ギブソン』では警視ギブソンとなって北アイルランドのベルファストを舞台に、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』に主演して一躍時の人となったジェイミー・ドーナン演じる連続殺人犯を追った。
ロンドンで舞台にも立つアンダーソンは、最近は『欲望という名の電車』でブランチ・デュボアを演じ、近いうちにブロードウェイでも公演したいと話す。だが、舞台に出る時間はあるだろうか?このインタビューの直後、F長らく噂になっていた『Xファイル』の続編制作をFOXが正式に発表した。アンダーソンと、以前も変わり者のFBI捜査官モルダー役を演じたデイヴィッド・ドゥカヴニー、クリエイターのクリス・カーターが参加して、今夏には撮影が始まる。
だが、インビューでのアンダーソンの口はかたかった。
「そうね、(『Xファイル』の続編について)今も話をしてはいるわ。皆、実現するのを願っているけれど、現時点ではまだ進行中の話だとしか言えないのよ。何も正式には決まっていないし。FOXのような巨大ネットワークとの交渉は普通のものとは違う。何か月もかかるから、この時点では私は何も言えないの」。
アカデミー受賞スピーチで女優パトリシア・アークエットが訴えた男優と女優の賃金の不平等
今年のアカデミー賞授賞式で、助演女優賞を得たパトリシア・アークエットが受賞スピーチで男女優間の出演料の平等を訴えた。
「そうね、今でもその問題は解決されていない。そうした不平等が横行しているし、具体的な話はできないけれど、つい最近も嫌な思いをしたわ」とアンダーソン。
9年間にわたる『Xファイル』の最初のテレビシリーズでは、アンダーソンの出演料は、モルダー捜査官役のデヴィッド・ドゥカヴニーよりもかなり少なく、08年に公開された劇場版の2作目『Xファイル:真実を求めて』で初めて同額となった。
インタビュー時に明言は避けたものの、アークエットのスピーチが話題にのぼったとき、アンダーソンが進行中だった『Xファイル』新シリーズの出演交渉のことを思い浮かべていたことは、想像に難くない。
「90年代のある時期にはこの問題はよく話題に上ったわ。そして00年代に入ってもまだこの話をしようとする人たちがいたんだけれど、当時の私は『昔の話でしょう。今は事情が違うのよ』って思っていた。でも、実際には過去の話なんかじゃないし、今でも同じことが起こっている」
新作映画ではSF映画に戻ってきたアンダーソン。Robot Overloadsは、ロボットが支配する世界で子どもたちの一団が救世主となるイギリス映画だ。アンダーソンはリーダー役の少年の母親を演じている。
「多くのSF映画の良作と同じように、世界の終りが予感されているのよ」
「心優しい役柄を演じるチャンスはあまりないの。たいていは、タフで知的なボス役ばかり。所属はイギリスの情報機関だったり、ロンドン警視庁だったり、FBIだったりするけれどね」
タクシーの運転手になれるかもね
アンダーソンはアンドリュー・デイビスが脚本を手がけるトルストイの『戦争と平和』のテレビシリーズを撮り終えたばかりだが、一番最近のテレビ出演はイギリスの人気自動車情報番組『トップギア』の有名人レースコーナーだ。
司会のジェレミー・クラークソンがプロデューサーを殴ったとして番組を降ろされて話題になった1週間前のことだ。この番組出演ではアンダーソン自身も無傷ではすまなかったという。
「3時間も運転しつづけたせいで、体のあちこちがまだ痛いのよ」と笑うアンダーソン。ギアチェンジを繰りかえしたせいで肩を痛め、しばらく温熱治療器、アイシング、鎮痛剤の世話になったと話す。
「肩の関節を痛めたせいで腕をちゃんと曲げられなかった。おかげで、レーストラックですごした3時間をしょっちゅう思い出していたけれど、でもその価値はあった。すごく楽しかったもの」
『トップギア』のファンとしては、クラークソンの降板は残念でしょうね?
「彼は単なる出演者じゃない。あの番組そのものといえる存在よ。残念なことになってしまったけれど、あの番組が人気なのは、カメラの前だろうとなかろうと彼が破天荒な人物だからなのよね」
アンダーソンは、路面が湿った天候での記録としては歴代ゲストのなかでも最速のラップタイムを叩きだした。つまり、演技以外でも彼女には得意なことがあるというわけだ。
「そうね。タクシーの運転手になれるかも(笑)」
Courtesy of the INSP News Service street-papers.org / The Big Issue
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